解説
1972年日産自動車のサッカークラブとして発足。
1993年のJリーグ発足とともにJリーグ加盟。
1999年に横浜フリューゲルスと合併し、現在の名称となる。このため、Jリーグ発足当時の名称に『F』はなく、当時の名称は『横浜マリノス』である。
2022年度終了時点でJリーグ優勝5回、Jリーグカップ優勝1回、そして2回の天皇杯優勝がある。(日産時代はさらに5回優勝)
創設以来伝統的に堅守速攻を旨としており、現時点でもJ1通算引き分け数は歴代1位、得失点差は歴代2位を記録している。
近年ではJクラブの増加やオリジナル10の降格も相次いでいるが、鹿島アントラーズと同様、1993年にリーグ発足以降、一度も降格経験のないクラブである。
2014年の転機とその後の栄光
2014年に、マンチェスター・シティを筆頭とした多数のクラブを保有する世界的なサッカー事業グループシティ・フットボール・グループの傘下に入ると、2015年からその土台を構築。2018年からは出入りの激しい攻撃サッカーへシフトチェンジし、幾度か監督が代わりながらも一貫した方向性を貫き、強豪としての地位を築くことになる。
しかし、CGFの意向で就任したエリク・モンバエルツ監督は若手主体のチームを目指した結果、中村俊輔らベテラン選手らへのあたりが強くなり、中澤佑二など他のベテラン選手への引退勧告、戦力外通告、減額などもあり、俊輔は「純粋にサッカーを楽しみたい」という想いから2017年にジュビロ磐田へ移籍。その後は皮肉にも横浜市内の横浜FCで引退、その後は同チームでコーチを務めている。移籍理由がCGFなため、将来的な指導者などとして帰還を求める一方で、「少なくともCGFが離れない限りは戻らない」という声が多い。
2018年にアンジェ・ポステコグルー監督を招聘し、4-2-1-3をベースにした超攻撃サッカー、通称アタッキングフットボールへの大胆な改革を行った。当時はどちらかといえば守備に重きがあった中での大胆な変革を試みたので、同年は残留争いに巻き込まれ、12位フィニッシュ。56得点はリーグ2位タイの多さだが、56失点はワースト3だった。ディフェンスラインを高い位置に置き、ガラ空きとなったディフェンスラインの背後を狙われるといった事態が続いたことが失点が多かった原因とされる。高い攻撃力を植え付けることには成功したものの、守備力に課題が出たシーズンとなった。
12位と聞くと、ボトムハーフではあるものの降格圏・プレーオフ圏とはやや離れた順位だと思われがちだろう。しかし、本シーズンでは最終的に12~16位であるマリノス・湘南ベルマーレ・サガン鳥栖・名古屋グランパス・ジュビロ磐田が全て勝ち点41で並んだため、実際は勝敗に加えて得失点も非常に大きく順位に影響するという例年以上に緊迫した状況にあった。
本シーズンを以って、ボンバーこと中澤佑二は現役引退。マリノス側からは契約更新を打診されていたらしいが、元々40歳で引退することを常々口にしており、有言実行する形となった。また、ポステコグルー監督が彼の疲労を心配したため、170試合以上続いていた連続フル出場記録は後半戦の鹿島アントラーズ戦で途絶えた。次に出場した試合は最終節セレッソ大阪戦のラスト10分間となり、これが現役ラストマッチとなった。
なお、カップ戦では決勝まで進出したが、湘南ベルマーレに1-0で敗戦。
2019年は前年とは打って変わり、アタッキングフットボールが完全に浸透。2連勝や3連勝を複数回重ねて勝ち点を多く稼ぎ、上位勢に加わる。特にラスト7試合を全勝して驚異の7連勝を達成し、ついにJ1優勝を果たした。ラスト10試合で目を向けると、10試合を9勝1分という驚異的な成績である。負けた試合、連敗もあったが、他クラブよりもドローが少ない代わりに勝利した試合が多く、得点数は最多、失点数も前年に比べると畠中槙之介とチアゴ・マルチンスのCBコンビや守護神らの活躍もあって大幅に改善された。最終節は2位のFC東京戦であり、FC東京が勝てば勝ち点で並ぶことになっていたが、4点以上差が付いて敗北しなければ優勝が確定していた。この試合では3-0とFC東京を圧倒して勝利で締めくくって優勝を手にした。
なお、ドラゴンボールと日本好きのトップ下マルコス・ジュニオールと小柄ながらスピードとテクニックを併せ持つ右WG仲川輝人が共に15得点を記録し、仲良く得点王とベストイレブンになった。また、仲川はリーグMVPも受賞して本シーズンの顔となった。
