ノースカロライナ級
のーすかろらいなきゅう
前級:初代サウスダコタ級戦艦 ← → 次級:サウスダコタ級戦艦
アメリカ海軍がワシントン軍縮条約明けに建造した基準排水量35000トンの新戦艦。
アメリカ海軍は広大な太平洋を戦場とした作戦を可能とするため、速力よりも航続力を重視する傾向にあり、それまでの戦艦の最大速度は21ノットだったが、フッドやレナウン級、金剛型、ダンケルク級などに対抗可能な速力を付与すべきと意見が出されており、また、技術の発達により高出力と低燃費を両立可能な機関を製造できるようになったため、十分な航続力と高速力を兼ね備えた戦艦として設計された。
数々の新機軸が採用され、性能および艦容はコロラド級以前とは隔絶したものであった。
主砲
Mk.6 45口径16インチ砲を三連装砲塔3基(前部2基、後部1基)、計9門搭載した。
第二次ロンドン軍縮条約による武装制限の影響で、設計当初はテネシー級と同じ50口径14インチ砲を搭載する計画だったが、アメリカは日本の条約破棄を見越してエスカレーター条項発効後の16インチ砲換装案を考慮し、14インチ四連装砲塔と16インチ三連装砲塔に互換性を持たせていた。
16インチ砲は初代サウスダコタ級戦艦(ダニエルズ・プラン)の50口径砲を流用する予定だったが、武装重量削減のためコロラド級の45口径砲を軽量化した新型砲身「Mark6」となった。新型砲身は1200㎏のSHS(スーパーヘビーシェル)に対応し、次級(サウスダコタ級)にも搭載された。
副武装
38口径5インチ両用砲を装備した。米戦艦として初めての採用であり、副砲と高角砲が統合され武装重量の削減や兵装配置の効率化に役立った。
当初は12.7㎜と28㎜の対空機銃を装備したが第二次大戦中には旧態化しており、20㎜機関砲(エリコンFF)や40㎜機関砲(ボフォース)に更新された、
戦後に練習艦となったノースカロライナでは、性能の陳腐化に伴い対空装備の多くが撤去された。
観測装備
砲射撃管制装置(Gun Fire Control System)として、主砲用のMk.38と両用砲用のMk.37を採用した。また、司令塔と主砲塔にMk.48光学測距儀を搭載した。
対空捜索レーダーとしてSKが搭載された他、GFCSにはMk.4射撃管制レーダー(FCR)が組み込まれていた。
1942年以降の改修でMk.38のFCRがMk.4からMk.3、次いでMk.8に更新された他、Mk.37のFCRをMk.4からMk.12と高度測定レーダーMk.22に換装。対水上捜索レーダーSGを追加し、対空捜索レーダーSKはSK-2に更新された。
船体形状
米戦艦としてはニューヨーク級以来となる平甲板型で、凌波性確保のため船首に強めのシアを設け、艦首形状をバルバスバウとした。
艦幅はパナマ運河の通行制限(パナマックス)ぎりぎりの33mにまで拡大され、2枚のスケグ(舵の前に固定された整流板)により、乱流発生による推進効率の低下と、雷爆撃の被害局限を図っている。就役直後にスケグの装着によるものとみられる高速運転時の異常振動問題が発生し、スケグの取り付け位置変更や形状の改良などが行われたが、抜本的な解決には至らなかった。
ノースカロライナ級の船体形状はその後のアメリカ戦艦の基礎となり、集中防御の徹底(サウスダコタ級)や速力性能の向上(アイオワ級)といったコンセプトにあわせて全長が調節された。
機関
4軸推進艦で、重油専用ボイラー8基にギヤードタービン4基を搭載し、ボイラー2基とタービン1基を1セットとして2セットずつを前後に分散するシフト配置。
機関出力は前級比4倍近い12万1千馬力であり、公試運転で28ノットを発揮し、航続能力は巡航速度15ktで15000海里(約28000㎞)と航続距離・経済速力の両面で改装後の旧式戦艦並みの水準を確保した。
しかし上述の振動問題があったため、実用上の最大速度は抑えられていた。