概要
漫画『憂国のモリアーティ』に登場するシャーロック・ホームズ×ウィリアム・ジェームズ・モリアーティのBLカップリング。
言わずと知れた名探偵シャーロック・ホームズとその宿敵モリアーティ教授だが本作での二人は宿敵でありながらウィリアムはシャーロックの探偵としての資質を見込んで自分たちの仕立てる劇の主役として舞台に上げ、シャーロックは出会った当初から強い興味をウィリアムに抱く。
ビジュアルも正義側に立つシャーロックがどこかアウトローな印象を抱く風貌なのに対し、ウィリアムは育ちの良い貴族の紳士と言った風貌で髪はシャーロックが黒、瞳の色は碧、ウィリアムが髪の色は金色、瞳の色は緋色と対照的。
なお身長は互いに185㎝、年齢は24歳(ジャンプフェスタでの質問コーナーより)。原作者曰く「二人は同じにしたかった」とのこと。
注意
この記事は原作の流れを中心に記載していますが、Twitterで見かけた感想や主観も含まれます。
あくまで非公式カップリングであるので注意。
関係性
二人の出会いは原作第五話「ノアティック号事件」(アニメでは六話)、ウィリアムは計画の一端のために、シャーロックは仕事の依頼人に誘われ(原作者のツイートにて判明)乗船したノアティック号で出会う。
計画のことで頭を巡らせていたウィリアムがふと螺旋階段に目を留め見惚れたところに、見た人物の職業当てをやっていたシャーロックが通りかかり見事にウィリアムが「数学者」であることを当てる。
見た目から貴族、長男ではないことを当てるが数学者という推理には螺旋階段を見ていた「角度」と「時間」と「距離」が根拠と話すがその「しかし彼は登らず足を止める。細やかな装飾には目もくれずむしろ一歩下がって階段を全体を観察し始める」という台詞からウィリアムがシャーロックに気づく前にシャーロックがウィリアムに気づき、その様子を見つめていたという証拠である。
その後見事数学者と当てたシャーロックにウィリアムは逆にシャーロックのことを推理する。
その中で「薬物依存のきらいがありますね」と顔を寄せるシーンがある。めちゃくちゃ近い。
それによってシャーロックもウィリアムに興味を抱き、その後船で起こった殺人劇が「何者かが仕組んだ船まるごとを使った舞台」であると見抜き、その推理をウィリアムに話す。
そのことでウィリアムは彼の探偵としての資質を見込み、自分たちの起こす劇の主役として相応しいかジェファーソン・ホープを使ってオーディションを行い、「自分たちのように手段を選ばない人間ではない」と判断して舞台に上げる。
一方シャーロックもその「緋色の事件」にて裏で手を引く「あの方」の存在を感じ高揚感をあらわにする。
二人の二度目の邂逅は#15『二人の探偵 第一幕』で「あの方」の手がかりが手に入らずホープを殺していればよかったとまでその謎を追い求め焦がれたシャーロックは、たまたま乗った列車でウィリアムと再会を果たすのだがその直前に相棒のジョン・H・ワトソンと口論になり不機嫌だったにも関わらずウィリアムの姿を発見した途端に一変し嬉々とした様子で駆け寄ってウィリアムと同じテーブルにつく。
ルイスが驚き「もう食事が終わったところで…」と控えめに拒むもシャーロックはお構いなしで、ウィリアムもむしろ楽しんでいるようにシャーロックの会話に付き合う。
そこでシャーロックは「緋色の事件」にて会ったジェファーソン・ホープから「あの方」の正体について聞いたとブラフをかけ「おまえがあのお方だったんだな。ウィリアム・ジェームズ・モリアーティ」と言い放つ。
同席していたルイスもそれがブラフだと見抜き、「手に負えなくなる前に消さねば」と危機感を抱くがウィリアムは悠然と微笑み「私がやったと証明するのが貴方の仕事では…?」と見事な切り返しでシャーロックのブラフを煙に巻く。
その反応にシャーロックはますます楽しそうに笑い「そのキレる犯罪卿ってのがおまえだったらいいなって思ってたんだよ」と告げる。
