あらすじ
今から十年以上も前、語り手がまだ高校生だった頃の春休み。
一人で祖父母の家に遊びに来ていた語り手が広縁で寛いでいると、どこからともなく奇妙な音が聞こえてきた。
「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ…」
そして、目の前の2メートルはある庭の生垣の上を、帽子が動いていた。
なんだと思って帽子を目で追っていると、生垣の切れ目から白いワンピースの大女が歩いている姿が見えた。
帽子はその大女が被っていたのだ。
大女はそのままどこかに消えてしまい、気がつくと奇妙な音も聞こえなくなっていた。
なんか変な人がいるな程度に軽く考えていた語り手だったが、祖父母にその出来事を話した途端、二人の態度が急変。
じいちゃんはどこかに電話をかけ、大慌てで飛び出していった。
残されたばあちゃんに話を聞くと、さっきの大女は、「八尺様」と呼ばれる、魅入った人間を取り殺してしまう化け物だという。
そして、八尺様から逃げる準備が整うまで、お札と盛り塩に護られた部屋で一晩を過ごすことになったのだが……。
八尺様(怪異)の概要
八尺様とは、ある村に封印されていた、正体不明の女の姿をした怪異である。
気に入った男に付き纏い、魅入った人間を数日のうちに取り殺してしまうという。
成人前の若い男性、特に子供が狙われやすいとされ、相手を誘い出すために身内の声を出すこともある。
出現頻度はそれほど多い方ではなく、被害は数年から十数年に一度だと伝わっている。
男のような声で「ぽぽぽ」という不気味な笑い方をする。また、ターゲットに近しい人間の声を真似て油断を誘ったり、窓を叩いて恐怖心を煽るといった手口を使う事も。
上記のように本来は男を襲う怪異なのだが、作品によっては女性を襲う事もある。(「2ちゃんねるの呪い」)
読みは文中では明言されていないが、「名前の通り八尺ほどの背丈があり」という文脈すれば「はっしゃくさま」であり、この読み方が主流のようである(三種の神器で有名な「八尺瓊勾玉」から「やさかさま」と読まれている例もしばしばあるが、原文にはそのような記述は無い)。
容姿
見る人によって異なり、若い女の姿をしていることもあれば、中年女性や老婆の姿をしていることもある。服装もその時によってバラバラである。
しかし、八尺(約2m40cm)はある身長と、頭に何かを載せている部分はどんな姿の時も共通している。
話の中では白いワンピースを着て帽子を被った若い女性の姿で登場した。
山女の伝承には身長が八尺というものや人に接触を図るものがあり(参照)、話のルーツを見いだす者もいる。
対抗策
盛り塩とお札で厳重に封をされた部屋には(少なくとも一晩は)入ることができない。
また、道に設置された地蔵によって特定の地区に閉じ込められているため、そこから脱出すれば追いかけてくることはないとされる。ただし、その地蔵が壊される事があれば、彼女は自由の身になってしまうとも。
pixivでの扱い
以上のように、本来はただ恐ろしい害を撒き散らすだけの存在であるはずなのだが、「白いワンピースを着た若い女」という清楚な外見のせいか、洒落怖カテゴリ内でも萌え化したイラストが多い。
それゆえ、pixiv内では本来の怪異としての恐ろしさを強調したホラーイラストと、妙にかわいい巨乳美女のイラストに二極分化された残念な傾向が見られる。
また、八尺様と共通点の多いスレンダーマンと共に描かれるイラストも存在しており、ホラー系統以外では親しい友人か恋人同士のように描かれている作品もある。
更に特殊な例としては、「特に若い少年を狙う」「気に入った子につれない素振りをされる」「わき目もふらず追いかけてくるほど一途」というあたりから、うっかり不憫系のおねショタに変換してしまったケースもあるようだ。その場合、多くは妙齢の美女として描かれ、「男のような声」という設定はオミットされることも少なくない。
2021年にはpixiv以外の場所も含め謎の再ブームも引き起こしており、これに乗じて萌えキャラ化がさらに進行。まるでミーム汚染で無力化された消照闇子のような扱いである。
また、原種よりも身長が低い五尺様や幼女化した三尺様、ハジケリストが変貌した六.六尺様(別名ポポポーポ・ポーポポ)などなど、亜種も少しずつ現れている。
因みに八尺は約2m40cm、これは2回目の骨延長を済ませたジャック・ハンマーと同じくらいの大きさであり、身長が近いことから彼と睨み合ってる絵などもある。
関連作品
- 座敷女…八尺様を思わせる異常な女が登場する話。
- 東方深秘録…雲居一輪のラストワード「*265センチの魔人現る!*」に登場。
- 八尺八話快樂巡り…叙火氏によるR-18漫画作品。ピンクパイナップル社によりアダルトアニメ化もしている。作品の読み方は「はちしゃくはちわ けらくめぐり」。アニメ作中でも八尺様は「はちしゃくさま」と発音されている。恐らくコレがミーム汚染の根源。
- ポポポのお姉さん(poleが連載している4コマ漫画) 明言されてはいないが、どう見ても八尺様にしか見えない。
- 都市伝説ビッチ―女子怪―(皐月芋網、R18) 長身ショタコンというイメージ通りだが、タイトルでは「八尺さん」。
- 闇芝居…「傘神様」という、似た怪異が登場。首が折れて傘を咥えているという特徴がある。
- 寺生まれのTさんシリーズ…Tさんでも対処しきれなかった規格外な怪異として登場(話のバージョンによっては簡単に対処している)。
- 怪異症候群2…ボスキャラの1体として登場。
- 零~濡鴉ノ巫女~…特定の条件を満たすことで戦える「背の高い女」という正体不明の幽霊として登場。
- 裏世界ピクニック…ファイル2(アニメ二話)に登場。異世界である「裏世界」に、元ネタの怪談に出てくるのと同じ姿で登場する。
- 曾金蓮…身長249cm
関連タグ
シャーロット・アマンド、人造人間No.100(読み切り版)…八尺様をモチーフにしたと思われるキャラクター。
オルチーナ・ドミトレスク…八尺様をモチーフにしたキャラクター(ゲーム内のARTWORKより)。
サーナイト…ポケモンLEGENDSアルセウスに登場するオヤブン個体の身長が2.54mと八尺様にかなり近い(やや高め?)。
テッカグヤ…こちらも似ていると言われることがある。