概要
『宇宙戦艦ヤマト2202』に登場する人型機動兵器であり、宇宙戦艦ヤマト歴代シリーズを通じて初めて登場する人型量産型パワードスーツである。
デザイン担当は『2202』の副監督である小林誠。
特徴
空間騎兵隊の斉藤始が考案した小型の人型機動兵器で、航空機よりシンプルな機構はヤマト艦内工場での短期生産ができた(どう考えても複雑な動作の可動部の多い人型機械が航空機よりシンプルになるわけがないということには目を瞑ろう)。
武装は両腕に内蔵されたカノン砲、両肩に装備したパルスレーザー砲で、航空機の兵装を装備可能なハードポイントを各部に有する。背部の大出力スラスターで飛行し、両脚部先端の履帯走行ユニットにより地上を高速移動が可能。
軽快な機動力の反面、防御力が低めで被弾したら即死の危険性を伴う為、ある程度操縦技量が求められている。
まるで、ヤマトワールドにやって来たアストラギウス銀河の最低野郎とも言える。
スペック
- 全高:不明(3メートルくらい)
- 武装
・パルスレーザー砲×2門(両肩)
・小口径パルスレーザー砲×4門(手首)
・実体弾機関砲×2門(手首)
・スモークディスチャージャー(前腕上部)
・各種ミサイル(オプション装備)
胴体は腰が細く、胸部分は大きい逆三角形形状。両腕両足のボリュームもある末端肥大デザイン。特に火器が収められている関係から前腕部は伸ばせば地面に届きそうなほど長く、見た目はさながらゴリラのようである。
パワードスーツに類するが、両腕両脚は完全に機械式で、コックピット内から操作する。なので装備時は着用ではなく搭乗と言った方が近い。
搭乗時には展開された上部から中に入る。前垂れの部分に足を収まり、腰の中に搭乗者の腰もちょうど位置し、頭部のバイザー部分に頭が来る。腰部分はターレットで回転可能だが、搭乗者があるため可動域は制限される模様。
操縦方法は小説版によると、上半身はマスタースレーブ式のように搭乗者の動きをトレースする方式で、下半身はペダルを使用した重機に近い方式となっている。
主兵装は両肩に装備したパルスレーザー砲。さらに両腕の手首(袖口といった方がいいかもしれない)には小口径のパルスレーザー砲と実体弾機関砲を備える。
どれも致命打にはならないものの戦闘艦の装甲を破る程度の威力を有しており、歩兵装備ではほとんど歯が立たなかったニードルスレイブも軽く破壊することができる。
背部にはコスモタイガーのミサイルを2発搭載可能で、これで対艦攻撃能力を持たせている。
背面には推進器付きのエンジンが2機むき出し状態で取り付けられている。これを首振りすることで空中での姿勢制御を行っている模様。
重力圏でもかなり高速かつ自由に飛行することが可能で、戦闘艦の懐に潜り込んで至近距離で攻撃を加えるという芸当も行っている。
反面防御力は紙で、ニードルスレイブのニードルであっさり貫通され、脚をごっそりもぎ取られる描写もある。
各部にマーキングがあり、肩には「士魂」、前腕や頭頂部には縦長の錨マークと「宇宙戦艦大和所属 第十三空間騎兵隊」が施されている(なぜ「十三」なのかは余談を参照)。
胸と膝には個体の識別番号が描かれているが、隊長である斉藤は何故か8番機であり、1番機は山本玲が使用している。
劇中での活躍
第三章
第10話で耐圧格納庫(キ八型試作宙艇を格納している場所)に並べられた状態で初登場する。
第四章
第13、14話のテレザート攻略戦に投入される。ワープブースターを装備したコスモタイガーⅡにしがみつき、テレザート直掩艦隊の背後にワープアウト。ブースターから離脱して縦横無尽に飛び回りミサイル攻撃を仕掛け、敵艦隊を大混乱に陥れる。ヤマトがゴーランド艦隊の破滅ミサイルによって発生した乱気流にとらわれた際には、ヤマトに張り付いて増設スラスターとなり、波動砲発射時の姿勢制御を補助した。
ゴーランド艦隊撃破後はヤマトに同行する部隊と地上に降下する部隊に分かれ、前者はテレザートを覆う岩板を破壊するための波動掘削弾設置工作の補助、後者はテレザート地表に配備されたザバイバル陸戦師団との戦闘を行う。
ニードルスレイブとメダルーサ級地上戦艦を相手に最初は善戦するも、次第に物量に押され始めるが、クラウス・キーマンが敵の反射衛星砲のシステムを乗っ取ることによって友軍誤射を発生させ、メダルーサ級は旗艦を残して全滅する。
第五章
永倉機がテレザリアムに突入し、デスラーのニードルスレイブ軍団を交戦する。
