チャッピーとゆかいな下僕ども
ながいかっかのさいしょのたんこうぼん
概要
ながいけん閣下の、ファンロード投稿時代の作品をかき集めた短編集。
独特すぎる世界観と台詞センスが濃縮された作品集であり、コアなファン層を築き上げた。後に新作を追加して再版された。今なおながいけんの最高傑作とするファンも多い怪作。
主な掲載作品
「平口君の熱い夜」「平口君のバスバスバクハク」
「どうしたキャプテン、スクランブルと思っているのが聞こえんのか!」
心の魔王こと平口君を主人公とした作品。
平口君は無口な学生だが、自身に無礼を働いた者に対し、呪いを与え絶対死をもたらす。
(ただしその原因は、千円札をネコババしようとして落とし主に拾われた、通学バスで隣に女子が座らなかったといった、しょーもないもの)。
薔薇十字の会員とも呼ばれる彼の呪いは、毎晩自室に描いた魔法陣にて、周囲にロボットの玩具やドールを並べ、それらを生贄にする事で発動させる。その呪いを解く事はお釈迦様でも不可能。ただし呪いが効果を示すのは、推定二万年後。
「チャッピーとゆかいな下僕ども」「チャッピーのミラクル大作戦」
「うわあん、ぼくはやっぱりダイナマンの弟の、狂気の変態自爆男なんやろうかあっ」
表題作。正義の味方(ただし善人ではない)と名乗るハゲスター・ミッチェルと、悪の味方と名乗る顔面段々畑・チャッピー、およびその部下である五人の下僕、チャッピー軍団の、戦いを描いたもの(そして大抵がチャッピーとチャッピー軍団がひどい目に遭って終わる)。
チャッピー軍団は、姿およびコスチュームが同じ五人組(額の数字のみ異なる)。そのうち三号(メイン画像)は、妙に調子がよく、ひどい目に遭うのを回避している。
ジェノサイド・モーニング ゴメスの朝
「こんな宇宙人だったのだ」
某ゴルゴ13の某デューク東郷そっくりな殺し屋・ゴメスが主人公の、推理クイズマンガ(最初に事件を提示し読者に推理させ、ラストで答えを明かす)。
事件および問題は全3問、全部で15ページ、漫画部分は9ページ(後は解答ページと手抜きページで、キャラの絵と台詞のみ)。単行本描き下ろし作品だが、同時に手抜きの穴埋め作品でもある(作中でゴメス本人がそう言っている。更にもう1ページ穴埋めもある)。
ちなみにゴメスは殺し屋だが、気が向けば探偵もする、という設定。この事を本人は「細かな設定は追及しないでくれ」と言っている。
なお、扉ページの構図、および題名は、同時期に発売されていたラポートコミックス「ジェントルモーニング 愛美の朝」(著:永井朋ひろ(現:永井朋裕))のパロディ。
サラシナ日記
「黒人人形~~~~!!なぜ来るのだお前は~~~~~ッ」
ながいけん本人が登場する絵日記マンガ。ながい閣下の自宅近くには、『アジト』と呼ぶばーさんの別荘があり、休日にはたまり場になっている。そこでながい閣下は友人たちとファミコンしたり酒を飲んだりして過ごしているが……というところから始まる。
友人のもんたこと森田真琴が泥酔してベッドを占領していたため、庭に捨てたら死体に間違われ……といった話と、二階の二つあるベッドに置かれた、怖いデザインの黒人人形が、移してもなぜかながい閣下の方に戻ってくる……という話が描かれている。
「あらいぐまラスカル」
「まず散歩にいくヒァー」「そのあと、地球を汚し、自然を喰い荒らす愚民どもに然るべき制裁措置をとりにいくよヒァー」
某アニメとは関係の無い、落書きめいたキャラが登場するシュールなマンガ。たった4Pだが、ラスカルたち「ラスカル軍団」のインパクトが妙に強く、印象に残る一作。
主役(?)のラスカルは、語尾に「ヒァー」と付ける。
内容は、下記パロディ漫画とほぼ同じ。
「けんちゃんの台湾旅行鬼」「うわ~~~~おれも行っちゃったんだぜおれもワールドコンレポート――――ッ」
「恐怖!地獄悶絶焼きひとつね」
「あいつ、もしかしてガンダムのコスプレのつもりだぜ。ワールドコンに行くんじゃねえだろな。SFって言葉知らねえくせに」
同じく、ながい閣下の絵日記まんが。80年代当時の「ファンロード」誌では、編集長「イニシャルビスケットのK」ことK氏の主催で、常連投稿者や作家などを引きつれて、香港や台湾に向かったり、ワールドコンなど海外イベントに赴き、作家や読者がその様子を絵日記マンガにしてファンロード誌上に掲載する……という事が行われていた。本作はその体裁で描かれている。
前者はK氏により台湾に赴いたながい閣下たちだが、K氏に連れて行かれた店のメニューは奇妙な名称のものばかりで……な内容。
