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アルキード王国の編集履歴

2021-12-28 14:50:17 バージョン

アルキード王国

あるきーどおうこく

アルキード王国は漫画『ダイの大冒険』に登場する国家。

概要

地上界のギルドメイン大陸南端の半島にかつて存在していた国で、ダイの母ソアラの故郷。11年前ある事件により、半島ごと消滅した。


人物

ソアラの実父で、血縁上はダイの母方の祖父に当たる。一人称は「ワシ」。ソアラが助けた戦士を当初は受け入れていたのだが、彼の存在を快く思わなかった側近達から「あの騎士は人間ではないようで、もしかしたら魔王軍の生き残りなのかもしれませんぞ」との忠言を聞き入れ、悩んだ末にバランを追放する。


この当時はハドラーによる地上侵略が収まった直後であり、人々は魔物に対して恐怖を抱いていた。そのため、素性が知れない彼に対して疑いを抱くこと自体は仕方がないことではあったのが、人間でないことを理由に疑いを深めていった狭い視野が、のちの決定的な破滅へと繋がっていく。


既にこのときソアラは妊娠しており、二人を駆け落ちさせることになる。やがてソアラが子(ディーノ)を産んだあと、娘の居所を探り当て、テランに侵攻してソアラを取り返し、バランを捕らえる。無抵抗のバランから妻と子の無事を保証してほしいと懇願され、アルキード王も「魔物の子供とはいえワシの孫だ」と、ダイを手にかけることはしなかったが、流刑に処してしまう。

その後バランを処刑しようとしたが、突如ソアラがバランを庇ったため、結果として取り戻したはずの娘を失ってしまう。


しかし娘の死に様を「魔物を庇って死んだ恥さらし」と侮辱する言葉を口にしてしまったためにバランの逆鱗に触れ、竜の騎士の力によって文字通り国を半島ごと一瞬にして消し飛ばされてしまった。


アルキード王国の姫。後の事実上のバランの妻にしてディーノの母。

詳しい説明は該当記事を参照。


アルキード王国消滅を考察

とはいえ、確かに胸糞が悪いシーンではあるが、一国の王である彼の立場に立って考えれば王の振る舞いにも擁護できる点は存在する。


王たるもの、自分の娘が素性が知れない者と付き合っているのならば連れ戻すのは当然のことである。それが得体のしれない力を持っているのかもしれない存在ならなおのことだろう。

そして前述の通り、当時は旧魔王軍の地上侵攻直後の事である。一国の王たるものであれば素性が知れない存在を警戒するのは当然であり、側近たちの内心がどうであれ、素性が知れない彼が疑われることもまた仕方ないことだったと言える。


加えて言うと、アルキード側はバランが魔界でハドラーよりも更に強いヴェルザーと戦って人類を守っていた事は知らず、「王女を含む外交使節が外国で保護した身元不明者」と言うのが彼等の視点から見たバラン。

王城追放も客観的に見れば、単に国籍・身元・素性をはっきり明かさない男の帰化を拒んだだけ。

それにも拘らず、怪我の治療を施しリハビリにも協力して全快状態で旅立つ処まで世話をしたのだから、恩を施しても恨まれる程の事をしたとは思わないであろう。

王女と婚前交渉した末に駆け落ちされては、「恩を仇で返した」と激怒するのも当然と言える。


また、最初期はバランを受け入れようとする意志を見せていたし、逮捕した時もバランの嘆願を受け入れて、赤子の事は処刑せずに流刑に留めている。赤子を手元に残すことを許さなかったのも、王位継承その他諸々の問題を考えれば仕方ない判断だろう。

また、ソアラの行為自体、一国の王女として取るにはあまりにも浅慮であり、バランが示した覚悟や父が示した温情を結果的に無碍にしてしまったに等しい。特に父である王が激怒するのもむしろ当然と言え、内心では娘を失った悲しみを抱いていても、国民の手前それを表に出して嘆いて見せるわけにもいかない。

総じて彼自身が人間の負の側面を象徴した代表格とまで呼ばわれるべきとまでは言えず、更にいえばバランへの差別や迫害も魔物が恐怖の対象である以上は理解できない話でもない。


また、アルキード王とバラン・ソアラの両名と大きくすれ違ってしまった要因として、双方の論理が「集団生物の論理」と「一個人としての論理」で噛み合わなかったという点が大きい。

王族や貴族は、一見贅沢で不自由がない生活を営めるように見えるが、同時に自分が従える民に平和と安寧をもたらす責任と統率を任されており、時に国と民を守るために誰よりも己を殺し、一個人としての幸福を手放さなければならない重責ある立場にある。

