解説
CV:子安武人
アニメ、∀ガンダムに登場、ターンAの兄弟機ターンXを操りロラン・セアックと死闘を繰り広げた、同作品のラスボス。
月の民(ムーンレィス)の社会において武力を司るギンガナム家の末裔であり、ムーンレィス軍の総帥(総大将)。なお、序盤で地球側と対立していたディアナ・カウンターは正式には市民軍であり、正規軍ではない。
『月のサムライ』を自称し、その外見も特徴的で強いパーマがかかったロングヘアに殿様がするような立派なちょんまげがあり、着物を意識したボディースーツや腰に挿した刀など、その様相は歌舞伎役者のようでもあり、武士道を勘違いした外国人にも見える。
武門の長として高い誇りを持つ生粋の武人で気性がとても荒く、軍事力を持ちながら2000年以上も伝統の軍事演習ばかり繰り返し続ける状況に飽きて戦争がしたい戦争狂になってしまった。要は名剣で人を斬ってみたい衝動のようなものである。
ただしその祖先は月の女王であるディアナ・ソレルに忠誠を誓ってムーンレィスの首都ゲンガナムまで建設した程であり、代々気性の激しい家系ではない様子。ちなみに月ではギンガナム流古武術まで流布している武の名門。
当初はギンガナムもギンガナムなりにディアナに対して忠誠心を寄せていたのだが、地球帰還作戦に際し、徹底武闘派路線の彼は「地球なんて自分達に任せてさっさと武力制圧してしまえばいい」と侵略まがいの強行策を強く主張したため、平和的解決を望むディアナは彼の危険性を憂慮して、正規軍ではなく市民軍のディアナ・カウンターを新たに創設して作戦に随伴させることを決定。
可能な限り穏便に地球と月の共存を進めたかったディアナは、ギンガナムの影響力の及ばないディアナ・カウンターを連れて行くことで侵略の意図が無いことを地球側に示そうとしただけなのだが、この判断はギンガナムから「戦争」という自分たちが活躍できる(ひいては自分達の存在意義を証明できる)機会を奪うことになってしまった。
この一件で誇りを大いに傷つけられたギンガナムは「女王は自分達の忠義を裏切って蔑ろにした」と捉えてディアナから離反し、反ディアナ派筆頭であり政治を司るメンテナー家のアグリッパ・メンテナーと手を組んだ。
最初はアグリッパのクーデターに便乗してディアナ暗殺を企てるも失敗。次第にアグリッパから実質的な主導権を奪っていき、その後月の都に封印されていた黒歴史に刺激されて暴走、そしてアグリッパ死後は戦争の為の世界征服に本格的に乗り出した。
基本的に自分が戦いたいだけなので部下を余り当てにしておらず、最後はターンXの月光蝶を発動させて敵味方区別なく攻撃し、それを止めようとするターンAと激突。激闘の結果機体は相打ちし、ロランと生身で斬り合うもナノマシンの繭に捕らえられ、愛機と共に封印された。
しかしギンガナムが黒歴史を知ってしまった事や最終話直前にターンAのデータを解析済み(「後でじっくり見させてもらう」とも発言している)な事、ターン2機両方が共に封印された事を考えるといつくるか知れない封印が再び解かれた時、本編以上におぞましい事態に陥るであろう事も否定できない。
キャラの濃さと演じる子安武人の熱(怪)演も相まって、本作を象徴するとても印象が強いキャラではあるが、本編での初登場はウィルゲムが宇宙に上がった後の37話と結構遅かったりする。
彼の暴走が、結果としてギンガナム達を共通の敵として地球人とムーンレィスが共闘する要因となり、地球と月の戦争を決着させたので、物語の上での必要悪となっている。
名言集
「なぁ~ハリー・オード。お前が死んだら・・・"あっち"のディアナはどう思うかな?」
それまでハリー以外は誰も自力で気づくことができなかったディアナとキエル・ハイムの入れ替わりを、ギンガナムは早々に見抜いてハリーを挑発する。
戦に逸る言動が目立つギンガナムだが、ディアナとキエルの入れ替わりを見抜いた上でそれとなく探りを入れたり、ディアナの叱責を冷静に受け流して反論したり、クーデターが可能かどうか情勢をきちんと見極めた上で行動したりと、何気に洞察力や観察力、判断力は鋭く、戦略家・指揮官としての実力は高い。
「人類が万物の霊長を自負するのであれば、文明の灯を恐れるべきではない!」
「シャイニングフィンガーとはこういうものか!」
ターンXの溶断破砕マニピュレーターの威力を目の当たりにして。黒歴史に『機動武闘伝Gガンダム』までも含まれる事に言及し、シリーズファンに衝撃を与えた。
「ハハハハハ!我が世の春が来た!」
ディアナが『冬の宮殿』に封印されていた黒歴史を見て。地球帰還作戦でディアナ・カウンターが闘争本能を刺激されたように、黒歴史の開放はムーンレィス全体の闘争本能を刺激すると考えたギンガナムは歓喜の声を挙げる。
「全く・・・マニュアル通りにやっていますって言うのは阿呆の言うことだぁ!!