それにウィリアムは目を見開いた後、背もたれに腕を乗せ挑発的な笑みで
「Catch me if you can,Mr.Holmes」
と返す。
それに対するシャーロックの戦慄と狂喜に満ちた表情で背筋を震わせる描写が凄い。
すぐにウィリアムは「とでも申し上げれば貴方の気は済みますか?探偵さん」とあくまで冗談として付け足すがその表情はどこか悪魔めいた美しい微笑である。
その後列車内で起こった事件を二人は協力して解決することになるが(推理対決と言っているが実際は協力のような感じ)この際に突然シャーロックがウィリアムを「リアム!」と愛称で呼び出したのである。
これ、二度目の出会いである。二回会っただけの相手を酷く執着する「犯罪卿」だったらいいと言い愛称で呼ぶ。とにかくウィリアムにはぐいぐい行くシャーロック。
ルイスに殺意を向けられていようとお構いなしである。
また殺人現場を見ただけで即座に事件のあらましを推理し、事件を解決した二人を見て居合わせたレストレード警部が「ホームズに比肩する頭脳の持ち主が同時代に存在するとは。これも運命か…」と内心で呟く。
また事件解決後にウィリアムは「彼は人を信じすぎる。だがそれは必ずしも悪いことじゃない。僕は彼のそんなところが好きだし」とルイスに話している。
その上原作者は「実はウィリアムはあの列車にシャーロックが乗るという情報を得て乗った」と話しており実は偶然ではなかったことが明らかになっている。
「大英帝国の醜聞」編にてアイリーン・アドラーを巡って犯罪卿と取引することになったシャーロックだが実際廃教会で言葉を交わしたのはアルバートである。
以下、単行本7巻〜14巻とノベライズ版のネタバレ(アニメ派の方は注意)
「大英帝国の醜聞」編時点で犯罪卿が義賊という確証を持っていなかったにも関わらずアイリーンの身を犯罪卿に預け、犯罪卿がアイリーンを救ったと確信するシャーロックが犯罪卿を通してウィリアムを見ていることは事実であり、その後の「ホワイトチャペルの亡霊」「ロンドン警視庁狂想曲」にて犯罪卿が義賊という確信を持ったシャーロックは#31「一人の学生」にてダラム大学まで赴きウィリアムに会う。
なおロンドンからダラムの距離は約400キロ。東京~京都間くらいの距離である。
この距離をウィリアムに会うためだけに列車に乗ってダラムに行くシャーロック、最早愛では…?
しかもこれが二人の三回目の邂逅である。
「列車の事件の後に会おうって約束してただろ?」と言うシャーロックに「お誘いに応じた記憶はないのですが…?」と答えるウィリアムだがまんざらでもなさそうな笑みである。
そして大学内の噴水のそばで話す二人のシーン。
犯罪卿が義賊という確信の元どうするつもりかと尋ねられたシャーロックは「俺は奴を捕らえ断罪し、その犯罪の責任を取らせるつもりだ」と答え、シャーロックの台詞に対しウィリアムも「罪を犯した者にはそれ相応の責任を取らせるべきです。義賊かどうかは問題ではない」と満足そうですらある笑みで返す。
だがその後シャーロックが「まあ俺は奴の謎を暴いてとっ捕まえることが出来んならこの命を捨てたって全然構わないんだがな」という台詞に
「ええ、その覚悟があればきっと適いますよ」
と優しい微笑で答えるウィリアム。そのウィリアムを見つめるシャーロックの表情は優しく切なげであり慈しむような微笑みであった。
もうこの時点でおなか一杯であるがまだ話は続く。解答者の名前がない答案用紙の主を探す依頼をウィリアムから受けたシャーロックはその主であるビル・ハンティングを見つけ、ウィリアムと二人で彼を大学に編入させる。
この過程で「才能がある者はそれを生かすべきであり生まれによってそれが左右されることがあってはならない」という互いの思想に共感し合う二人。
また列車に乗り込むシャーロックを見送りに行ったウィリアムは「犯罪卿を捕まえられるのならば命を落としても構わないと先程仰いましたが貴方は犯罪卿を捕らえ必ず生きて還るべきだ」と述べそれまで「ホームズさん」と呼んでいたシャーロックを初めて「シャーロック」と呼ぶ。
