バンダー・デッケン
ばんだーでっけん
1のデッケン
フルネームを「ヘンドリック・ファン・デル・デッケン」といい、ヘンドリックを省略した英語読みが「バンダー・デッケン」。
性格はかなり酷薄で、船だけでなく船員すら平気で奴隷のようにこき使うような男だったという。デッケンは1751年にオランダのアムステルダムから南アフリカのケープタウンに向けて出航したが、これが全ての始まりだった。
難所と知られるアフリカ近海を越え、いよいよ目的地のケープタウンへ。あとは入港するだけ……
誰もが安堵したその時、突如として大嵐が巻き起こった。というのもアフリカ南部の喜望峰近海はインド洋の暖流と大西洋の寒流が交差するエリアにあり、嵐の多発するエリアなのだ。
「ちくしょう……!!こんなフザけた話があるか!いよいよ目の前だって時によ!!」
元々短気な上に疲労も重なり、平静を欠いたデッケンは悪魔のような命令を下した。
「よく聞けお前ら、嵐だろうが大シケだろうが関係ねェ… 何としてでも入港するってことだ!!!」
呆気にとられる船員たちだが迂闊に反論もできず、「もうどうにでもなれ!」と言わんばかりに船を漕ぎだすも……当然こんな無謀が通るはずもない。ある者は海に落ち、またある者は力尽きて倒れ、もはやマトモに立っているのはデッケンくらいのものであった。
この惨状を見かねた神が「デッケンよ、そこまでして先を急ぐ理由はあるのか?嵐が去るまでやり過ごすべきだったんじゃないのか?」と訪ねるも、
「散々傍観してたくせによく言うぜ……今さら神になんざ祈るかよ!! お前らがこうして妨害しやがったからこうなったんだ…こうなりゃ、最後の裁きとやらの日までかかろうが入ってやろうじゃねェか……!!!」
と、恨みと冒涜に満ちた返事をした。
「……ほう、確かに聞き届けたぞ ならば貴様の望み通り、審判の日に入港できるようにしてやろう」
こうして神の怒りを買ったデッケンは永遠にケープタウン沖を彷徨う宿命を課せられ、悪天候の日にはデッケンの姿を見ることができるのだという。
2のデッケン
上記の伝説を元にしたであろう神に呪われた海賊。
ブルックによれば数百年前の海賊らしく、「ある嵐の夜突如として錯乱し、船員を海に投げ込んだ挙げ句神にツバを吐く」という冒涜を行った結果暗い海底で生き続けるようになったのだという。作中では主に9代目の末裔を指すが、彼によれば代々受け継がれる名前とのこと。
また伝説の真偽は不明ながら、海王類すらも従える伝説の人魚を探して魚人島に向かい、そこで息絶えたのだという。