黄金のゴッドウィン
おうごんのごっどうぃん
概要
褪せ人がこの地に訪れたキッカケともいうべき人物であり、その旅路の端々に彼の痕跡が現れる。
重要人物である事には間違いないのだが、彼本人に会うことは難しいだろう。
なぜなら彼は死んでいて、その遺体は黄金樹の根元に埋葬されたのだから。
黄金の寵児
女王マリカとその最初の夫である始まりのエルデ王、ゴッドフレイとの間に生まれた三人の息子たち、彼はその最初の子であった。
弟二人に「忌み呪い」が現れ、地下に追放されてしまったことで、実質彼らの一人息子となった彼は、父であるゴッドフレイの壮健さと母マリカの嫋やかに棚びく黄金の髪を受け継いだ美男子であったとされ、数々の戦いでその活躍ぶりを讃えられた英雄でもあった。
特にある巨竜と戦い、その後に終生の友誼を結んだことは、後に多くの祈祷や武器に記される程であった。
だが、そんな溢れんばかりの加護を受けたかに見えた彼にも、運命は容赦無くその凶刃を振るわれる
陰謀の夜
マリカの影従、黑き刃のマリケスが秘匿していた「死のルーン」。黄金律より除かれたそのルーンはあらゆる者に有限の死を齎す恐るべき力を持ち合わせていた。
しかしマリカに厳命されたにも関わらず、マリケスは謀られ、その欠片を黒衣の一団に盗まれてしまう。
その企みには最低でも二人のデミゴッド、つまりマリカの親族が関わっており、謂わばマリカひいては黄金律に対する子供たちの反乱であった。
それを証明するように、黒衣の一団が先ず「死のルーン」が宿った短剣で襲ったのが、マリカの一人息子、黄金のゴッドウィンだったのである。
肉体の死者
黒衣の一団に襲われ、死のルーンにより殺されたゴッドウィンは、デミゴッド最初の死者として、狭間の地に遍く根付く黄金樹の根元に厳かに、かつ丁重に葬られた。
しかし彼の魂は死んだものの、その肉体は死ぬことなく、その後も成長を続けたという。
その原因は詳らかではないものの、結局その肉体はもはや人であった頃の面影を留めない異形の姿へと変貌しきっていた。
序盤に於いて訪れることになるストームヴェイル城のその最奥に存在するイカの様な形容し難い大きな顔は、実は死後の彼であることが、その付近に落ちているアイテムから察することが出来る。
しかしそれはどうやら狭間の地の隅にまで伸ばす黄金樹の根を伝って表出した瘤のような物らしく、その本体はこの地の遥か深き底に沈む根本に横たわっているという。
そしてその遺体は今は、ただこう称されている。
「死王子」
と。
その影響
彼の死後、狭間の地は本格的に狂い始めた。女王マリカは何処かに隠れてしまい、その子供たちは親がいなくなったこといい事に互いに争い合うようになった。
やがてそれは破砕戦争と呼ばれる大きな戦いとなり、長きに渡り続いた戦乱は凄惨を極め、狭間の地は汚れに汚れきってしまった。
またこの時から狭間の地の各地に「死に生きる者」即ち不死たちが出現し始めるようになり、死したゴッドウィンの影響であることは最早疑いようがない物であった。
生のみを讃え、死を排除した黄金律。
皮肉にも同じ「黄金」の名を持つ者の「死」によって、それは壊れてしまったのである。