第六章
第19話で白色彗星に引きずり込まれるヤマトから脱出する。この時、コスモタイガーにしがみついている機体もあるが、自力で離脱している機体もあり、なかなかの推進力を窺わせる。
第22話のデスラーとの決戦では、大量のニードルスレイブを迎撃。艦内では小型ニードルスレイブと交戦するが、苦戦している。
ヤマト搭載機以外では、アルデバランとアンタレスに搭載された別カラーリングの機体が、ヤマトの補修・改装作業に作業機械として従事している。
第七章
第24、25話における都市帝国内部の戦闘で、コスモタイガーⅡにしがみついて中枢である大帝玉座の間までたどり着き、ニードルスレイブと交戦する。
その戦闘の最中に破壊したニードルスレイブがあらぬ方向に撃ったニードルがガイレーンに命中してしまい、ズォーダーによる滅びの方舟完全覚醒の引き金となってしまう。
その後、滅びの方舟の進化を阻止するべく突っ込むキーマンのツヴァルケの上に斉藤機が乗り敵機を迎撃。最後は仁王立ちになったままの機体の中で斉藤が息絶える。
最終話ではプロメテウス搭載機が登場。第22話と同じく作業機械扱いで、カラーリングもアルデバラン機と同じだが、こちらは完全非武装なのか背部のパルスレーザー砲が取り外されている。
評価
本機は『2202』が終了した現在でも賛否両論の存在である(といっても本作の新メカは大体そうだが)。
ヤマトシリーズ初の有人人型ロボットという時点で物議を醸す存在ではある…が、実はそこはあまり問題にされておらず、存在自体の是非がどうこうというより劇中での扱い方のせいで評判が悪い。例えるならメカ版メアリー・スー。
『宇宙戦艦ヤマト2202』は『さらば宇宙戦艦ヤマト』『宇宙戦艦ヤマト2』のリメイク作品である。当然ファンが期待するのは現代風にブラッシュアップされた旧メカの活躍である。しかし、実際にお出しされたテレザート戦は
- 奇襲ではあるもののたった30機弱で100隻以上の艦隊を一方的に嬲る機動甲冑。
- 無人艦ゆえに制御装置を破壊するだけで済むとはいえ、大型戦艦1隻をたった1機で無力化する機動甲冑。
だった。
あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!「おれは宇宙戦艦アニメを観ていたと思ったらいつのまにかロボットアニメを観ていた」な…何を言っているのかわからねーと思うが(ry
インパクト重視故に一際パワーバランスを欠いた戦闘描写なことに加え、ただでさえ出番の少ないコスモタイガーⅡのお株を奪ってしまったこともあり、本機の評判はかなり低い状態からスタートする羽目に。
その後も妙なところで出番が多く、「『2202』は新メカが依怙贔屓されている」という批判(※)を本機も被り、いまいち微妙な評価のままとなってしまった。
歩兵戦力としての機動兵器という新要素自体は悪くない代物であるため、ちゃんと他のメカと領分を分けて活躍させれば評価は変わったと思われる。あるいはリメイク作品でなければ違った評価が得られたかもしれない。
ちなみにデザイン自体の評判は新メカの中では割と良い方だが、「各部のボリュームに対して腰が明らかに強度を保てないほど細い(しかも人が入るため中空)」「コックピットが細身の山本玲ですらギリギリなほど狭い(参考画像)」という部分を気にする声も幾何か存在する。如何せん玉盛氏のリアリティを考慮したディテールのメカと並ぶため余計に悪目立ちした模様(もっとも力学とか人間工学とかが無視されがちなのは小林メカでは常だが…)。
後者は公式も認識していたのか、小説版ではコックピット自体がユニット化されてパイロットごとにサイズを合わせたものへ交換できる仕様であると補完された。
pixivにおいても腰回りのスペースを広げたり強度を上げたりといったアレンジをしたイラストが投稿される傾向にある。
※ 単にいまいち世界観に溶け込んでいない新規メカが結構な尺を割いて活躍しているからというだけではなく、コスモタイガーⅡやパトロール艦などに大した活躍が無いうえ、巡洋艦や駆逐艦やガトランティスの各種戦闘機に至っては登場すらしないため、それらを差し置いての活躍ということで非難の的になっている。こうなった大体の要因としては、脚本だと戦闘シーンにおける主役級以外のメカの描写がかなり曖昧なところも多く(それが普通な気もするが)、その部分を小林氏が独自の演出とそれ用の新メカで埋めたことが挙げられる。
