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概要

ニューメキシコ級はアメリカ海軍の戦艦である。

本級はペンシルバニア級に次いで整備された戦艦で、前級より一層の攻撃能力拡大を狙い、当初は16インチ砲の搭載なども検討されていた。

しかしながら、議会側から提示された予算内ではそれが困難であったため、主砲口径は14インチに据え置きとし、かわりに砲身長を拡大することで妥協した。

防御能力に関しての改善点はなく、前ニ級と同様であるが、

凌波性向上のため、船体形状をクリッパー型とし、また1番艦ニューメキシコには電気推進機関を導入するなど、様々な工夫が凝らされた艦級でもある。

また海軍休日時代に米戦艦中最大規模の改装が施され、他艦とは決定的に異なる艦容を有したり、戦後には試験艦として艦対空ミサイル開発に貢献するなど、米戦艦の中でも興味深い経歴を持ったことで知られている。

武装

主砲

本級は主砲として50口径14インチ砲を搭載する。

本砲は45口径砲の砲身長を拡大して初速を増し、近中距離での貫通能力を高めたものであるが、

一方で、高初速化の影響で散布界が拡大するという欠点があった。

これに対し米海軍は初速を抑えて、弾重量を増すことで対処し、1942年には新型砲身を装備して問題を是正した。

また砲の搭載方式に関して、本級以降の戦艦には主砲塔搭載の各砲がそれぞれ独立して仰角を取り、発砲できるような装弾、操砲機構が採用された。(英語の表現によれば「not "triple" but "three"」とのこと)

副武装

本級は副武装として51口径5インチ副砲と水中魚雷発射菅を装備し、50口径3インチ高角砲や12.7㎜機銃といった対空兵装を後日装備したが、

第一次大戦後に起工したアイダホはこれらの対空兵装を就役時より装備した。

海軍休日時代には魚雷発射菅を撤去して高角砲を25口径5インチ砲に更新。

太平洋戦争中には機銃を20㎜~40㎜として、対空火力を増強した。

また真珠湾攻撃を免れて、損傷復旧に伴う大改装を経験しなかった本級では、副砲や対空火器の配置が更新されなかったため、

大半の米戦艦に装備された38口径5インチ両用砲は、1944年にアイダホが単装型を搭載したのみで、他の2隻は5インチ高角砲を使用し続けており、またシールド化も実施されなかった。

試験艦ミシシッピの兵装について

戦後に砲術試験と訓練を行う雑役艦となったミシシッピは、戦艦時代の兵装を全廃して、戦中から戦後にかけて開発された様々の兵装が搭載された。

列挙すると、ウスター級軽巡洋艦に採用された47口径6インチ砲、ミッドウェー級航空母艦や海上自衛隊の護衛艦に採用された54口径5インチ砲、また当時の米艦船に標準的に装備されていた38口径5インチ砲などが搭載された他、1953年には艦対空ミサイル・テリアの発射機構が搭載された。

観測装備

本級は主砲塔と艦橋上に測距儀を搭載し、前後マストに見張り所を設置した。

海軍休日時代にはイギリスのネルソン級などで採用された箱型の艦橋を装備して艦容を一新するとともに、近代的な艦砲用射撃管制装置(Gun Fire Control System 以下GFCS)を搭載した。

また本級の5インチ高角砲用GFCSは、改装当時にMk.37GFCSが登場していなかったため、旧式のMk.28GFCSが搭載されている。

太平洋戦争中にはレーダーが搭載され、対空捜索レーダー・SKや対水上捜索レーダー・SGを搭載した他、主砲用GFCSにMk.3射撃管制レーダー、5インチ砲用GFCSにはMk.18射撃管制レーダーが装備された。(1944年に改装を行ったアイダホは、性能不良であったMk.3レーダーを新型のMk.8レーダーに換装している。)

戦後、雑役艦となったミシシッピには兵装の装備と併せて、新開発のレーダーやGFCSの搭載も行われ、

対空捜索レーダー・SR-3やAN/SPS-6、高度測定レーダー・AN/SPS-8が搭載された他、Mk.25射撃管制レーダー搭載のMk.37GFCSやMk.56GFCSなどが搭載された。

