ランカスター
らんかすたー
双子エンジンの挫折
1936年にRAFから出された双発中型爆撃機の仕様に従いアブロ社が開発した「マンチェスター」はイギリスが期待を寄せる新世代の爆撃機であった。仕様の目玉は液冷V型12気筒エンジン2つをクランクシャフトを共用するよう合体させたX型エンジン、ロールス・ロイス「ヴァルチャー」による「四発機の出力と双発機の空力的洗練」だったが、1940年の部隊配備以来、様々な不調に悩まされた。
尾翼をもう一枚追加することで飛行安定性の問題は解決したが、エンジンの過熱、ベアリングの焼き付き、計画値を大幅に下回る出力、整備性の悪さなどを解決できず、1942年6月には全ての機体が運用を停止された。
ランカスターの誕生
アブロ社は既にこの事態を見越し、主翼を再設計して実績のあるロールス・ロイス「マーリン」四発とする「マンチェスター3」の開発を進めていた。
1941年1月9日に最初の試験飛行を行った「マンチェスター3」は優秀な性能を発揮し、ただちに量産命令が出され「ランカスター」と命名された。
「ランカスター」は1942年より「マンチェスター」と入れ替わるように部隊配備された。
実戦での活躍
元の「マンチェスター」の機体設計自体は優秀なもので、胴体の延長で巨大な爆弾倉を得たことも加わり、「ランカスター」はRAFの主力爆撃機として第二次世界大戦の終結までに156,000回の作戦に従事した。各型合計約7300機が製造され、戦闘や事故などで約3800機が失われた。
ドイツへの夜間爆撃の他、機雷敷設 、ダム破壊、10t爆弾によるUボート・ブンカー破壊、トールボーイや特殊機雷による戦艦「ティルピッツ」への攻撃などの特殊任務でも活躍した。
大戦末期には極東方面での運用が計画され、航続距離の延長や長距離洋上飛行用の航法装備、尾部銃座の強化などの改修をした極東仕様が配備された。
沖縄を拠点に1945年11月から作戦開始予定だったが、部隊展開前に終戦となった。
戦後は洋上哨戒機や航法などの練習機、ターボプロップエンジンなどの試験機などになって活躍した。
性能諸元【Mk.1B】
全長:21.18m
全幅:31.09m
全高:5.97m
重量:28.6t
発動機:液冷V型12気筒/1,280馬力×4
最高速度:450km/h
航続距離:4,300km (爆弾搭載量によって変動。ランカスターⅠの場合、航続距離は爆弾を約3100kg搭載時は4,685km、爆弾を約10,000kg搭載時は2,870kmとされた)
上昇限度:8,160m
乗員:7名
武装:7.62mm機関銃×8門
爆装:6,400kg(標準)~10,000kg(最大)