実戦経験が無いがゆえに、型に嵌った動きしかできない部下達に対して忌々しげに零した言葉。
ギンガナム艦隊は保有戦力も兵の練度もディアナ・カウンターを上回っているのだが、ミリシャとの戦いで実戦経験を積んだディアナ・カウンター相手には当初は遅れをとりがちだった。
一方、ギンガナムもギンガナムで実戦経験が無かった筈なのだが、彼は戦況に柔軟に対応して恐ろしい程の強さを発揮しており、その天性の戦闘センスの高さが伺える。
「ディアナ・ソレルという偶像、すなわち!アイドル一人討てば済む事だ。」
「庶民は!月に居ればいいのだ!ディアナがそんなに好きかぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ディアナ・カウンターとの戦闘で、巨体を誇るウォドムをターンXの片手で持ち上げて爆砕しながら、ギンガナムは吼える。
それは「寄せ集めの市民軍のくせに」正規軍である自分達を差し置いてディアナに随伴することを許されたディアナ・カウンターに対する、怒りとやっかみの発露でもあったのかもしれない。
「兄弟よぉ、今女の名前を呼ばなかったかい?戦場でなぁ、恋人や女房の名前を呼ぶ時というのはなぁ、瀕死の兵隊が甘ったれて言う台詞なんだよォ!」
∀のやったぜフラン砲でターンXを撃破したと勘違いしたジョセフ・ヨットに対する、ギンガナム先生のよくわかる死亡フラグ講座。
「お主の生体反応のデータを取りつつ、神の世界への引導を渡してやる!」
ジョセフの乗る∀を彼ごと解析をする時の、非常にハイテンションな台詞。ハイテンションすぎて「引導」が「インド王」と聞こえるとも。
「地球人になァ、∀の復元など、出来るわきゃねぇだろぉぉぉっ!!」
ジョセフを助けに駆けつけたロランたちに対する怒りの一撃。
ターンXの放った極太メガ粒子砲は流れ弾となり、傍観者を決め込んで戦場を離れようとしたグエンの乗ったウィルゲムに命中、一瞬で中破に追い込んだ。
「月光蝶である!」
ハリーらの駆るスモーのIフィールド・バンカーの波状攻撃を物ともせず、逆にそのエネルギーを吸収して、ギンガナムはついに最強最悪の大量破壊兵器『月光蝶』を発動させる。
「その誇りをくれたのがディアナなら、奪ったのもディアナなのだ!労いの言葉ひとつなく、地球に降りたんだよ!」
ロランの駆る∀との最終決戦にて、彼の「あなたが戦う力を守って来られたのは、ディアナ様をお守りするという誇りがあったからでしょう!?」という言葉を受けて。ギンガナムのディアナに対する愛憎入り混じった複雑な感情と本音が垣間見える。
そもそもギンガナム達が地球帰還作戦から外されたのは彼のタカ派的思想と言動が原因なので逆恨みも良いとこ(劇場版ではロランに「甘ったれた!」と切り捨てられている)ではあるのだが、月と王家のために先祖代々2500年以上に渡って明確な「敵」もいない状況の中、今後役に立つかもわからない軍隊を整備し、ひたすら演習を繰り返してきた自分たちの存在意義を否定するかのようなディアナの決断は、武門の長として到底許し難かったのだろう。
かといってギンガナム達を連れて行けば、それはそれで本編の展開以上にとんでもない事態になっていたであろうことは容易に想像がつくので、ディアナが間違っていたとも言い切れない。
同時に、地球帰還作戦はムーンレィス側にとっても見通しが不透明な計画であったことも伺える。
死闘の末、∀と相打ちとなった時に叫んだ台詞。
「剣で戦った事は?」
「フッ…それは結構!…勝負!」
ターンXを失ってもなお、ロランに刀を投げ渡して生身の一騎打ちを申し込む。
素人同然の筈のロランとほぼ互角の勝負になってることをよくツッコまれるが、最後に彼の手首を押し返しているため、途中で剣が折れていなければギンガナムが勝っていたとも。
関連イラスト
関連タグ
∀ガンダム ターンX シャイニングフィンガー メリーベル・ガジット
カーズ…見た目がよく似ている別作品のラスボス。主人公に倒されたがこちらも死んでいない。なお、ギンガナムの中の人はその前後の部のラスボスと同じ。