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サイボーグを倒せ

さいぼーぐをたおせ

ゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第17弾。著者はスティーブ・ジャクソン(英)。
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「サイボーグを倒せ」とは、イギリスの出版社「ペンギン・ブックス」から出版されていたゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの第17弾「APPOINTMENT WITH F.E.A.R.」の日本語版タイトルである。出版社は社会思想社。


作品解説

 とあるカップルが、遺伝子操作実験の被験者となり、子供を一人設けた。

 この実験は、科学的には非常に興味深いものだったが、倫理的・社会的には問題があり、危険でもあった。なにより子供が実験の産物だと世間の知るところとなると、社会から非難され好奇の目で見られ、怪物扱いされるのは必至。ゆえに両親は、子供が実験の被験者である事を秘密とし、実験を行った当局もまた、実験そのものを秘密としていた。

 しかし当の本人であるその赤ん坊は、ごく普通の、極めて健康かつ理想的な赤ん坊であり、普通の子供との違いは見られなかった。生まれてからしばらくは毎日検査づくめだったが、やがて観察の必要性が無いと判断され、全ての検査は中止。医者や科学者たちは実験そのものも中止し、子供とその両親に対しても興味を失った。

 子供に超人的な能力が現れ始めたのは、その直後。しかし両親は、この能力を世間からできるだけ隠しておくべきと考え、その事を子供自身にも教え込んだ。


 やがて、赤ん坊は成長した。子供の名前はジーン・ラファイエット。それが君である。

 君は、授かったこの力を、正しい事のために用いると誓った。そしてそのために、スーパーヒーローとなって活動し、日夜悪と戦っている。

 現在は、大都市「タイタン・シティ」にて生活する君は、中くらいの規模の会社に就職し、事務員として働いている。しかし、ひとたび事件が起これば、君は正義の守護神「シルバー・クルセダー」となり、その超能力を用いて悪と戦うのだ。

 君は腕時計型の通信機「犯罪探知機(Crime Watch)」を携えており、警察本部との連絡に用い、警察の援助も頼める。更には君の協力者にして友人の地下連絡員、『マリファナ』ジェリーが、犯罪が起こる前に君に警告してくれる。


「タイタン・シティ」を守護しつつ、なんとか生活している君はある日、『マリファナ』ジェリーから、最近探り出した情報を伝えられる。

 犯罪者集団「恐怖結社(F.E.A.R.)」、すなわち「ヨーロッパ・アメリカ破壊連合(the Federation of Euro-American Rebels)」に動きがあると言うのだ。

「F.E.A.R.」のボス、ウラジミール・ユトシュキーが、手下としている犯罪者たちを、タイタン・シティに集まるように命令を下しているという。

 ウラジミール・ユトシュキーは、電子技術分野の専門知識を持つ悪人で、彼自身、半分人間で半分機械の身体を持つ「チタニウム・サイボーグ」という悪漢……スーパーヴィランでもある。

 まだその会議が行われる時間と場所はわからない。しかし会議の目的は、西側諸国を破滅に陥れるための計画を、最終的に完成させる事である事はあきらかになっている。

 君はなんとか、この会議が行われる時間と場所を探り出し、それを止めねばならない。

 シルバー・クルセダーとして、君は活動を開始した。


 シリーズ17弾。

 今回のジャンルは「(アメコミにおける)スーパーヒーローもの」である。

 スティーブ・ジャクソン(英)の傾向……「同じものを二度とは書かず、常に新たなジャンルに挑戦する」。次に選ばれたジャンルが「スーパーヒーロー」である。

 このジャンルはテーブルトークRPGでも存在しており、有名かつ大手のマーベルおよびDCのヒーローたち、もしくはそれに似た存在になり切るものは出ており、ファイティングファンタジーでも似た作品を……というところから、実現した事は想像に難くない。

 発売が85年なので、作中におけるスーパーヒーローの作品イメージは、70年代から80年代あたりのそれと思われる。当時のアメコミヒーローもの作品のイメージが、ファイティングファンタジーに落とし込まれ、これまた特異な一作になっている。

