pixivでは愛称であるヤマジュンの方がタグとしてよく使われている。
概要
80年代に主にゲイ雑誌「薔薇族」に寄稿していたが、男臭さに欠けるキャラ造形と、無理矢理すぎる唐突な展開が好まれず、人知れずに歴史の闇に消え去った幻の漫画家。
というのもゲイ向けの作品で人気があるのは画風も作風も劇画調・ハード・シリアス展開といった「男臭さをこれでもかというほど引き立てるもの」と相場が決まっていたため、軽いコメディ調とレディコミ風のハンサムなキャラが持ち味の画風・作風は、ゲイ漫画の典型とはかけ離れていたのである。
逆にシリアス路線かつゲイ漫画の典型なのは田亀源五郎の作品で、「山川純一は笑えたが田亀源五郎は笑えない」という感想を持つ人も多いという。
というか同じヤマジュン作品でも作品ごとに大きな差があり、彼の代名詞とも言える「くそみそテクニック」のようにギャグ寄りで笑えるものもあれば「地獄の使者たち」のように超シリアスでまず笑えないようなものまで様々ある。
有名な話だが「山川純一」はペンネームであり、本名や彼自身が同性愛者(両性愛者)だったのかも不明。明らかではない。
ちなみに当時編集長であった伊藤文學によれば、気弱そうな青年で持ち込みの段階で生活に困窮したようなところが見受けられたという。
なおこの伊藤文學という人物は「山川純一」の名付け親にして、当時から山川を高く評価していた唯一の人物でもある。
いわゆる「干された」扱いで掲載がない時でも山川に原稿料を入れるなど、一応の援助はしていたようだ。
しかし彼の行方は伊藤でさえ知らないとのことで、そもそも本名さえ名乗っていないので個人情報も特定できず、興信所でも調べられないようだ。
伊藤は山川の人となり等をもとに個人の見解として「死亡説」をコメントした事もあるが、山川自身の生死を含めたその後は現在でもわからないままとなっている。
復刊の際にも山川からのコメントはなかった。
再評価
ところが、21世紀に入って「ぁゃιぃわーるど」、「ふたば☆ちゃんねる」、「2ちゃんねる」などのアングラな掲示板と、各所での(違法な)無断転載により「くそみそテクニック」が爆発的な人気になり、ファンの要望により「復刊ドットコム」で今まで発表した作品が単行本化。
5000円弱という高値にも関わらず初版が瞬く間に完売し、その後何回も重版した復刊ものでは異例の大ヒットとなった。
このジャンルで脚光と再評価を受けた漫画家ではおそらく現在でも唯一の存在と思われる。
また、男性同性愛者向け作品でありながら、基本的にはノンケのネットユーザーからネタとして再評価されるといった特殊な例でもあったといえる。
最近では薔薇族の元編集長の自宅などで発掘された未発表作品を集めた単行本が発売された。
2007年頃に未発表作品が薔薇族で掲載され、幻の薔薇族の漫画家として特集が組まれている。
かつて編集からもゲイからも嫌われた彼の作品がネットで話題となって薔薇族で再び扱われるのはなんとも皮肉。
現在、山川作品の全著作権を「株式会社サイゾー」が管理しており、クレジットは「©山川純一/伊藤文學/株式会社サイゾー」の連名となっている。
作風
無理やりとも取れる超展開も多々あるが、彼の作品のストーリーは良く練られており「くそみそテクニック」のようなコミカルな作品から「地獄の使者たち」などのシリアスな作品まで幅広い。
逆に超展開を逆手にとって狂気を題材にした「教育実習生絶頂す」といったものもある。
改めて言うが、ゲイ漫画では「男臭さ」を徹底的に追求した作品が好まれるため、彼の作風は異端の部類。
ヤマジュン作品岳を見て「ゲイ漫画とはこういうものか」と思ってしまってはいけない。
伊藤の推測では山川は実際のゲイの出会い・交流の場・いわゆる「ハッテン場」での交友経験がなく、ほとんどは彼の想像で作られた男性同性愛像ではないかとの見識を示している。
正体にまつわる諸説
謎多き人物故にその正体について様々な推測がネットでも行われてきた。そのうち二名が有力視されていたもののそれでも現在でも明らかにされていない。
正体ではないかとされた人物
画風が似ている漫画家その一。
同一人物ではないかとされていたが、尾瀬本人からはきっぱりと否定されている上に漫画家としての活動が山川純一よりも早かった事が明らかになっている。
画風が似ている漫画家その二。
