イリアスサラス
いりあすさらす
「ふふっ、イリアスサラス、可愛い老いぼれ」
————ヘルタ
概要
天才クラブ会員番号56番。
クラブ史上2人しかいない公選部長の1人であり2代目会長。老衰のため103歳で死去。
変わり者が多いクラブメンバーに比べ、彼は数少ない外向的な天才であった。スターピースカンパニーと協力したことのある3人の天才のうちの2人目でもある。
彼の願いは「クラブの天才が一堂に会し、打ち解け、愛と夢を語り合う」というものである。そして、彼は「クラブチケット」を発明し、自分の死後も、クラブに新しく入った人には必ず、どこかの宴会次元界に行けるチケットが貰えるようにするシステムを考案した。#56以降のクラブメンバーは皆、「クラブチケット」を使ったことがあるのだが、時期が重なったことは一度もなかった。
寿命を延ばす方法を数多く持っていたが、最期には老衰でこの世を去ることを選択した。
表に残る業績としては宇宙における通信分野に多大な貢献をした天才であり、星間大交流時代を築き上げた。
成果
共感覚ビーコン
星間文明の繁栄実現の片翼を担う万能翻訳機。
知的生命体が思考する時、その内容はまず意味を持つ信号として脳に現出する。我々はそれを外的な発音や記号を伴った言語として出力することでコミュニケーションを実現している訳であるが、その出力の過程をスキップし、脳内の信号の段階でダイレクトに相手へ伝達することができれば、例え相手の言葉を知らなくてもその意図するところを全て把握することができる。
共感覚ビーコンはまさにそれを可能にする、簡易インプラントである。双方が注射するだけで、全く未知の謎言語をまるで母国語のように理解できるようになる。
これほど画期的な発明にも関わらず、天才クラブの同僚はイリアスサラスの呼び掛けを無視した。イリアスサラスの死後数百年が経ち、カンパニーの指揮のもと博識学会が彼の遺構からビーコンの再現に成功するまで、忘れられていたのである。
ビーコンの発明以前は、スターピースカンパニーが6000もの言語を収めた翻訳サービス「対訳宝典」の編纂を試みたが、データ量等の理由で頓挫している。「神秘」派閥リドラーによる言語破壊や、言語そのものが進化して複雑化する中、カンパニーにとって言語の壁はひどい頭痛の種であった。
超距離センシング
星間文明の繁栄実現の片翼を担う万能通信技術。
数百光年単位で物理的に離れ、さらに虚数エネルギーの壁によって隔てられた星系間で、不可能とも謳われたリアルタイム通信を可能にする。この技術の実現は、史上初の天才ザンダーが提唱した、虚数による星系間の隔絶を絶対視する「虚数の樹」理論の根幹を揺るがしたという。
クラブ内のコミュニケーションを円滑にするため、イリアスサラスは当時のメンバーに超距離センシング付きの通信ゴーグルを用意した。残念ながら、星の間に橋を架けたにもかかわらず、それを渡ろうとする者はほとんどいなかった。
こちらもビーコン同様に、後に博識学会によって復元されている。
2つの技術の所有権は復元に成功した博識学会に帰属しており、カンパニーは莫大な特許使用料を毎期学会に支払い続けている。そのおかげで、復元を主に担当した通感学派は一国に匹敵するほどの富を築いた。