 ゲームブックとしての特徴は、「シルバー・クルセダーの持つ超能力が四種類存在し、そのうち一種類を選ぶ」という点が挙げられる。

 アメコミにおけるヒーローたちの、善悪両者の超人たちが持つ種々雑多な超能力を、本作では再現している。主人公キャラのクルセダーもそれは同様で、選んだ超能力で展開も異なる。

 そのため、どの能力を選んだかにより、内容や展開も異なるため、次は別の超能力を選んでプレイ……というやり込み要素にもなっている。

(超能力を選ぶ際に、事件の手がかりを最初にいくつか提示される。選ぶ超能力により、その手がかりも異なるため、解決できる事件も異なり、展開もそのつど異なっていく)

 もう一つの特異な点は、「英雄点」の存在である。

 英雄点はシステムに直接関係はないが、周囲にその行動が見られる事で、ヒーローとしての評価が上がるためのポイントであり、ヒーローにふさわしくない事を行えば評価は当然下がる。

 そしてアメコミのヒーローは、基本的に正義の味方であり、犯罪者や悪漢と戦ってもその命を奪う事はない(例外はもちろんあるが)。

 その点を再現し、敵の体力点をゼロにすると殺人となり、ヒーローとしての評価はさがってしまうのだ。それを再現するため、本作では敵を殺害したら英雄点がマイナスとなる(戦いにおいては、敵の体力を残り1~2点まで下げれば、勝ちとなる)。


 本作はファイティングファンタジー版のアメコミヒーローものとして、シリーズとしては一作のみではあるものの、SFやホラーにはない存在感と魅力が満載で、単行本として出たのが一作しかない事が惜しまれる。

 作中にはヴィランは多く出てくるも、クルセダー以外のスーパーヒーローが登場しないため、タイタン・シティ版アベンジャーズのようなものが出せない事や、ヒーロー同士の対立や葛藤、協力といったシチュエーションが出てこなかった事も、残念な点である。

 ゲームブックマガジン「ウォーロック」の10号にて、後日談とも言える短編ゲームブック、「破滅への秒読み─手に汗にぎるスーパー・ヒーローの活躍─(ギャビン・シュート著)」が掲載された。

 その後、2012年にファンマガジン「fan written Fighting Fantasy(未訳)」にて、「Vengeance at Midnight(未訳)」(アレグサンダー・バリンガル著)という作品が執筆・掲載された。


主な登場人物

ジーン・ラファイエット(Jean Lafayette)

 本作における主人公=君。

 両親の、放射線による遺伝子操作の実験参加により生まれた子供。しかし科学者や関係者たちが完全に撤退した後で超能力を発揮するようになり、成人してからスーパーヒーローとして活動するようになった。

 中小企業の事務員として働き、犯罪探知機で犯罪が行われる情報を得てから、タイタン・シティの正義と平和を守るためにスーパーヒーローとして活躍する。が、そのために職場は遅刻が多く、上司からは毎度雷を落とされている。


シルバー・クルセダー(Silver Crusader)

 主人公=君の、もう一つの姿。その正体がジーンである事は秘密である。

 本書内には全身を描いたイラストはほぼ存在しておらず、小さなカットがあるのみ(一応、アメコミヒーローらしいコスチュームを着ており、背にはマント、顔はマスクをかぶっている)。

 その超能力は四種類あり、プレイ前に以下の四種から一つを選択し、開始する。

:超体力(super strength)

 スーパーマンのような、怪力および飛行能力。普通に戦闘を行っても、まず負けない(技術点を常に13点の状態で戦う事ができる)。飛行能力も、空中静止からジェット機を追跡し追いつく事まで、自由自在である。

:思念力(psi powers)

 Xメンのジーン・グレイのような、テレパシーおよびテレキネシス、そして思念による物質変換。ほとんどの人間および一部の動物の脳に、心の手を伸ばし、その考えを読み取ったり、心を操ったりする事が可能。それに加え、強力ではないものの、頭の中で考えるだけで物体を動かしたり、いくつかの物質については性質を変化させる事も可能。ただしこの力を使うたび、精神力を多く消費する(体力点を2点引く)。

:超技術(enhanced technological skills)