小説版では
大幅に性能が下方修正されており、コスモタイガーとはきっちり差別化されている。
火力は固定武装だけだと戦車未満、防御力はせいぜい小型の装甲車程度、重力圏下での自由な飛行はできず、宇宙空間でも機動力は航空機に比ぶべくもなく劣る。
想定している戦闘は遠距離砲撃戦や機動戦よりも白兵戦がメインであり、戦闘車両に類するものではなく、あくまでも歩兵戦力の拡充に重きを置いた兵器という扱いになっている。
劇中での扱いもアニメほど乱暴ではなくなり、例えばテレザート空中戦に関してだと、さすがに縦横無尽に飛び回る戦闘描写は度が過ぎると判断されたのか、コスモタイガーのワープブースターにしがみついたまま砲台としての役割に徹するという描写に変更されている(ついでに敵の数も20隻足らずまで減っている)。
ちなみに先述した斉藤が8番機を使っている理由も補完されており、第十一番惑星で戦死した古橋弦の乗機を受け継いだということになっている(そして元々の斉藤機である1番機は他の人に譲られることになるが、ピーキーに調整されすぎていて空間騎兵は誰も乗りたがらず、山本が使うことになった)。
また、「二式」は2202年とは関係なく、『星巡る方舟』冒頭で空間騎兵が装備していた装甲宇宙服が一式とされている。
技術的には『2199』でアナライザーが使用していた機動外骨格のものも応用している模様。
余談
元ネタ
デザインはヤマトファンのオフ会で小林氏が配布した『復活篇』ディレクターズカット版宣伝用ポスターのイラストとして描かれ、その後彼の自著である「ハイパーウェポン」にも掲載された斉藤式空間騎兵隊機動歩兵が元ネタ。ほぼ流用であり、肩の「士魂」や腕の「宇宙戦艦大和所属 第十三空間騎兵隊」といったマーキングまで一緒。違いとしてはパルスレーザー部分のデザインと、人間とサイズ比的にまだ「搭乗」ではなく「着用」する感じだったこと(側面の絵だけなので腰回りの詳細は描かれていない)。
元メカは本人曰く「もし2220年に空間騎兵隊がいたらと想像して描いた」らしい。『復活篇』の没メカという情報は特に無いのだが、コスモタイガーⅠという前例(※)があったせいもあり「小林は復活篇で西崎義展からヤマトにそぐわないとして没にされたものを性懲りもなく出そうとしている」という色眼鏡で見られさらに評判を悪くしてしまった。
※ コスモタイガーⅠはビームカノンを装備しているが、実は『復活篇』のコスモパルサーにもショックカノンを装備した派生型の没ネタがあった(ちなみにそれ以外にもヤマトと同型のパルスレーザーを装備したタイプやドリルミサイルを装備したタイプなどいくつか派生型のアイデアがあったが、尽く没にされている)。
脚本でのテレザート戦
評価を下げてしまった主因であるテレザート上空での戦闘だが、脚本段階だと内容が大幅に異なっている。なんと機動甲冑はそもそも戦っていない。
ヤマト航空隊が陽動を行っている隙に機動甲冑(この時点ではまだパワードスーツ)を装備した空間騎兵8名とコスモタイガー3機による工作部隊がテレザートに潜入して岩盤を波動掘削弾で破壊するという作戦を立案。しかし、スパイ→ズォーダー→ゴーランドというルートで情報が洩れていたため迎撃されてしまう、という展開だった。
本編では破滅ミサイルによるごり押し戦闘だったが、脚本ではどちらかというと知略をめぐらせた戦いだったのである。ズォーダーやゴーランドがそれっぽいことを言っていたのもその名残。ここでは桂木透子以外のスパイの伏線も張られていた。さらに鶴見二郎が負傷する描写もここにあった。機動甲冑の大活躍は色々大事なものを削った結果だったわけである。
続編では
新型の機動甲冑のデザインが2019年コンサートとヤマトクルーの会報誌で公開されている。詳細はまだ不明だが、大きな前腕など二式の特徴を残しつつも、より現実的な構造となっている模様。ちなみにサイズは大幅に縮んでおり、腕は機械式のままであるが脚は操縦者の脚で直接動かすようで、搭乗ではなく着用という感じとなっている。
二式がどうなるのかは不明。
関連イラスト
別名・表記ゆれ
関連メカ
ウォーカーマシン・戦闘メカザブングルに登場する人型機械で、掘削作業用と戦闘用に大別される。
アーマードトルーパー・装甲騎兵ボトムズに登場する人型機動兵器で、本機に最も近い存在感と言える。