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概要

ティンダロスの猟犬とは、クトゥルフ神話に登場する生物。初出作品はフランク・ベルナップ・ロングの「ティンダロスの猟犬」。

螺旋状の塔が建ち並ぶ悪夢の具現化のような都市「ティンダロス」に住まう不死生物で、作中の人物の発言から「ティンダロスの猟犬め」と呼ばれているが、犬ではなく人間に近い知的生命体である。また、人間のように個体名を持っている事も確認されている。獲物を狩るために知恵を凝らし、他の種族との協力も惜しまない存在である。


出現するときは鋭角から煙が吹き出し、悪臭とともに頭から徐々に実体化する。この臭いは凝縮された不浄の匂いそのもので、近づいただけでも鼻をつままなければ行動もままならないほどにひどい。


時間が生まれる以前に行われた、口にする事も憚られるおぞましく怖ろしい行為によって産み落とされ、清浄と不浄のうち不浄を体現する存在となったとされる。

全ての「不浄」を受け入れる実体となったため、汚れなくあらわれた「清浄」なものに飢えている。人間はその原初の「行為」とは関係のない部分を持っているとされ、それを憎んでいるという。


猟犬たちの領域にあるのは不浄だけで、人間の感覚で理解できる思考も倫理道徳も存在しない。

人間および他の普通の生き物が「曲線」を祖先としているのとは異なり、「角度」を祖先としているのだとされる。人間とその世界は清浄を起源とするため、湾曲を通して顕現するが、ティンダロスの猟犬は不浄を起源とするために角度を通って顕現する。我々が真の意味では直線の要素を持つ事ができないのと同じように、彼らは曲線の要素を持っていないのかもしれない。この概念は非常に難しく、ティンダロスに棲む者達に関してのみ適用される概念である。詳しくは下記を参照。

人間などの普通の生物が時間に干渉すると、彼らの領域に踏み込む事になるので、ほぼ確実に察知されてしまう。彼らは時間の中を行き来する者、そして自分の注意を引いた者を追いかける。


常に飢え、非常に執念深い性格である。彼らは人間および他の普通の生物が持つ、自分達が持たない「何か」を追い求め、時空を超えて犠牲者を追いかける。

清浄を起源とする曲線の時間の生き物を激しく憎悪し、一度目を付けると執拗に追い立てる。時間遡行などの行為はティンダロスの猟犬の目にとまりやすいが、それ以外にも過去視や未来視によっても発見されるリスクがある。


確認される事がない姿

その姿は正確には知られていない。というのもその姿を見て生きて帰った者がほぼいないのである。


目撃者とされる人物は、開口一番「肉体を持っていない」と発言し、またある目撃者は、「痩せこけた体に宇宙の全ての邪悪を凝縮させていた」と語る。この世全ての穢れを受け入れるために生まれたとは言え、直感で悪の塊だと感づいてしまうあたり、よほど醜い姿なのだろう。

しかしその後すぐに、「いや、体はあったのだろうか」とも言っており、犬に全然似ていないのは確かだという。つまりそれだけ不確かで言い表しようのない何かだったのだと思われる。

さらに、こちら側の生物が普通に細胞内に持つ原形質に似ているが、生命活動に必要なはずの酵素を含まない青みがかった液体のようなものを垂れ流しているそうである。


現在書かれる作品では、獣のような四足歩行で、長い針のような舌があるとされる事が多い。作中で使われた「猟犬」と言う言葉から、犬に似た姿で想像される事が非常に多い。初出作品が雑誌に掲載された際の挿絵で、すでに四足歩行で描かれていたとする証言があるが、これについて著者自身は批判的なコメントを残している。また、作品内では正確な姿がわからなかったとされているのは前述の通りである。

ロングはこのイメージを受け入れつつも、修正を図ろうとしたのか、55年後の作品である「永遠への戸口」にて、外見について「おぼろげながら狼めいており、牙を鳴らす顎と燃え上がる眼を備えていたが、彼らが前進してくるにつれて姿が変化した」と書いた。

ブライアン・ラムレイは自分の作品内で、翼を持ったコウモリのような姿と描写している。

このように、「どんな姿なのか確認されていない」と言うのが公式設定と言え、各作品によってある程度自由な姿で描写されることはある。


能力、習性

人間が一度でも猟犬と接触すると、その獲物を捉えるまでどこまでも追跡を続ける。

どんな理屈かは不明だが、時間の角を通り、過去、未来を自在に行き来する。獲物に追い付くまでには時間を要する模様。加えて対象に反撃されると意外にあっさり諦める事も多い。しかし、不死の彼らを撃退する事自体、とんでもなく困難である。また、たとえその場を凌いでも猟犬には無限のチャンスがあるのだ。

