ダイオード
だいおーど
概要
陰極より陽極に加わる電圧が高いとき(順方向)に電流を流し、逆に陽極より陰極に加わる電圧が高い(逆方向)と電流の流れを妨げる半導体素子。目的に応じてさまざまな種類や工夫を施したダイオードがあるが、すべてを列挙すると長くなるため大まかな説明にとどめる。
原理
P型半導体とN型半導体を接合した構造となっており、順方向に電圧を印加するとP型半導体に存在する正孔(結合中の電子が足りない部分で正の電荷と同等。「ホール」ともいう)が陰極方向に流れ、N型半導体に存在する自由電子は陽極方向に流れていく。接合部では正孔と自由電子が結合し消滅しそれぞれの極からはどんどんと正孔と自由電子が供給されるため電流が流れる。
逆方向では正孔、自由電子ともにそれぞれの極にひきつけられてしまい、ほとんど電流は流れなくなる。
現実
順方向
接合部付近に「禁制帯」とよばれる電荷の存在できない領域があり、そこを飛び越えるためにエネルギーが必要となる。そのため、ある電圧以下では電流が流れず、またその電圧を超えてもその電圧分下がってしまう。これを順方向降下電圧といい、シリコンダイオードでは0.6V前後、ゲルマニウムダイオードでは0.2V前後、発光ダイオードでは発光する光の波長により1~5V前後となり、波長が短いほど順方向降下電圧も高くなる。このときに下がった電圧の分のエネルギーは熱や光として放出される。発光ダイオードの順方向降下電圧が高いのはそのため。また、高耐圧品やLEDモジュールではダイオードを直列接続した構造となっているため順方向降下電圧も自ずから高くなる。
逆方向
ある電圧までは「漏れ電流」と呼ばれるわずかな電流が流れる。漏れ電流のエネルギーは電圧が高くなればなるほど大きくなり、それぞれの極に引き付けられた価電子帯も徐々に競りあがってくる。ある電圧を超えると価電子帯が禁制帯を乗り越えたり(ツェナー降伏)、漏れ電流のエネルギーが結合している原子を帯電させてしまう(電子雪崩降伏)といった現象が現れて電流が一気に流れるようになってしまう。この現象が起こる電圧を降伏電圧といい、使用時にはこの電圧以下になるように設計・製造する必要がある。ちなみに、この現象をわざと利用して一定の電圧を得るツェナーダイオードというものもあり、基準電圧源として用いられている。