後者は、ワールドコンに赴いたながい閣下だが、ついた場所はアマゾン。K氏はそこで、ガンダムのコスプレらしき姿の現地人と仲がいい事を閣下に見せつけるが……といった内容。
どちらにも、「チャッピーと~」二作で、ミッチェルの部下の北野あつしが登場するが、毎回同じオチで終わる。
なお、後者に登場する「ガンダムのコスプレ(らしきもの)をした現地人」のインパクトは強烈で、単行本の口絵にもカラーで描き下ろされている。
走れセリヌンティウス
「……勇者はひどく危ない目をした」
「死にたくないー!ましてや他人のためになど!」
「走れメロス」のパロディ。
悪事を働き過ぎたメロスを、本意ではないが処刑する事にした王。メロスはセリヌンティウスを人質に差し出し、三日間の猶予を申し出て、そのまま裏切る。セリヌンティウスは脱走し、メロスを棺桶に入れて処刑の日まで戻ろうとする。
……と、原典のキャラクターたちと真逆の性格にした内容。セリフも「力いっぱい殴らせろ」「殴らせろ、同じくらい音高く」などと、原典を踏襲しつつ真逆にしている。
「シミュレーションマシーン」「ロールプレイングマシーン」
「なんで我々にはいやらしいコマンドがないんだー! くやしすぎる!」
ゲーム好きの青年・ブタが、自身をシミュレーションゲーム、およびロールプレイングゲームのキャラクターになり切って行動するというもの。
「シミュレーションマシーン」では、不良に絡まれる様を、シミュレーションゲームの戦車ユニットになり切ってやり過ごそうとする。
「ロールプレイングマシーン」では、行方不明になった父親・オルテガを、仲間たちと共に探すが、人家に(ゲームよろしく)勝手に入り込んでは家探ししたりしている。
その際、住民の少女に出会ったら、上気のセリフとともに慟哭していた。
「スーパーヘブライ人愛の旅立ち」「スーパーエレビエン」
「ぐそ~~~~ 私より幸福な奴はやな奴だ!とくに男」
「貴様~~~!今まで何のために貴様を生かしておいたと思っとるんじゃーーっ!」「そ、それじゃあおれ、アラビア人と戦うために生きてたのか」
「愛の民族シリーズ」と頭に付く。スーパーヘブライ人は自称「愛のカタマリ」。メリエンヌという相手の美少女を悪魔にさらわれ、その腹いせに手にした刀で周囲に切りつけるような男である。「スケベスト・オンナスキー」にも登場。その際にはメーゲレットという別の女性を、ラブホに連れ込もうとしていた。
スーパーエレビエン(原文ママ)は、エレビエ(こちらも原文ママ)から来て、「神の思し召し」という理由で一般家庭に勝手に入り込み、勝手に夕食のハンバーグを食うという人物。警察を呼ぼうとしたら家長(家族の父親)を殴り飛ばし、そのまま逃走した。
ちなみにこの家の家長も結構エキセントリックで、最後に殴り飛ばされたシーンでは妙にかっこつけた台詞を呟いており、作者本人から「死ぬ間際にいい奴になるんじゃねえ」などと突っ込まれている。
天才探偵ポアポア卿
「か、彼が犯人という証拠を」「うるさい、そんなもん明日までにつくっとくわ」
「名探偵ポアロ」のパロディ作品。名探偵を気取るハゲおっさんのポアポア卿が、殺人事件を解決するという内容だが、ポアポア卿は警察のリチャード警部が解決した事が気に入らないため、勝手に犯人と証拠をでっちあげ、自分が解決した事にしてしまう。
ちなみに真犯人は、警部が最初に容疑者たちを前に「ではまず、犯人君」「はい」とやりとりした事で、即座に明らかになってしまった。
また、上記のやりとりで犯人と証拠をでっちあげたポアポア卿は、リチャード警部に拒否されると「……リチャード警部、バラバラ殺人事件」「フ、フヘ……これは、難解な事件(ヤマ)と、なるやろおの~~」と、日本刀を片手に恐ろしい顔で微笑んでいた(要は遠回しに脅している)。
ムウミン谷の攻防
「スナフキン発見!ただちにいうなれば攻撃開始!」
某ムウミン谷に、某スナフキンがやってきて食料をたかるため、それを迎撃するというパロディマンガ。
公害汚染で魚が死滅。以後、ナフキンは水とプランクトンしか口にしておらず、ムーミンに食料を所望。それを断られたため、「オートリバースエンドレスリフレインリピート」で、同じ曲ばかりを聞かせ気を狂わせようとする。
が、ムーミンが呼んだスノークの戦車部隊による戦車砲攻撃を受けて倒れ、磔にされ、そのまま死体をさらされてしまう。
単行本掲載分は書下ろしで、ファンロード誌に投稿したものとは内容が若干異なる。
なお、内容は下記パロディ漫画とだいたい同じ。