1.北欧神話に登場する神。(本項で説明)
2.「神々の悪戯」に登場するキャラクター。→バルドル・フリングホルニ
3.「BAYONETTA」に登場するキャラクター。→バルドル(BAYONETTA)
4.「グランブルーファンタジー」に登場するキャラクター。→バルドル(グラブル)
概要
バルドルの名は“主君、主人、君主”あるいは“白い”を意味するとされ、オーディンとフリッグの息子である。妻はナンナ、息子は調停と正義の神フォルセティである。災いのないブレイザブリクの館に住み、巨大な船フリングホルニを所有する。
彼は神々の中で最も賢明であり、光り輝くほどに美しく、そして優しい神であるという。
ある時、バルドルは自分が死ぬ悪夢を見たため、それを心配した母フリッグは生物や火炎、金属、石など世界中のあらゆるものに『バルドルを傷つけない』ことを誓わせ、息子をいかなる武器でも傷つけられない不死の存在にした。
アース神族の面々はバルドルを祝し、そして彼に様々な物を投げたり射たりする遊戯に興じた。しかし、その様子が気に入らないロキは老婆に身を変えてフリッグに近づき、バルドルの不死について質問をした。これに対してフリッグは年若く無害と判断したヤドリギにだけは誓いを求めていないと喋ってしまった。ロキはヤドリギを手に入れると矢に加工し、盲目であるため遊戯に参加していなかったバルドルの弟ヘズに声をかけ、バルドルの立つ位置を教えてヤドリギの矢を射させた。そしてヤドリギの矢はバルドルの体を貫き、彼の命を奪ってしまった。夫の死でナンナは悲しみに打たれ後を追うように死んでしまい、悲嘆したフリッグは自分の寵愛を与えるからバルドルを冥府から連れ戻してくれるよう神々に懇願した。そこで神々はヘルモーズを冥府神ヘルの下へ派遣した。
ヘルモーズが戻るまでの間にバルドルの葬儀がとり行われ、神以外に巨人たちも列する中、彼と妻ナンナの遺体はフリングホルニに乗せられて火葬にされた。
一方、ヘルの下に着いたヘルモーズがバルドル復活の願いを彼女に告げたところ、『九つの世界に住むすべてのものがバルドルのために悲しみ、泣くならば彼をアースガルドに戻す』と言った。条件を聞いたフリッグと神々はバルドルのために泣いてくれるよう全世界に依頼し、生物はもとより植物や鉱物まで泣いた。しかし、ロキが変身した女巨人セックのみが泣くことを拒否し、バルドルは蘇ることができなかった。
彼の死によって世界は光を失い、混迷の一途をたどった末にラグナロクへ行きつく。
ラグナロクの後、バルドルはヘズと共に復活を果たし、生き残った弟ヴァーリと共に新しい世界で生きていくことになる。
なお、一度死んで再び復活する神バルドルの姿にはキリスト教の影響を見る説もあるが、一方でバルドル崇拝は古来からあったとする説も存在する。
ヘズとの関係
デンマークの歴史家サクソ・グラマティクスの著書「デンマークの事績」では、ヘズ(ホテルス)は強壮な人間の戦士で、神話中バルドルの妻とされているナンナを恋人としている。そしてバルドル(バルデルス)はナンナに横恋慕した半神の戦士として登場し、邪神オーディン(オ-ティヌス)の力を借りてヘズと戦う。最終的にヘズが魔法の剣を用いてバルドルに致命傷を与え殺すことで決着がついている。(後にヴァーリ(ボーウス)との戦いで命を落とす)
上記の物語はヘズの名前が“戦い、戦士”を意味することから、キリスト教流入前の本来のヘズの姿とする説がある。
また、死者の世界から復活するバルドルとヘズの姿に彼らの父オーディンの二面性が込められているという考察(アーサー・コットレル)があり、美しく輝きを放つバルドルが魔術、霊感、神託という肯定的な面、盲目のヘズが死の神、死に喜びを感じると言うオーディンの本性の盲点という否定的な面を現しているというものである。
女神転生シリーズのバルドル
初出は「女神異聞録デビルサバイバー」。物語の根幹を成す“ベル神”の一柱であり、『ベル・デル』の名で登場。黒い相貌に、鎖が随所に絡む銀一色の姿で、光の神の名残のように頭部には光輪を思わせる楕円形の飾りがある。
ベル・デルの目的は嘆きの世界を作り出し、神話で成しえなかった“全てのものが自分のために泣くことで冥界から復活を果たすこと”である。原典通り不死身の肉体を持ち、万能属性ですら無効化する鉄壁の防御相性を誇り、主人公たちを追いこんでいく。しかし、遊び人風の男の助言やアツロウたち仲間の助けを得てヤドリギを手にした主人公の前に敗れ去り、冥界の鎖に再び絡めとられ現世から消滅する。しかしベル・デルの死によって、主人公は過酷な戦いに巻き込まれていく。
後の「真・女神転生Ⅳ」では、“幻魔バルドル”として同デザインで登場。
直接本編に絡むことはないが、東京の上空を彗星の如く飛びいつか災厄をもたらすであろう不死身の悪魔ラーフに、同じく“不死身”のバルドルをぶつけて膠着させようとするチャレンジクエスト『凶星堕つ』がある。
『ゴッドオブウォー』シリーズのバルドル
CV:櫻井トオル
ギリシャ神話から北欧神話に舞台を移した新シリーズ第1作のメインヴィランとして登場。体中に入れ墨を刻み、口髭を生やした姿で登場。
本作では母親はフリッグと同一説に基づきフレイヤという事になっている。生まれてすぐ死の予言を受けたためにフレイヤから不死身になる魔法をかけられるも、その代償としてバルドルの感覚は失われ、痛みも快楽も感じられない身体になってしまい、絶望した彼は望まぬ力を与えた母を深く憎むようになってしまう。この魔法を唯一解く術はヤドリギだったのだが、フレイヤがそれを知る者たちの記憶を魔法で封じてしまい、彼の憎悪と狂気は増長することになる。
ゲーム本編では、父神オーディンから「最後のヨトゥンを捕らえよ」という命令を受け、ヨトゥンのもつ神秘の力なら魔法が解けるかもれないと考え、甥のマグニとモージを連れて執拗にクレイトスと彼の息子アトレウスを付け狙った。
最後の戦いでアトレウスを殴った際、彼の矢筒のひもを固定していたヤドリギの矢が腕に刺さったことで不死身の魔法が解け、そのことに歓喜しながら戦い続けるも敗北した。
しかし魔法が解けともなおフレイヤへの憎しみを捨てきれず、彼女の謝罪を一蹴し殺そうとする。これを見たクレイトスは、このままフレイヤを殺してしまえばバルドルもかつての自分と同じく復讐の鬼と化してしまうと考え、彼の首をへし折り殺害した。
死の間際、彼が最期に感じたのは、これから起こる未来を予兆するように振り出した雪の冷たさだった…。