飯笥
みしげー
概要
古くなったしゃもじが化けた一種の付喪神のような存在で、文献によってはミシゲーマジムンという名前で紹介しているものもある。
真夜中にひとりでに動き出して騒いだり、幻覚などを見せて人をからかったり等といった悪戯を働いたり、他の捨てられた器物が妖怪と化した仲間たちと共に夜に遊びに出かけてゴミ捨て場から音楽を奏でたりといった様々な怪異を起こすといわれており、次のような伝承が伝わっている。
真夜中に家の扉を何者かが叩いたので、こんな夜分に誰だろうと思って扉を開けると、人の姿は無く、その代わりに1本の飯笥が倒れているだけだった。
また、次のような話もある。
ある晩に楽器の音色が聞こえて来たので男が外へ出てみると、若い男女たちが広場で遊んでおり、男もそのにぎやかさに誘われて集まりに参加して飲んだり踊ったりと楽しく一晩を過ごした。
そして疲れ果ててその場で眠った男が翌朝に目が覚めて周囲を見渡すと、広場だと思っていた場所は家の床下であり、周囲に飯笥や箸などの食器類が散乱していたという。
それ以外にもとある農夫が夜に満ちにうずくまっている牛を見つけた。そのままほっとく訳にいかないので、翌日に飼い主を探そうと思い自分の家へと連れ帰って餌のサトウキビを与えると実によく食べる。
そして翌朝、農夫が牛小屋を除いてみると牛の姿は無く、その代わりに餌として牛に与えたはずのサトウキビが積み上げられた頂上に飯笥が1つ置かれているだけだったという。
なお、琉球では古くなった食器類は妖怪化するとされており、その為、古くなったこのような道具は大切に使って捨てないようにするか、やむを得ず捨てる時は十分に供養してから捨てる様にと戒められてきたといわれている。
余談
ちなみに飯笥は“いいけ”とも呼び、この場合はしゃもじの事を指す意味となる。
ちなみに『付喪神絵詞』には名称不明の薄墨色の衣を身に纏い、右手で杖をつき、左手で飯が持割れた黒い茶碗をもった一つ目のしゃもじの付喪神が描かれている。