概要
榴弾砲より低い角度、かつ高初速で砲弾を射出する砲。
初速が高いため45度以下の低仰角でも遠距離射撃が可能となっており、さらに近中距離の目標を直接照準で砲撃することも可能であるため、射撃位置が察知されにくいというメリットが存在する。
そのため対戦車砲の様に運用する事も可能であり、その大きさゆえとり回しが面倒でなければゲリラ的な戦術を得意とする砲でもある。
また、キャノンとも呼ばれる。日本においては加農砲(Tags.php)と当て字されている。
榴弾砲と比較して、砲弾に緩焼性が高めの多量の装薬を使用し、長砲身で砲弾を大きく加速し、高初速を実現している。
ところが、射撃時の高い腔圧や大きな反動に耐えるために冶金の技術も必要となり、砲自体の重量は重く仕上がり、サイズも大きくなるうえ、機構も複雑となり生産性や運用性に劣るとされる。
この兵器が運用可能とされる砲弾も榴弾(弾の内部に火薬が詰められた砲弾、発射後炸裂し、破片により攻撃する)・破甲榴弾(ベトン弾、徹甲弾の一種でコンクリートを貫通させる為の砲弾)・尖鋭弾(遠距離射撃用の榴弾)などが存在するが、もはや近現代においては使用砲弾の差異によって榴弾砲とカノン砲は分類されない。
歴史と意味
1.16世紀から17世紀
砲弾重量が42ポンド以上(約19㎏以上)のものを発射する滑腔砲(砲身にライフリングが施されていない砲)を指していた(ちなみに半カノン砲というものも存在し、32ポンド程度の砲弾を運用するもの)。
2.18世紀から19世紀
野砲などが開発されることにより、要塞戦や防衛戦だけではなく野戦などの戦場で大砲がよく使われるようになると、類似した武器、たとえば榴弾砲などが現れる。この武器と区別するために直射(標的を直接狙う)を主に行う長い砲身の大砲をこの名称で呼ぶことにした(なお曲射弾道で発射し、短砲身の武器を榴弾砲とした)。
3.19世紀末から20世紀
兵器の圧倒的進化、特に「砲身のみを反動で後退させ発射時の反動を軽減する装置」の発明によりそれまでカノン砲とされてきた砲でも曲射での運用が行われるようになり、区別があいまいとなった。
そのため、口径長(砲身の口径を分母に、砲身の薬室の最後部から砲口までの長さを分子にして求める値)が30口径以上のものをこう呼ぶことにした。
また、自走砲の砲台として運用したり、性質が類似した高射砲や対戦車砲、さらには列車砲やさらには艦砲(艦載砲とも、艦船に搭載される大砲のこと)として用いたものも存在する。
しかしながら70年代に入ると、西側諸国では30口径を超える榴弾砲が運用され始めるようになる。カノン砲というカテゴリに当てはめて砲を開発する意義が失われることになり、カノン砲の新開発は行われなくなった。残存していた旧式のカノン砲が退役し、カノン砲というカテゴリは消滅することになる。
ソ連およびその流れを引くロシア連邦軍や軍事的つながりが強かった東側諸国に於いても事情はさほど変わらないが、こちらは70年代までカノン砲の開発が続いており、経済的事情から更新が間に合っていないため、現在でも一定数のカノン砲が継続して運用されている。