 60年代のドラマ版バットマンのような、万能装備。授かった優れた知性を用いて開発した様々な小道具をベルトに装備し、それを用いてあらゆる状況に対処する。また、どんな状況下でもたいていその場にふさわしい小道具を用いる幸運にも恵まれている(60年代版バットマンの映画にて使った、サメ除けスプレーなどのように)。

 ただし、万一敵の手に渡った時の事を考え、武器だけは作っていない。

:電撃(energy blasts)

 自身の体内から静電気エネルギーを発生させ、それを指先から電撃エネルギーとして発射する能力。エネルギーの強さは調整する事が可能で、人間および悪漢を標的とする時には気絶させるだけに心がけている。


「マリファナ」ジェリー(Gerry the Grass)

 ジーン=シルバー・クルセダーの協力者。情報屋であり、犯罪が行われる情報を得ると、即座にジーンの犯罪探知機に連絡を入れる。普段は私立探偵をしているらしく、コンピューターや無線通信の趣味も持っている。ジーンが店で「パックマン」に似たゲームソフトを手に取ると、後ろに現れ「おれだったら、そんなやつは買わないね」と言葉をかけた。


登場ヴィラン

チタニウム・サイボーグ(Titanium Cyborg)

ウラジミール様

「F.E.A.R.」の首領。本名ウラジミール・ユトシュキー。

 人間を電子的に強化する技術の専門家。装備を外した状態では、普通の人間に見えるが、アイゴーグルと外骨格となるサイバーエンハンサーを装着する事で、ヴィランの姿となる。

 ヴィランとしての能力は、サイボーグ化された事の怪力と、ゴーグルからの光線。サイバーエンハンサーの両拳にはチタニウムが内蔵されており、(超体力を有した)シルバー・クルセダーよりも強力なパワーを発揮する。そのパンチも比較にならないほど強い(技術点18)。

 サーキットジャマー(回路妨害装置)が無い限り、彼と戦い倒す事は不可能。

「電動のこ」ブロンスキー("Chainsaw" Bronski)

 電池式のチェーンソーを武器とする殺人鬼。

ドクター死神("Dr Macabre")

 本名マルカス・ビュレッタ。生体移植手術の目覚ましい経歴を持つ外科医だが、あまりに進み過ぎて世間は付いて行けず、犯罪と見なされている。

 薬局にて、自身が作った「四本腕の獣人(Four-Armed Beast)」と「タイガー・マン("Tiger Man")」を引き連れて、薬品を強奪しようとした。この生体改造した者たちは、彼自身にとっては「作品」であり、精神のガードは固いが、物理的ダメージは普通に与えられる。そのため、エネルギーブラストなどで傷つけられると狼狽してしまう。

ブレイン・チャイルド("The Brain Child")

 本名ティモシー・グラント。ごく普通の少年だが、見る夢があまりに真に迫っているため、「夢に出て来た存在を、現実化」する能力を有している。本人には悪意はないものの、見た夢に出て来た怪物を実体化させ、噴水にて暴れさせてしまった。

ミイラ男(The Mummy)

 本名ムスタファ・カリーム。博物館の警備員を務めていたが、偽物とすり替えて横流しをしていた。ミイラの姿に変身して戦う。

「太っちょ」ブルーボトル("Fats Bluebottle")

 犯罪者の間で有名な男。直接登場はしていないが、過去にクルセダーとやり合ったらしく、正体も知っているらしい。部下に命じ、ジーン・ラファイエットを尾行させていた。

毒殺魔("The Poisoner")

 本名ジョルジオ・シュルツ。その名の通り毒物を用いる犯罪を犯す。給水所の給水装置に毒を流そうと企み、実行しようとした。「F.E.A.R.」の一員。

リッチ親分("Daddy Rich")

 変わり者の億万長者。金で買えるものなら何でも所有している。罪無き人々を殺す事に興奮し、怯える人々を見る事に異常な喜びを感じている。

拷問鬼("The Tormentor")

 本名リチャード・ストーム。

 パーカー空港からロンドンに向かったDC10便をハイジャックした。「F.E.A.R.」と関係があるらしい。

 元は山の手に住む暖房技師で、スーザン・ブライスという恋人がいた。しかし私設看護婦との事を誤解されたために、仲がこじれてしまった。コスチュームに身を包んでいるが、特殊なパワーはない。