2020年、相手の対策や仲川の不調が響いたためか、この年は9位フィニッシュ。
2021年、アタッキングフットボールが再び席巻する。複数得点で勝利する試合を数多く重ね、中盤には7連勝も果たす。ポステコグルー監督や前半戦でハットトリックや2桁得点を達成した点取り屋であるオナイウ阿道が退団して海外へ旅立つといったこともあったが、その後も調子は落ちることはなく、圧倒的な強さを見せていた川崎フロンターレとの勝ち点差を一気に詰める。が、川崎が勝利を次々重ねていくのに対し、マリノスは時折ドローや敗北もしていたことが影響したためか、残り4試合残して川崎の優勝が決定。しかし得点数82はリーグトップであり、失点の少なさも川崎・名古屋に次いで鳥栖と同数で3位タイ。
なお、ポステコグルー監督退任後は彼のスタイルをよく知るケヴィン・マスカット監督が後を継いでアタッキングフットボールを継続している。マスカット体制ではFC東京に8-0で大勝して長谷川健太監督を辞任へ追いやる試合もあった。最終節の川崎戦では22得点で並ぶ前田大然とレアンドロ・ダミアンの得点王争いが注目され、共に1点ずつ取って決着つかず。2人仲良く23得点で得点王になった。マリノスのバンディエラにしてキャプテンの喜田拓也は「僕たちは2位じゃ満足できないクラブになっています」とのコメントを残した。
2022年、マスカット監督が開幕から指揮。すると、2試合目となった川崎戦で4-2の逆転勝ちして、川崎に初黒星を付ける。その後も勢いは止まることなく、6連勝&9試合連続複数得点を達成する、追う立場になっても何とか勝ち点1を掴むなど川崎の不調も相まって圧巻の攻撃力と粘り強さ、選手層の異常な厚さがJ1リーグで猛威を奮う(選手層に関してはアンデルソン・ロペス、エウベル、マルコス・ジュニオールの3枚同時投入の試合もあったほど)。8月は公式戦で勝利無し、終盤は残留争いに苦しむガンバ大阪とジュビロ磐田にホームで無得点で連敗して2位の川崎との勝ち点差が2に縮まるなど苦しい時期もあったが、最終的には浦和レッズ戦とヴィッセル神戸戦を4-1、1-3で連勝して川崎との勝ち点差を2のまま逃げ切り、ノエビアスタジアムの地で優勝を掴み取った。ポステコグルー監督と同じく、マスカット監督も就任翌年での優勝である。屈強な大分産のボランチ対応も可能なCBである岩田智輝がDF登録の選手としては久々のMVPに輝き、アンデルソン・ロペス、レオ・セアラ、西村拓真が2桁得点を達成。過去2年不調続きだった仲川も得点・アシスト・PK獲得を含めると15点くらい絡んだ。一方、マルコスは西村にポジションを奪われたこともあって無得点に終わり、2019年唯一全試合出場をしていた畠中槙之輔はエドゥアルドと岩田のCBコンビの台頭で出場機会が減少した。
2023年、現在もアタッキングフットボールでJ1リーグを盛り上げている。かねてから海外移籍を望んでいたMVP岩田智輝はポステコグルー監督や前田大然がいるセルティックへ、出場機会を求める6連勝最大の立役者レオ・セアラはエースストライカーを欲するセレッソ大阪へ、元々FC東京から熱いオファーが届いていた仲川輝人は東京へと旅立った。また、出場機会が減少したマルコスと畠中は退団のウワサも出たが契約更新を発表し、ファン・サポーターを喜ばせた。マルコスは横浜ダービーで久々の得点を上げ、畠中は再び替えの効かないCBへと君臨している。重要な3人が抜けたとはいえ、若手CBの角田涼太郎や右WGで覚醒したヤン・マテウス、ボランチが主戦場ながら右SBでも高評価だった山根陸の台頭などにより選手層は厚やはり厚い。前半戦は大迫と武藤が猛威を奮うヴィッセル神戸が長らく首位を走っていたが、前半戦終了段階では首位になる。
一方で、天皇杯では主力を休ませたとはいえJ2の町田ゼルビアに大敗して下剋上を許し敗退。これにより3年連続で格下相手に敗れ天皇杯敗退となると、続く「BIG神奈川ダービー」と名したホーム日産スタジアムでの川崎との試合ではスコアレスで迎えたATに失点してウノゼロで敗戦。昨年と開幕戦のリベンジを食らうと、翌日ヴィッセルが勝利したために首位からは陥落。首位争いを制することができるかが注目される。
選手やチームの特徴