120度より鋭い角度があれば、どんな場所でも「曲がった時間」に実体化して出てくる事ができる。小説の記述によれば、「直線あるいは直角」「120度より鋭い角度」を「通過」する事ができるのだという。

古代ギリシア人によると、彼らから身を守る唯一の方法は身辺のものから一切の鋭角をなくし「曲線」のみで構成することであるという。顕現するための角度を少なくすることで侵入口を減らせることと、猟犬たちは曲線で構成された空間を嫌うためのようだ。だが現実にそのような空間を達成することはほぼ不可能に近く、目をつけられてなお最後まで生き残った者はいないとされる。


後の作品においては、ローレンス・J・コーンフォードの「万物溶解液 錬金術師エノイクラの物語」で、黒魔術師によって球体に閉じ込められて使役された。この猟犬には「ルルハリル」という個体名が存在する。ルルハリルはハイパーボリア大陸で研究されていた劇薬である万物溶解液をターゲットにされた錬金術師エイノクラがぶちまけてしまったために追い返された。


「曲がった時間」「とがった時間」

アインシュタインの相対性理論による「歪曲した空間」を基にした概念。時間とは相対的なものであり、空間も歪曲していることが分かっている。

「ティンダロスの猟犬」の登場人物によれば、過去現在未来の出来事は全て同時に世界に内包されている、過去の出来事は未だに、そして未来の出来事はすでに、どちらも存在している。

その曲がった時間の傍流にとがった時間も存在している。そして、「とがった時間」の存在は「曲がった時間」に内包される出来事とは無関係である。

とがった時間には地球上では対応する物がない奇怪な角度が存在する。人間が想像すらしていない、数学で表すこともできない異常きわまりない角度である。

原初、時間が発生する前は角度と曲線は別れていなかったが、時間を発生させ、不浄と清浄を分かった「行為」によって「とがった時間」と「曲がった時間」が分かれた。(この行為にシュブ=ニグラスが関わっている可能性がある)

通常、「とがった時間(角張った時間)」の存在は湾曲した時間に入ることができない。そのため人間達はとがった時間の猟犬たちから一時的に逃れているが、猟犬は憎み飢えながら時間を超越する機会をうかがっている。おそらく「時間に内包される決定した出来事」から外れる行動をする者を待っている。そして、いずれ猟犬たちは人間を狩り尽くすことに成功する(と、初出作品の登場人物に断言されているが、これが「曲がった時間に内包される決定事項」なのか、この男による猟犬の脅威を鑑みての推測なのかは不明)。

とがった時間の存在は曲がった時間の存在に、一度でも接触さえしてしまえば匂いをたどり、曲がった時間に限定的ながら顕現することが出来る。対象からの距離や顕現する時間などに制限があると思われる。

 

ティンダロス

「とがった時間」が支配する空間に存在するという文明都市。ティンダロスの猟犬はここから来るとされる。曲線が存在せず、何もかもが角張っているという。その描写から、明らかにヨグ=ソトースの支配の外であることもあり、どうやらアザトースの宇宙とはまた別の空間のようである。


ティンダロスの混血種

猟犬の体全体を覆っている青みがかった膿のような粘液は生きており、皮膚に付着すると対象の身体を蝕む。人間がこの粘液に汚染され、かつ生存してしまうと「ティンダロスの混血種」と呼ばれる化け物に変異してしまう。

危険極まりない毒劇物だが、水などで洗い流すことは可能である。


変異した時点で人間としての自我は消え去り、人間を嬉々として食い殺し、獲物をいたぶって楽しむ完全な悪鬼に成り果てる。

全身が角張った鋭い形をしており、人間の姿を維持しようとするが、その姿は常に揺れ動き決して一定しない。三次元と超次元にまたがって存在しているため、三次元の生物には彼らの身体の一部しか見る事ができないためである。