こちらの方がヤマジュン画風との類似点は多く、辻氏はレディコミで活動している事から先述の「レディコミ風のキャラ描写」を共通点として挙げられたが本人からのコメントが無い為、やはり同一人物なのかは定かではない。
女性説
山川の作品はゲイ漫画の典型とはかけ離れている為、作者は本物の男性同性愛者の世界を知らない女性ではないかという説も僅かながら囁かれている。
編集長の伊藤の前に現れた青年・山川純一は素性を明かしていない・特に会話を交わす事も少ないところから「原稿を編集部に届ける役割の山川純一」と「実際に執筆をしている山川純一」は別人だった可能性もありうるのだ。
仮に作者の正体が女性だとすれば、何故BLを扱う出版社ではなく、似て非なる本物の同性愛者向けのゲイ漫画雑誌に持ち込んだのかという謎も残る(当時ボーイズラブという言葉はなかったが、美少年の同性愛を扱った「耽美」などと呼ばれるジャンルは存在しており、それをメインに扱う『JUNE』という雑誌も創刊していた)。
pixivで知られている代表作とあらすじ
予備校へ通うごく一般的な男の子、道下正樹。彼が公園のトイレへ急ぐ中、ベンチに座っていた若い男が自分のモノを見せ付け彼を誘う…。
「やらないか」、「すごく…大きいです…」等のセリフが登場し、おそらく彼の作品の中で最も有名な作品。
今でこそ代表作の扱いではあるが、くそみそテクニック自体は後期の作品であり他の作品同様に埋もれた作品のひとつであった。
実写化(ただし、出演者は女性である)もされたが、山川作品では実は二作目の実写化である。
ポルノ俳優、高梨亮。写真集の撮影の仕事を受けた彼にカメラマンが誘いをかけるが…。
「俺には俺さえいれば……な!」のセリフが有名。
「僧衣を脱ぐ日」
檀家巡りの帰りに浮浪者の性交を見てしまった新米の僧侶、英恵(えいけい)。あわてて逃げる彼だが、その肉体は自分の意思とは無関係に……。
タイトルゆえに、僧侶モノのエロ漫画(ノンケ向け)を探していた所、この作品に出くわした人もいたとか。
「男狩り」
刑事、日高雄介はモヒカン刈りの男が肛門裂傷で殺人を犯すという事件を追っていた。その中で、彼は事件の裏にあった悲しくも衝撃的な真実を知るのだった…。
シリアス路線の作品で、ヤマジュンがギャグ以外の作品も描けることが覗える。
また、この作品は前半部分が「ガチムチパンツレスリング フェラオの呪い編」、結末が「真夏の夜の淫夢 第一章 『極道脅迫!体育部員たちの逆襲』」に似ている。
もちろんそれらのネタが台頭しだすよりずっと前だったが。
「地獄の使者たち」
第二次大戦中・捕虜となった兵士、嶋本と小早川大尉。情け容赦ない氷のような男と知られるバウアーズ司令長官は二人の関係を知り、明日の宴の席での性交を求めるのだった。
バウアーズ司令長官に殺されると悟った二人は、掠め取ったダイナマイトである作戦を思いつく…。
「小早川大尉殿、愛しておりました…」のセリフが有名な、第二次大戦と同性愛を融合させたシリアス路線の作品。
「刑事を犯れ(デカをヤれ)」
サラリーマン、砂村俊介。雨宿りのために映画館へ入った彼はある男に出会うが、その男はホモを取り締まるために張っていた刑事で…。
考えさせられるシリアス路線の内容と共に、セリフ回しのセンスが光るヤマジュンの処女作。
「やりすぎたイタズラ」/「ぼくらのスゴイやつ」
柔道同好会の主将である長野太とその後輩の堂本は練習後の道場で性交に興じていた。
しかしその姿を盗撮されて掲示板に貼りだされてしまい、これ以上学校での行為を続けるなら名前を明かすとの脅しも付け加えられていた。犯人の正体とその目的とは?
「ぼくらのスゴイやつ」はその二年後が舞台。久しぶりに道場に訪れた長野は主将となった堂本と再会する。しかし、堂本は二年の間に柔道同好会から柔道部へと昇格していた顧問と付き合っていた。その顧問は堂本も知る意外な人物で…。
「バシィーッ」の擬音が有名。
一話完結の作品が多い中で、希少な二作品。
なお、彼の作品に興味を持たれた方はニコニコ動画内にて彼の作品を朗読した動画が投稿されているので、そちらの視聴をすすめる。
視聴はこちら。この記事で紹介した作品は全て見られる。
なお、「くそみそテクニック」はリストに載っていないので、ニコニコ動画内で各自検索してほしい。
関連タグ
キャラクター
台詞
※勘違いされやすいが「アッー!」はヤマジュン作品とは無関係。淫夢に某野球選手の出演疑惑があった際の野球監督のコメントが元。