原作・アニメFA→傷の男
概要
CV:置鮎龍太郎
2003年放送のアニメオリジナル展開では「イシュヴァールの生き残り」「破壊の右腕を持つ復讐鬼」など凡その設定こそ原作と共通しているものの、エドワード・エルリックのライバルキャラとしてイメージされていた為、比較的華奢で細面の若々しいデザインに変更されている。
本作では、彼の兄が錬金術の研究に没頭していた経緯が、死別した彼の恋人を蘇生(人体錬成)するためとされ、その末に誕生したのが“色欲”のホムンクルス・ラストという事になっている。後に起こったイシュヴァール人殲滅戦では、兄は死に行く同胞の魂を糧に「賢者の石」を生成するも、その絶望的な戦況に心を病み生成を断念。その後、原作同様キンブリーの襲撃により右腕を失った弟を救う為に、「未完成の賢者の石」を右腕として移植し息を引き取った。その為、原作と異なり片腕だけでも【再構築】までの錬成が可能であり、紅い石などの未完成の賢者の石を吸収する能力を持つ(ただし、紅い石を吸収している間は錬成反応による激痛に悶え、完全に無防備になる)。
こういった経緯もあって、兄への思いは純粋な愛情だけでなく複雑であり、自身の右腕を「家族に貰った大切なもの」と評していた原作の傷の男とは異なり、自身の右腕について心のどこかでは兄を恨んでしまった事を死ぬ間際にラストに告白している。このように、作中ではラストとの絡みも多い。
また、本編登場当初から復讐に駆られていた訳ではなく、作中で合成獣にされたニーナを殺害した件から、神の道に背く錬金術を葬るのが自らの使命と悟り、国家錬金術師殺しに手を染めていく事になる。その為、最初から純粋に復讐の為だけに動いている訳ではなく、後半は多くの民族を守る為にはより大きな力が必要だと考え、本作では人種的にイシュヴァール人に近いリオールの人々を導く立場になった事もあって、原作の傷の男とは違う形で最終的には復讐の道を捨てている。
加えて、本作ではホムンクルスサイドの目的が違う事もあって、当初は原作同様に排除対象と見なされていたが、後半は保護すべき人材と見なされ、ホムンクルスに助けられる事もあった。
原作との最大の相違点の一つとして、ロックベル夫妻を殺害したのが彼では無くなっている。その為、原作程エルリック兄弟との確執はなく、どちらかと言えばエド個人との確執が多い。その一方で「弟」という共通点からアルフォンス・エルリックとの絡みが増え、とある一件で行動を共にして以降は「スカーさん」と親しみを込めて呼ばれるようになり、原作のメイ・チャンのように「本当は悪い人ではない」と慕われるようになる。また、前述のラストの素体となった兄の恋人に対して内心では好意を抱いていたらしく、リオールで撃たれそうになったラストを咄嗟に庇う一面もあった。
その後、おなじくリオールにて因縁のキンブリーとの死闘の末、お互いに左腕を犠牲にしつつ辛勝するが、キンブリーは死の間際に二人の不意を突きアルの体を爆弾に変えてしまう。そして傷の男はアルを救う為に、自身の右腕とリオールに進軍した軍人7000人を使って彼の体を完全な「賢者の石」に錬成し、消滅(死亡)した。原作と全く異なる最後に多くの視聴者が涙した。
映画『シャンバラを征く者』では、終盤に現実世界側の傷の男とラストの同一人物が登場する(正確にはラストではなく、ラストの素体になったイシュヴァール人女性の同一人物)。ヒッチハイクをしていたエルリック兄弟を(怪訝な表情で)トラックに乗せていた。
当然ながら、元の世界の二人とは別人なのだが、DVD特典であるお疲れ様会では実は本人たちのエキストラ出演であったという設定になっている。1カット・台詞無しという扱いを不本意とし二人揃って会場に抗議に現れるも、なおもぞんざいにあしらうエドたちに激昂し顔の傷のカサブタを引剥し、手裏剣のように投擲して攻撃する(作者がアシスタントとのリレー4コマをした際のネタである)。しかし、カサブタはあらぬ方向へと軌道を描いていき、遅れて会場に現れたグラトニーに命中する。そして怒った彼によってそのまま丸飲みにされてしまった。
言うまでもないが、お疲れ様会はただのネタ特典なので、本編の彼等がこのような特殊能力を宿している訳ではなく、彼等はあくまで本編の傷の男やラストとは同じ顔の別人である。