航空機運用設備

航空機の運用は第一次大戦後に開始され、艦尾と三番主砲塔上にカタパルトを1基ずつ装備した。

航空機の揚収には艦尾のクレーン1基に加えて艦中央の艦載艇揚収クレーン2基が使用された。

太平洋戦争開戦以降も、しばらくの間は三番主砲塔上のカタパルトを残していたが、1942年6月の改装以降は撤去され、航空機運用スペースを艦尾に統一した。

艦体

航走性能

本級は比較研究のためか、1番艦ニューメキシコに電気推進機関、2番艦以降には蒸気タービン機関が搭載されている。

就役当時は蒸気タービン機関よりも電気推進機関の方が燃費がよく、また前後推進方向のスイッチが容易などのメリットがあったため、本級に引き続いてテネシー級やコロラド級にも電気推進機関が採用されたが、

その後の造機技術向上により、蒸気タービンの方が航走性能向上に有利とされたため、海軍休日以降にはニューメキシコを含めた本級3隻が新型蒸気タービンを装備することとなった。

機関出力は27500shpで、速力は21ktである。

防御

本級の防御能力は前級同様、ネバダ級に準じたものとなっているが、第一次大戦の戦訓を受けて、水平防御が若干拡大されている。

とはいえ、水平防御や水中防御が貧弱なことには変わりなく、後の改装では水平防御の強化が図られた他、海軍休日時代の大改装時にはバルジを装着するなどして対処した。

就役時の各部の装甲厚は甲板89㎜、水線343㎜、バーベット330mm、砲塔前盾457mm、砲塔側面229mm、砲塔天蓋127mm、砲塔後面229mm、司令塔406㎜である。

艦歴

就役~第二次大戦

本級は1917~1918年にかけて2隻が竣工し、先代の前ド級戦艦・ミシシッピ級2隻の売却を受けて追加で発注された1隻が1919年に竣工した。

本級は第一次大戦には参加せず、就役以降、海外巡航などを行っていたが、

1931~1934年にかけて上述の大改装を実施し、海軍休日時代の米最有力戦艦となった。

1939年に第二次大戦が勃発すると、本級はヨーロッパの枢軸勢力に備えるために大西洋に回航されていたが、1941年末には太平洋戦争が起こり、日本軍の奇襲攻撃を受けて太平洋艦隊の戦艦戦力は壊滅状態に陥ったため、本級は急きょ太平洋に回航されて日本の侵攻に備えることとなった。

太平洋戦争

本級は1941年末から1942年初頭にかけてレーダー搭載や対空火器増設の近代化改装を受けると、直ちに太平洋方面へと回航され、日本艦隊への警戒にあたっていた。

その後、米軍はミッドウェー海戦に勝利し、また新戦艦の就役によって戦艦戦力が拡充されたため、本級は早期復旧した他の米旧式戦艦らとともに1942年6月に改装をうけた。

本級はその後も断続的に改装や整備を行いつつ、1943年にはアリューシャン列島やギルバート諸島の攻略、1944年にはマーシャル諸島やニューギニア、フィリピンの攻略に従事した。

また10月に起こったレイテ沖海戦ではミシシッピがスリガオ海峡海戦に参加した。

1945年は沖縄戦に参加するなどして過ごし、終戦後は東京湾に進駐して占領軍の支援を行ったのち、9月にアメリカ本土へ帰還した。

戦後

本級は前級以前の艦とは異なって原爆実験の標的艦とはならなかったが、次級以降の艦とも異なり予備役として保存されることもなかった。

1946年7月、試験艦に改装されたミシシッピを除いた2隻が退役し、1947年11月には除籍されてスクラップとして売却された。

艦隊に残ったミシシッピは以後10年近くの間、砲術訓練や艦対空ミサイル開発に従事していたが、1956年9月に退役し、同年11月には除籍されてスクラップとして売却された。

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