初代サウスダコタ級戦艦
しょだいさうすだこたきゅうせんかん
概要
初代サウスダコタ級戦艦とはアメリカ海軍の戦艦であり、未成艦。
日本の八八艦隊計画に対抗する形で計画された、いわゆるダニエルズプランにおいて建造が認められた艦級であり、同じく認められたレキシントン級巡洋戦艦とともに16インチ砲搭載艦として整備される予定だった。
本級はコロラド級の発展型として設計され、電気推進機関や多層式防御を踏襲しつつ、
同級より長砲身の50口径砲を搭載し、また装甲厚を拡充することで攻防両面での性能向上を図っており、完成したならば当時の米戦艦中最有力の戦艦となるはずであった。
同時期に計画され未成に終わった戦艦としては日本の加賀型やイギリスのN3型などがあげられ、同じく巡洋戦艦としては日本の天城型、イギリスのG3型がある。
本級が計画された1910年代後半、戦争の終結に伴って沈静化すると思われた軍拡の動きは、同大戦の戦訓を取り入れた新戦艦:ポストジュトランド型戦艦の登場により一層激化することとなり、
アメリカが第一次大戦中の対独戦力拡大の延長として、大戦後もニューメキシコ級やテネシー級の取得を行うと、それに危機感を覚えた日本は、これらに対抗する形で世界初の16インチ砲搭載艦である長門型を就役させた上で、同規模の戦艦・巡洋戦艦を含む八八艦隊の整備を計画。
すると、アメリカはそれに対抗するため、16インチ砲搭載艦であるコロラド級を就役させ、次いでダニエルズプランを打ち出して主力艦の増強を計画するにいたり、当初は主力艦の新造に消極的だったイギリスも新造戦艦の取得を検討し始め、各国間の建艦競争が戦前以上にエスカレートする結果となった。
しかしながら、大戦中、欧州諸国の居ぬ間にアジア市場に参入して好景気に見舞われていた日本や、大戦を経て世界一の債権国となったアメリカはさておき、実際に戦場となったヨーロッパ諸国、特にフランスやイギリスなどはこの大戦によって国力を大きく消耗した状態にあり、戦前以上の建艦競争に耐えられるだけの経済的余裕は持ち合わせていなかったことや、
また、勢力均衡が戦争を回避しえなかったことへの反省から集団安全保障体制確立に向けた取り組みが行われ、国際協調的な機運が高まっていたこともあり、
この建艦競争に終止符を打つべく、アメリカ大統領・ハーディングの提唱でワシントン会議が開かれて、同海軍軍縮条約により新造戦艦の取得が禁じられるにいたり、本級の建造はすべてがキャンセルされることとなった。
本級の建造中止以降、米新造戦艦の取得は十数年の間とだえることとなったが、その系譜は、海軍休日時代の兵器製造技術発展を経て、ノースカロライナ級に受け継がれた。
兵装
主砲
本級は主砲としてMk.2 50口径16インチ砲を装備し、これを三連装砲塔4基分、計12門を搭載する。
本砲はコロラド級搭載のMk.1 45口径16インチ砲の砲身長を延長したもので、
同砲と比較すると、初速が768mpsから808mpsに強化され、射程距離は32㎞から一気に41㎞にまで延伸されている。
本砲は搭載各艦の建造中止、また他艦種への改装によって艦載砲としては完成しなかったものの、
軍縮条約締結時にはすでに70本近くが製造済みであり、これらの一部は陸軍に引き渡されて要塞砲に転用された。
また、軍縮条約明けの新戦艦取得時には、予備として保管されていた本砲を主砲に採用する案などが検討されたが、
海軍休日時代の技術向上により、より軽量な砲身を製造することが可能となっていたことに加えて、条約に規定された新造戦艦の排水量制限との兼ね合いから、武装重量を可能な限り削減することが望ましいとされたため、新戦艦には新型軽量砲身であるMk.6，Mk.7砲が採用されることとなり、本砲は1948年までにスクラップとして処分された。
副武装
本級は副武装として53口径6インチ副砲と50口径3インチ高角砲を搭載し、水中魚雷発射菅2門を装備する。
従来、米戦艦の副砲には51口径5インチ砲が採用されてきたが、本級ではオマハ級に採用された6インチ砲を採用しており、
これを砲塔に搭載する案などが検討されたが、高角砲配置との兼ね合いからか、従来通りの単装ケースメイトに収められることになった。
武装配置に際しては、一層に並べて配置されていた副砲ケースメイトを、艦中央後部では二層にわけて配置するなどの工夫がなされており、高角砲は甲板上に露天式単装砲架で配置された。
艦体
船体・上部構造物
本級の船体は米超弩級艦として標準的な長船首楼型船体を取っており、艦首はクリッパー型となっている。
本級では主砲装の拡大を受けて、船体規模を全長208m、基準排水量4万トンに引き上げているが、パナマ運河の通行制限に基づき、艦幅は32mに抑えられた。
上部構造物はテネシー級やコロラド級のそれとほとんど同様で、
構造強度を増した籠マストを有している他、艦載艇置き場、揚収クレーンの配置も同様であるが、出力増強による機関区の拡大のため、煙突は大型化されて、2本の屈曲煙突を1本に接合したような煙突が採用された。
航走性能・機関
本級は対日渡洋作戦を考慮して、ターボエレクトリック推進方式を採用しており、
16基の重油専焼ボイラーと2基の蒸気タービンおよびそれに直結する発電機を有し、電動モーター4軸推進、機関出力はコロラド級の倍となる6万馬力とされた。
また速力性能に関しては、第一次大戦に前後して速力性能向上が目指されたこともあって、従来の21ktから強化されて23ktを有するものとして計画された。
防御
本級の装甲防御は対16インチ砲防御に十分なものとなっており、主砲塔前盾や司令塔といった一部の装甲厚は(1939年度計画の)サウスダコタ級に匹敵するものとなっており、
また、テネシー級やコロラド級と同様に多層式液層防御を採用して標準型戦艦のウィークポイントとなっていた水中防御を改善している。
しかしながら、アメリカ海軍の戦術思想の影響もあってか、水平装甲は依然として薄弱であった他、傾斜装甲などの防御機構は未採用であり、同じ16インチ砲対応防御といっても、後の新戦艦のそれと比べると些か見劣りするものであった。
同型艦
- USS South Dakota BB-49
- USS Indiana BB-50
- USS Montana BB-51
- USS North Carolina BB-52
- USS Iowa BB-53
- USS Massachusetts BB-54