ソアラは彼女自身が望む望まないに関わらずその双肩には国と民への責任があり、自分自身の振る舞いが国の民や国そのものに及ぼす影響が極めて大きいにもかかわらず婚前交渉を行い、挙げ句に個人の私情を最優先してバランと駆け落ちしているという点では、王族の自覚に乏しいと言わざるを得ず、半端な立ち位置で負うべき責務を投げ捨てたために事態が混迷してしまった。

また、バランにしてみても、竜の騎士という、1代限りで種の存続について考慮する必要がない戦闘種族として生まれたために、集団生物が生きるために群れや社会の維持を最優先させるという弱者の価値観に致命的に疎く、アルキード王の罵倒の真意を汲み取れなかったことも悲劇を巻き起こす一因となった。


付け加えておくと、バランにまつわる悲劇をヒュンケルを通じて勇者一行に伝えたのは本人ではなくラーハルトである。バラン同様の悲劇の経験者だけに、回想シーンでの彼の語り口調には全体的に彼目線かつバランびいきなところが大きく、客観性に欠いているという点も留意しなければならないだろう(とはいって作中でこれらを否定する描写もなかったのだが)。



と、アルキード王国側の心情を考察したが、果たしてアルキード王国に何も非は無かったのかと問われれば、疑問に残る部分が多い。

まず始めに、人間を見限るまでバランは一貫してアルキード王国側の要求に応え続けている事が挙げられる。確かに、バランの追放はアルキード王国の重鎮の嫉妬も含まれているが、バランはそれを受けて思うことはあれど、大人しくアルキード王国から出ていっている。

ソアラとの駆け落ちについても、提案してきたのはソアラの方である。バランは最初は彼女と別れる事を決意していたのだが、ソアラの懇願を受けて彼女と共に行くことを決意している。例え、体裁のためとはいえ、それを王女誘拐という形にねじ曲げたのはアルキード王国側である。仮にバランがソアラの懇願を断って置いていったとしても、ラーハルトの件もあるため、残されたソアラと産まれてきたダイがどのような扱いを受けるか、想像に難くない。

更には、ソアラを取り戻そうとしてきた王国の兵達を前に、ソアラと息子の事を思って降伏しており、処刑も甘んじて受けようとしていた。

バランがここまで人間に対して譲渡しているに対し、アルキード王国側は一方的にバランを批判し徹底的に追い詰めている。アルキード王国側から見ればバランは恩知らずだと上記で述べたが、客観的に見ればお互い様である。

総じて、繁殖不可能と思い込んで気安く子供が出来る行為をした時点まではバランの方に、バランとソアラの居所を突き止めて以降はアルキード王国側の落ち度が大きいと言える。


また、きっかけはソアラの死とはいえ、バランの人間への憎しみを後押ししたのは紛れもなく国王の発言であり、それによりバランは魔王軍の軍団長としてリンガイアやカール王国を滅ぼし、ベンガーナ王国にも被害を与え、多くの命を奪ってしまった。加えて、バランもソアラが死ぬまでは処刑を受け入れていた(竜闘気を使えば死なずに済むと分析した上で、処刑を敢えて受けようとした。アニメではその心情をカットされている)事もあり、建前でもソアラの死を嘆く素振りを見せれば、バランも「ソアラが死んだのは自分のせい」と考えて処刑を改めて受け入れ、悲劇的ではあるが一旦は穏便に済ませられた可能性もある。

それを考えれば、如何なる理由があろうと、竜の騎士を迂闊な発言で怒らせ、国民どころか人類の危機を招いた事に対する弁明にはならないだろう。

ましてや、家臣に言われる前から警戒していたのならばまだわかるが、そんな描写もないため、警戒前はどこの馬の骨とも知らないバランを受け入れる寛大さを見せておいて、家臣の進言1つで確かめる事もしないであっさり手のひらを返すのは、身勝手だと批判されても仕方がない。更に言えば、ここまで他人の言葉に流されやすいのは、判断1つで国の存亡に関わる国王として問題がありすぎる。


また、家臣達の嫉妬にも問題ある。作中でもマトリフが魔王討伐後は歓迎されたものの、後にパプニカの一部の重鎮に嫌がらせを受け、パプニカ王国に不信を抱いて離れ、人を寄せ付けなくなった。ましてや、マトリフは大魔道師だが、れっきとした人間である。また、魔王ハドラーを倒したアバンでさえ、その高い能力とカリスマを疎まれ、国家を乗っ取ろうとしたという冤罪を着せられてカール王国から追放されている(さらに、アバンは王女であるフローラから好意を抱かれているという点で、バランと共通している)。

