概要
人間の無意識の深層に存在する、個人の経験を越えた先天的な構造領域。
普遍的無意識とも呼ばれる。
ユングは個人の無意識より更に深い無意識の領域に、個人を越えた集団や民族、人類の心に普遍的に存在すると考えられる先天的な元型イメージを見出した。
分かりやすく言うと、各地の神話や共通、あるいは個人の夢や空想には地理的・文化的に大きく離れているにもかかわらず共通のもの・象徴が現れているということを発見したのである。
この為、元型や元型が存在すると仮定される領域は、民族や人類に共通する無意識と考えられ、
ユングはこの無意識領域を「集合的無意識」と名づけた。
ユングがこの概念を見出したエピソードの一つにこんなものがある。
ある時、勤務していた病院の統合失調症の患者が太陽を見ながら頭を左右に動かしている。
彼が「何をしているのか」と尋ねると、その患者は
「太陽からペニスがぶら下がっていて、自分が頭を動かすとソレも同じように左右に動く。だから風が吹くんだ」と答えたという。
その後ユングはギリシャ語で書かれたミトラ教についての文献を読んだ時に、「太陽には尻尾があり、右に振れると東風が、左に振れると西風が吹く」という、先の患者の妄想とほぼ同じ記述を発見する。
患者がギリシャ語の文献など知っているはずもない。ユングはこれを偶然の一致ではなく、人類が無意識に共通してもつイメージ・象徴によるものだと考えたのである。
ユングはこのイメージを原型(アーキタイプ)と呼び、いくつかの原型を提唱。
- ペルソナ…仮面。自我の外的な側面。社会的役割など。
- シャドウ…内面に存在しているにもかかわらず自身で受け入れようとしない一面のこと。自我を補完する原型とされる。
- アニマ・アニムス…アニマは男性の中にある女性的な要素、アニムスは女性の中にある男性的な要素
- 太母(グレートマザー)・老賢者…太母は全てを受容し育む生命的原理。老賢者は太母と対比的で、理性的な智慧の原理。
人間の行動や思考・判断は、自我と外的世界との相互作用で決まって来る面があるが、
他方、集合的無意識に存在するとされる諸元型の力動作用にも影響される面がある。
ユングは、集合的無意識に様々な元型の存在を認めたが、それらは最終的に自己の元型に帰着すると考えた。
自己の元型は心(魂)全体の中心にあると考えられ、
外的世界との交渉の主体である自我は、自己元型との心的エネルギーを介しての力動的な運動で、
変容・成長し、理想概念としての「完全な人間」を目指すとされた。
このように、自我が自己との相互作用で成長し、球的完全性へと向かう過程を、
ユング心理学(分析心理学)では、「個性化の過程」あるいは「自己実現の過程」と呼んだ。
(Wikipediaより抜粋。一部改変・追記あり)
関連タグ
ペルソナシリーズ(ATLUSによる、RPGのシリーズ。シリーズ全般を通して集合的無意識由来のキャラクター(フィレモンなど)が登場しており、
集合的無意識自体もストーリーに組み込まれている。)