絶えず変化しているのではなく、絶えず見え方が変わるのである。ティンダロスの混血種が人間の外見を保つ事は非常に難しい。

彼らの露出した身体の成分は、角度の集合体に見え、曲線は全くない。


種族

ティンダロスに棲む者達

ティンダロスの王

猟犬とは異なる独立種族。王とは言うものの、単一の存在ではなく複数存在するようである。

この存在の姿は、多数の鋭い角度で出来ているように見える。人間の目にはオオカミの形に見えるが、これはこの存在を人間の心が、生来の捕食者であると認識するため。

肉体は霊的な特性を持ち、地球の時空を出たり入ったりしているため、大きさや輪郭が絶えず変化して見える。

原始からヨグ=ソトースと争っている。「とがった」時間におけるヨグ=ソトースに相当するとされ、詳細は不明ながら猟犬を遥かに凌駕する絶大な存在であるのは確実である。

ティンダロスに棲む者達が角度で構成されているのに対し、ヨグ=ソトースが球形であることからも我々の時間が「まがって」いることがわかる。

これらもそれぞれに固有の名前を持ち、最も強力な個体「ミゼーア」は本来の意味での神格でないにもかかわらず、その強力さから外なる神に分類される。


ミゼーア

ティンダロスの王の中でも最強の個体。ヨグ=ソトースと「曲がった時間」に存在する生物を憎んでいるとされる。北欧神話のフェンリルの原型になったと言う逸話だけでも、その強力さが分かる。

「外なる神」とは異なる存在だが、その外なる神すら殺しうる圧倒的な強さから、外なる神に分類されることもある(まかり間違ってもこいつの言いなりになるタマではない)。

すなわち「外なる神」に分類されるだけの最低限の特徴、完全な不滅性や世界法則に干渉出来る程、異常極まりない能力を備えていると考えられる。


ムイスラ

ティンダロスの混血種となった生物学者ジェームズ・モートンが召喚しようとした、ティンダロスの猟犬の王とされる存在。


ティンダロスの住人

文字通りティンダロスの住人。詳細は不明だが、「猟犬」以上に怖ろしい存在とされる。「猟犬」と「住人」という呼称から、猟犬たちの主人的な存在であると思われる。


祖先

シュブ=ニグラス

この女神は男性の相も併せ持ち、ティンダロスの猟犬たちの「父親」であるとされる。マイノグーラに猟犬の祖先となる存在を産ませた。


マイノグーラ

影の女悪魔と呼ばれる女神。男神としてのシュブ=ニグラスと交わり、ティンダロスの猟犬の祖先となる魔物を産み落とした。ヘルハウンドと呼ばれるこの魔物は、猟犬と比べて角度の制限を受けず、より獰猛かつ強力、そして母に忠実なのだという。マイノグーラがこちらの次元に顕現する際、この魔物を複数引き連れて現れることがあるという。


ノス=イディク及びクトゥン

ラヴクラフトの作品で、猟犬に対して呟かれた「ノス=イディクの落とし子、クトゥンの瘴気め」という一節のみに登場する存在。リン・カーターはこれらをティンダロスの猟犬の父母に設定した。他の設定とのつじつまを合わせようとするならば、直接猟犬たちを産み落としたヘルハウンズの個体の名前だろうか。


協力者達

サテュロス

ギリシア神話に登場する半人半獣の自然の精霊。クトゥルフ神話においては生命力を司るシュブ=ニグラスの眷属である。森の魔物。


ドール

巨大な芋虫かミミズのような姿をした地中生物。平均的な個体でも長さ180メートル、直径6メートルという凄まじい大きさを誇る。複数のドールが協力することで地震を起こすことが可能であり、これによって猟犬が顕現するための角度を作ろうとする。


フィクションにおけるティンダロスの猟犬

原典である小説に触れていなくとも、二次創作作品やTRPGシナリオの描写で対策として「調度品を含め角が一切無い異様な部屋」という描写が多く、そういう描写が出た時点でティンダロスの猟犬の登場と、狙われる契機となったであろう「時間干渉」という事情を察する人が多い。


  • 新・世界樹の迷宮2のDLC「強襲!異界の猟犬」に登場するボスとして登場。隠しボスの始原の幼子を凌駕する危険度を誇る。また倒した後にもFOEとして登場して特定の場所まで行かないと執拗に追いかけられるので倒しただけでは終わらない厄介な敵として登場。依頼人は前作のメインキャラクターであるサイモン・ヨークと思われる。

  • 今日の早川さんでは、帆掛フネの怪しい儀式により黄色い犬耳少女の姿で召喚された。鋭角がないと消えてしまうため、段ボールアーマーやヘルメットを装着することもある。

  • 姉なるものの登場人物『』が自他ともに認める『野良犬』であることからティンダロスの猟犬であると言われている。また主人公の自宅倉庫の地下室が角度を持ったつくりの部屋であり、2022年から企画が始まったスピンオフ小説のタイトルが「探索者と猟犬」でもある。

  • 遊戯王OCGのテーマのひとつ「ティンダングル」として登場。上記の通り、「猟犬」という字面からのイメージがそのまま反映されたようなデザインのモンスターが存在する。

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