例えバランが人間だったとしても、ヴェルザーを倒したことを知られたとしても、家臣達はあの手この手で追放しようとしただろう。そもそも、バランが人間である証明はないが、逆に魔族である証拠もないにも拘わらず(※)、アルキード王国はバランを完全に魔族だと決めつけていた。まるで、中世西洋の魔女狩りである。

また、ハドラーが大暴れをして他の魔族が彼を止められなかったとは言え、ラーハルトの父やロン・ベルクのように人間と意気投合して友好関係を築く魔族も居る世界なので、魔族=人類の敵という恒等式が成立する訳でもない。


※ダイもそうだが、バランは超人的な力以外は人間と同じ見た目であり、ましてや流れる血も人間と同じ赤い血である(魔族は青い血。竜魔人にならない限り血が青くならない)。また、人型の魔族は肌の色が人間と異なるが、バランやダイは人間と同じような肌の色である。現に、ダイは竜の騎士と判明するまでは人間として扱われている。


ダイの流刑に関して、2020年版では丁重に護送されており、ロモスまたはパプニカへの距離を鑑みれば、バランがアルキード王国を滅ぼした余波でダイを護送していた船が転覆した可能性もある。

もっとも、ダイがデルムリン島に流れ着いた時は嵐が起こっていたので、本当に事故である可能性もある事は留意する。


また、ソアラがバランを庇った事は、王家の人間として問題ある行動であったのは確かだが、アルキード側もそれによる悲劇を回避する手段もあっただろう。

バランと国王達との間は距離があり、視野を広くすれば乱入者に気付けたかもしれない。瞬間移動したのならともかく、おそらく走って乱入してきたソアラを見て、警告したり止めようとする人がいてもいいはずである。(ただし、ソアラが乱入してきたのはメラミ発動の瞬間だったので、止めようにも止められなかっただろう。)

それでも、国王は娘がバランの元に行かないように、軟禁、または護衛を付ける事もできたはずである。仮にそれらの対策をしていたとしても、ソアラを逃がしてしまいこの様な悲劇が起こったとしたら、見張りや護衛にも責任がある。

何れにせよ、バランの死を目にしようと視野が狭くなり、ソアラの乱入に直前まで気付けなかった国王側にも責任はあると言える。もっとも、回想はバラン視点であるため、バランが見ていない・聞いていないだけで、国王達がソアラの乱入を止めようとしたが間に合わなかった可能性もある。上にも述べたが、本編では当事者がバランのみであるため、真偽は定かではない。


ソアラとの間に子供ができた事についても、竜の騎士の誕生のメカニズムを考えれば、バランの代で初めて発覚した事で前例も無いので防ぎようもないし、バランもソアラに告げられて信じられないような様子であった。(もっとも、それはそれで一国の王女の純潔を奪ったという別の問題が出てくるが。

神々も、如何なる意図で竜の騎士に生殖能力を付けたのだろうか。


更に言えば、1つの王国が半島ごと消滅した大事件にも拘わらず、真相はともかく誰もその事を話題に全く出さなかったり、興味を全く示さなかったのは異常すぎる(爆発の規模や超巨大なキノコ雲からして、距離的に最も近いベンガーナ辺りは特に異常に気付いても不自然ではない)。旧魔王軍の仕業として認知されていたのかもしれないが、その描写すらも全くなく、ラーハルトが語るまで魔王軍ですら(勧誘のタイミング的に事情を知っていそうなバーンですらも)話題にも全くしなかった。そのため、他国から見て、かの国と国王に問題は何もなかったのかどうかも定かではない。

また、ダイの母がアルキード王国の王女だと、ラーハルトやヒュンケルの口から語られても、その後も誰も大したリアクションをしていなかった(状況的にバランが人間を憎む理由の方が感心が強かったのかもしれないが)。


最後に、竜の騎士は人間・魔族・竜の中で世界の秩序を乱す者が現れたら粛清するのが使命である。そのシステム上、人間を敵と見なして粛清する事自体は使命に反していない。バランが最初にアルキード王国の兵に抵抗しなかったのは、守るべき世界の一部と見なしていただけであり、決して人間の味方ではない。

バランの場合は私情も含まれているのも確かだが、人間の悪意に触れた竜の騎士が人間を見限る危険性があるのも確かであり、現に息子のダイもベンガーナの件で人間不信に陥りかけていた。そしてそんなシステムにしたのは、人間の神を含めた神々である。

アルキード王国は竜の騎士の事を知らなかったであろうが、知らずにタブーに触れて破滅に陥る事自体は、この作品に限った話ではない。ともなれば、アルキード王国の滅亡の原因は、まさしく神の逆鱗に触れた事に等しい。