「ネズミ男」フラナガン("Rat-Face" Flanagan)

 情報屋。ジーン=クルセダーに対し、大統領の暗殺計画の情報をもたらした。

氷の女王("The Ice Queen")

 本名シルビア・フロスト。

 社交界でデビューしたての若い美女。肉用の大きな冷凍室を備えた屠殺場を買収し、自分のアジトとしている。冷気を放つ能力を有し、格闘戦で触れるだけで相手に凍傷を負わせるのみならず、精神を集中して冷凍光線を発射する事も出来る。その分熱には極端に弱いらしい。

虐殺鬼("Creature of Carnage")

 本名イリヤ・カルポフ。鱗の生えた褐色の大男で、怪力を有し破壊活動を行う。

 イリヤが変身した姿。そのため、その正体がイリヤである事は知られていなかった。イリヤは「F.E.A.R.」の一員でもある。

破壊魔(”The Devastator”)

 隕石で身体が構成された、未知の存在。一見すると岩石でできた大男といった姿。非常に強い怪力(技術点14)と頑丈な身体を有し、図書館に現れ大暴れした。クルセダーも直接戦闘では(超体力を有していても)苦戦するが、その身体は酸に弱い。選択次第では、超技術を有したクルセダーが酸を合成して所有していた場合、それを用いる事で一撃で倒す事が出来る。

ゾンビ―(”The Reincarnation”)

 墓場から蘇った超自然的な存在。灰色の身体と水かきのある手を有する。墓場に葬られていたが、自力で蘇り、墓場を探索していたクルセダーと対決する。それなりに腕力はあり、それ以外には攻撃力は無いものの、何度も蘇る事が出来るらしい。

錬金術師("The Alchemists")

 化学者の犯罪者グループ。人間を昏倒させる薬物を悪用し、警備員を眠らせて銀行を襲い、大金をせしめている。

炎の戦士たち("The Fire Warriors")

 超能力を持つ暴走族グループ。複数名存在し、全員が全身から炎を発生させ、身体に纏わせる能力を有する。その炎で周囲の可燃物を燃やしたり、投げつける事も可能。普通の不良たちのように、普段は店で騒ぎを起こすようなけちな犯罪を行うが、この能力を悪用して火災を発生させたりもする。「F.E.A.R.」に関する情報を有していたため、下っ端として雇われていたらしい。

「ワナ師」(”The Mantrapper”)

 本名不明。トラップを得意とする誘拐犯。選択肢を誤ると、主人公もトラップに引っかかり即死する。

ふざけ魔(”The Scarlet Prankster”)

 本名不明。悪ふざけの延長の様な犯罪を行う犯罪者。遊園地のびっくりハウスを新たなアジトにしている。

煙男(”The Smoke”)

 本名不明。その身体を煙の様な気体に変身させる能力を有し、それを悪用しあらゆる場所に入り込む事が可能。その特性ゆえに、捕縛や拘束も困難。科学者のオフィスに入り込み、重要書類を電送式のカメラで撮影し、外部に機密を流出させた。

大頭脳("Macro Brain" )

 本名不明。ジーンと同じく、遺伝子実験の結果生まれた存在。大きな頭部と脳を有し、強力なサイパワーを有する。ジーン=クルセダーと異なり、利己的な性格であり、その力を悪に向け、「F.E.A.R.」に参加した。クルセダー以上の強力なテレパシーを有するほか、電撃発射を無効化し、生命エネルギーを吸い取る能力、および永続的なマインドコントロール能力なども有している。半面、アルファー波放射装置に弱い。

蛇男("The Serpent" )

 本名不明。蛇を思わせるコスチュームとマスク姿のヴィラン。毒牙を持ち、戦闘においては噛みついて相手に毒液を流す。ミュージカル女優のローラ・マンチェと交際していたが、振られたため、彼女が舞台に立っている最中に現れて誘拐しようとした。

小ネタ

 本作には、様々なアメコミのキャラクターの名前が、キャラや地名などに用いられている。

 また、クルセダー本人ももちろん、登場するヴィランや一般人たちにも、どこかアメコミのテイストが付加されており、それらの元ネタを探し出すのも楽しみの一つである。

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