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A-7の編集履歴

2014-11-01 20:26:44 バージョン

A-7

えーなな

アメリカ、LTV社によって開発された攻撃機。核兵器の運用能力や超音速飛行は要求されず、代わりにA-4の倍の搭載量と、広い戦闘行動半径を求められていた。発注した海軍だけでなく、空軍でも使用された。また、ギリシャ・ポルトガル・タイでも採用された。通称は『コルセアⅡ』(海賊)。かつてのボート社製戦闘機の名を受け継いでいる。

『F-8の設計図を踏んづけて出来たヤツ』

1962年、アメリカ海軍はA-4の後継として超音速攻撃機を構想していた。

しかし超音速攻撃機は高価になることが予想されたため、亜音速の攻撃機で、しかも安価で1967年には運用開始できる事とされた。


国内数社のメーカーに要求仕様を提示し、その中からLTV(リンク・テムコ・ボート)社が受注を勝ち取った。機体はF-8をベースとし、要求仕様に合わせて再設計している。例えば亜音速飛行のため、主翼の後退角や機体の全長などが変更された。


中でも主翼は大幅に変更され、F-8のような主翼の角度変更機構は廃止された。その代わりに主翼のフラップが増設され、主翼厚を増すと共に翼内燃料タンクも増設。エンジンも新型のターボファンエンジンとなった。

F-111と同じTF-30エンジン)


配備はされたけれど

要求仕様の通り、1966年10月には部隊配備が開始された。しかし機体の下に大きな吸気口があるため、カタパルトの蒸気でコンプレッサーストールになり易い不具合があった。この不具合にはエンジンの換装しかなく、程なくエンジン換装型のB型が開発されている。


コンプレッサーストール

ジェットエンジンは外部の空気を取り入れ、風車(タービン)で圧縮して燃焼させる。この風車を複数利用した空気圧縮機は、「コンプレッサー」と呼ばれている。入ってきた空気は、タービンの各段で徐々に圧縮されていく事になるが、これが円滑に働くためには『設定されたエンジン回転数を保つ』ことが必要になる。空気を正常に圧縮できなくなるからである。コンプレッサーストールとは、このバランスが崩れて出力が急激に落ちる事である。TF-30はコンプレッサーストールをおこし易い不具合が付いて回った。


TF-30エンジン

F-14F-111にも採用された、初期のターボファンエンジンである。

ターボファンエンジンとはターボジェットエンジンと違い、取り入れた空気から、実際に圧縮して燃焼させる空気の量を任意に調整できる。これにより、どんな速度でも最適な圧力で空気を圧縮(燃焼)できるようになった。コンプレッサーストールは、初期の設計の限界なのである。


空軍からの『お呼び』

長い行動半径や搭載量の大きさは、空軍をも惹きつけた。近接航空支援(CAS)向けの攻撃機として注目されたのだ。ベトナム戦争中、アメリカ空軍はこの用途にF-100をあてていた。

しかし、F-100では低空・低速での対地支援は不向きであり、より低速が得意な攻撃機を探していたのだ。

(元々が制空戦闘機だったから当然ではあるが)


これが空軍向けのA-7Dとなった。目立った改造点としては、空中給油装置を空軍向けのものに変更している事が挙げられる。同様の機体はギリシャポルトガルでも採用され、タイでもアメリカ海軍の中古機を購入した。こちらは現在も現役である。


タイ海軍のコルセア

元々はA-10の導入を目指していた、と言われている。しかし、A-10の30㎜機銃には劣化ウラン使用の超硬度徹甲弾が用意されており、これが「核兵器にあたるのではないか」という懸念が寄せられた為に中止されたという。


劣化ウラン弾心=核兵器?

もちろん該当しない

核兵器とは『原子核反応つまり核分裂または核融合によって放出される熱、爆風および放射線といった高エネルギーを破壊に用いる兵器』(wiki)と定義されている。そういった側面よりも、むしろ機体の汎用性のなさが嫌われたのではないだろうか?

(速度は遅いくせに自動操縦ナシ・夜間暗視装置ナシ等)


劣化ウラン弾芯

いろいろと話題の絶えない劣化ウランである。『なぜアメリカは劣化ウランに拘るのか?』

それは原料の調達である。

通常、徹甲弾の弾芯にはタングステンという金属を使う。この金属は非常に重いので、とくに高速で飛翔する徹甲弾に使用される。弾芯の重量が重いと発射後の軌道が安定し、装甲貫徹力も高くなるのである。しかし、この金属が産出されるのは主に中国なので、アメリカは調達が困難になる事態を嫌って劣化ウランを使用しているのである。

(日本人なら『レアアースの禁輸』という事態を覚えているだろう)


なお、劣化ウランは原子力発電所の「廃物」であり、安価である。

しかし加工が難しくて高価になり、総合的にはタングステンと価格差は無いといわれる。


受け継がれる(?)闘志

海軍編

A-7の後継にはA-18が予定されていたが、開発が進むにつれて戦闘機型と兼ねて配備できることが明らかになった。こうしてA-18はF-18と統合され、パイロットは再訓練した上、戦闘・攻撃飛行隊として再出発している。同様にF/A-18飛行隊は、他にもF-4A-6飛行隊からも人員を吸収している。


空軍編

本機の後継にはA-10が採用されたが、あまりにも傾倒した性能なので、一時はA-7の再就役やA-16の採用が検討された事がある。しかし、A-7の再就役は叶わず(A-7Fという発展型が計画された)、A-16も不採用となってA-10は現在も現役を務めている。

(むしろ更なる改良型のC型が登場している)


げに恐ろしきはルーデルの魂の『たまもの』か。


コルセアの終わりに

2014年10月17日、ギリシャ空軍最後のA-7飛行隊が解散となり、その歴史に幕を閉じた。

アメリカ海軍では1991年、空軍でも1993年に退役、他にもポルトガルでは1999年に、タイでも2007年からは一線を退いていた。


初飛行から49年。世界を駆け回った『海賊二世』は、ようやく翼を休めることになったのである。

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