ラーハルトの母に至っては人間に友好的な魔族の妻になったと言うだけで特に落ち度の無い女性が周囲に虐待された末に亡くなっており、バランだけでなく、話を聞いたヒュンケルやポップも涙を流して同情している。

むしろ、ここまでされて「人間を憎むのは逆恨みだ」と言う方が酷であり、ヒュンケル達もバランの気持ちを理解した上で説得している。


総括すれば、ソアラが今際の際に言残したように「人間が抱く、得体が知れぬものへの過剰な恐怖・警戒心・差別」といった心理的な弱さ、そしてバランの心とアルキード王の立場の何もかもがすれ違ってしまったことから生じた悲劇と言えるだろうか。

また、本家ドラゴンクエストでも、立場や恐怖心などで主人公一行や世界や国を救おうとした人を無下に扱った結果、破滅に陥った、または怒りをプレイヤーから買った国や人物も少なくない。決して他人事ではない。


なお、この問題が拗れに拗れた要因として、ハドラーの地上侵略にある。

ハドラーの侵略によって魔物に対する恐怖と不信感、警戒が強まっていた時期というのもあるだろうが、その侵略のために語られぬところで多くの人が死に、家や土地が壊され、働き手や人手が足りず畑なども失い、生き抜く糧もままならない時代か、ようやくその苦労から抜け出し始めた時代であり、見えないだけで国の土台は些細な事で崩壊に至るかわからない危うさも抱えていた時期である。

カール王国は『王城を攻撃された責任を取る形で辞任した騎士団長と近衛騎士がハドラーを討伐した』と国としての最低限の面子は保たれた形になっているが、逆に言うと他の国は自国の要衝を守るだけで精一杯、若しくはハドラーに無視される程の弱小勢力で『国民の生命財産を保証する』という国家の責務を十分に果たせておらず、正当性が揺らいでいた情勢ともみなせる。

その苦労を乗り越えるには、人が集まって一致団結することが求められ、王族の下に集権された国は、トップの安定が不可欠である。そのため、2人の駆け落ちは国の指導者や統治者の信頼を貶める事で国の団結に綻びを与え、その混乱は最悪滅ぼすアルキード崩壊スイッチも同然(崩壊スイッチを押して国を去ったのではなく、ソアラが国を去ることがスイッチ)である。そのため、アルキード王は喉元に刃を突き立てられたも同然の国民に申し開きが一刻も早く必要だった。

ある意味、ハドラーの残した爪痕がアルキードを滅ぼしたとも言える。


余談

バランとソアラの回想は悲劇であったが、上記にあるように仮にバランの立ち位置にいる者が国の崩壊を目論む悪党や魔族、あるいはそんな目論見もないタダな女子たらしだったなら、読者や視聴者は一転してその悪に同情はなく、アルキード王も家臣も国民も国を守ろうとしたとして非難されなかったであろう。逆に言えばそれだけで評価が覆りやすい繊細で危ういエピソードとも言える。

また、巨悪を倒した勇者や旅人と一国の姫君のラヴロマンスもお伽噺の定番である(初代ドラゴンクエストにおける主人公とローラ姫の恋路もこれに当たる)と同時に、その裏で未知数な存在に国を任せ、政治を担わせる不安と言う現実を突きつけており、ハッピーエンドなファンタジーのアンティテーゼとしても機能している。とはいっても、心底愛し合う2人を無理やり引き離して、古今東西、良い結末になった試しはない事は事実であるし、前述の初代主人公とローラ姫の恋路も、続編でしっかり実を結んでいるため一概に間違いであるとは言いきれない。

また、この後の話でバランは命を懸けた相手を人間というだけで死後も侮辱するという彼が嫌ったアルキード王と同じ振る舞いをしているのは皮肉である。もっとも、この時は竜魔人に変身していて人としての情が薄れている状態であった事に加え、バランからすれば命懸けの特攻が失敗した様に見えるため、無理もない話である。更に言えば、その後のその人間のまさかの行動によって改心し、2020年アニメ版では、ダイと相討ちになった後、ポップの決死の行動を再評価したと思われる描写がある。

快い結末ではないが、様々な意見が多角的に述べられる重厚なエピソードとなっている。


だからこそ、最終決戦において人間の醜さを指摘したバーンに対するダイの返答も、ある意味この悲劇に対する答えにもなり得るだろう。


関連タグ

ダイの大冒険 亡国


カール王国

上記にも述べたが、魔王ハドラーを倒した勇者アバンを、冤罪で追放している。王女が他所から来た者に好意を抱く点もアルキード王国と共通している。

アルキード王国と同じ様な事をした国が超竜軍団を率いていたバランに滅ぼされるとは、なんという皮肉であろう。

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