上記の通り、2018年にポステコグルー監督が就任して以降、どんな相手であってもハイライン・ハイプレスによるアタッキングフットボールのスタイルを貫き、J1トップレベル級の攻撃力でJリーグを席巻し続けているのが最大の特徴。複数得点する試合が非常に多く、2022年には上記の通り、9試合連続複数得点を記録した。
一方で、ポステコグルー監督の手腕を大いに評価しつつも、現在の土台をつくったのはポステコグルー監督の前任、エリク・モンバエルツ監督であるという声も多い。
また、外国籍選手が極めて強力であることや選手獲得も的確であること、ファミリー感が強いこともマリノスの強みだといえる。
外国籍選手に関しては、2019年はマルコスに加えてティーラトン、チアゴ・マルチンス、朴一圭、エリキを獲得しており、優勝に大いに貢献した(エリキに関しては夏に来て12試合8得点という圧巻の成績)。2021年はレオ・セアラとエウベル、2022年はアンデルソン・ロペス、エドゥアルド、ヤン・マテウスといった面々を獲得し、2022年の優勝や2023年の好調に大いに貢献している。
選手獲得についても、退団した主力選手の抜けた穴も既存選手の躍進や新加入選手で即座に対応していることがうかがえる。例えば、2022年開幕前には最終ラインでティーラトンとチアゴが抜けたが、永戸勝也とエドゥアルドが加入し、リーグ最少タイの失点数に抑える役割を果たした。前年圧巻のパフォーマンスを見せた前田大然の抜けた穴もロペスの加入や前年よりさらにレベルアップしたエウベルの活躍などで目立たなくすることができたといえるだろう。
ファミリー感の強さに関しては、2011年に急逝した松田直樹が今なおマリサポから愛され続けていること、現キャプテン喜田拓也の同僚からの愛されっぷりなどからもうかがえる。
ホームスタジアムについて
横浜国際総合競技場(日産スタジアム)が正式なホームスタジアムであるが、三ツ沢公園球技場(ニッパツ三ツ沢球技場)でもリーグ戦では三ツ沢で3試合程度、カップ戦は日程の都合に応じて試合を行う。
横浜国際総合競技場
当該項目を参照。
三ツ沢公園球技場
横浜駅から割と近い場所に位置する。横浜駅西口からは臨時直行バスが多数運行されるが、そもそも三ツ沢方面への定期バスも多いのでバスの本数は全く問題ない。ただし道が混むので、横浜駅から歩いて向かう人も少なくない。市営地下鉄三ツ沢上町駅や相鉄星川駅からも徒歩圏内である。
一方で駐車場は公園内のものは極少で止めるのはまず無理。近辺にもコインパーキングはほとんどないので、横浜駅や地下鉄沿線の駅に止めて向かうことになる。
また、スタジアム自体に屋根がないため、Jリーグクラブライセンス制度のB基準違反を勧告されていたが、後に準ホームスタジアムから除外したため勧告が回避されている。
マスコット
カモメの「マリノス君」と、甥の「マリノスケ」。
また非公認(?)という立場のマスコット「ワルノス」がいる。これまでは本当に非公認のような形であったが、現在はJリーグ公式HPにも「その他マスコット」として紹介されており、微妙な立場である。
Jリーグマスコット総選挙過去順位
回 | 開催年 | 順位 | 備考 |
---|---|---|---|
1 | 2013 | 18位 | 第1回から第7回までマリノスケがエントリー |
2 | 2014 | 9位 | |
3 | 2015 | 9位 | |
4 | 2016 | 8位 | |
5 | 2017 | 9位 | |
6 | 2018 | 10位 | |
7 | 2019 |
この手のイベントは甥っ子が前に立つことが多い。おじさんはそれでいいのか、本当にいいのか。
公式サポーターズソング
ゆずが作曲した「We are F・Marinos」で、この曲はホームゲームのピッチへの選手練習前に流れるほか、日産スタジアムの横浜市営地下鉄での最寄り駅である新横浜駅と、JR横浜線での最寄り駅である小机駅で発車メロディーとして採用されている。ちなみに小机駅2番線のものは激レア。
永久欠番
3・松田直樹
表記揺れ
関連タグ
東京ヴェルディ:Jリーグ開幕時のライバル。その因縁は前身である日産自動車サッカー部時代から続いていた。
横浜FC:同じ横浜市内に本拠地を構えるサッカーチーム。
川崎フロンターレ・湘南ベルマーレ:同じ神奈川県内に本拠地を構えるサッカーチーム。
横浜DeNAベイスターズ:横浜市を本拠地とするプロ野球チーム