だがその声は列車の汽笛にかき消されてしまう。
シャーロックはそれに咥えていた煙草を落とし「今、「シャーロック」っつったか!?」と喜ぶがウィリアムは常の微笑で「いえ何も?ホームズさん」と知らぬふりをする。
シャーロックは「またロンドンで会おう!リアム!」と言葉を残して走り出した列車と共に去るが、ウィリアムはそれを見送りながら「また必ずお会いしましょう。…シャーロック」とシャーロックに聞こえないようその名を繰り返した。
なおノベライズ版第二巻では大学から駅までの間にシャーロックが受けた依頼をウィリアムが手伝う話が書かれており、二人が共闘するシャーウィリ好きには美味しすぎる展開である。
その話の中でシャーロックの身を守るためにウィリアムが着ていた鉄板を仕込んだ外套を貸すシーンがある。くどいようだが原作でシャーロックがウィリアムの服を借りているのだ。
この事件で二人は阿吽の呼吸で事件を解決しており大変素晴らしいというかくどいようだが三回しか会っていない二人とは思えない息ぴったりのコンビネーションであった。
その後二人が直接会うシーンはコミックス12巻となるがその前の#39にてホワイトリー議員を殺害した犯罪卿の真相を一人正確に暴き、「犯罪卿が義賊であることは揺るがない」とシャーロックは確信している。
そして二人の四度目の邂逅となるのが#46「犯人は二人 第三幕」である。
相棒のジョン・H・ワトソンの婚約者メアリーを脅迫する脅迫王ミルヴァートンからメアリーの弱みを盗み出すためミルヴァートンの別邸に侵入する手はずだったシャーロックは何者かに襲撃されている別邸の様子を見て共にいたジョンを警察を呼びに行かせると一人で屋敷の中に侵入する。
そこにはミルヴァートンに銃口を向けるウィリアムの姿が…。
遂に「名探偵」と「犯罪卿」として邂逅した二人。ミルヴァートンはシャーロックにウィリアムを逮捕するよう言うがシャーロックはそれを拒否した上で
「────アム?そうだよな…?おまえがここにいるってことは間違いなくそうだったんだ。
ハッハッハ!だよなリアム!!そうだよな!よかったよおまえで!」
とウィリアムがその場にいることを喜ぶ。
「俺は正直おまえじゃなきゃ嫌だったんだ。おまえであって欲しかったしおまえでなきゃ駄目だった。
だから今ここにいるのがおまえで本当に嬉しいぜ」
とウィリアム=犯罪卿であることを心底喜ぶのだ。
知っているか?これ四度目の邂逅でありミルヴァートンの前でやっているのである。
しかも相手が「犯罪卿でなければよかった」と思うならまだしも「おまえでなきゃ駄目だった」である。
シャーロック…おまえ…
その後ミルヴァートンはシャーロックの手で殺害されることとなるが屋敷へと戻る馬車の中でウィリアムは狂喜に満ちた表情で「これで間違いなく彼は僕のことも殺してくれるはずさ…」と零す。
こちらも「君にだけは正体を知られたくなかった」どころか「早く僕の正体を暴いて裁いて殺してくれ」状態である。
なんなんだおまえら
その後#48から始まる「最後の事件」編にてウィリアムは犯罪卿として英国全ての敵となり自らの死を前提とした最終計画を決行。
ミルヴァートン殺害の罪で拘留されたシャーロックは警察内でウィリアムの謎を全て解き明かしていく。
ウィリアムの貴族狩りによって混乱に陥った英国で、女王の要請によって「犯罪卿逮捕」を命じられたシャーロックは拘留を解かれ221Bに戻る。
そこでジョンに「あいつは俺の大事な友達なんだ」「俺はあいつを救ってやりたい」と告げる。
また秘密裏にシャーロックに内通してきたルイスとフレッドに対しても「ウィリアムを救う」と宣言。
#53「最後の事件 第六幕」にて221Bに一人やってきたウィリアムと対峙したシャーロックは「どうして、俺なんだ?」と尋ねる。
犯罪卿を裁く探偵役、犯罪卿を始末する役目がなぜ自分なのか、なぜ自分を指名したのかをウィリアムに問う。
ウィリアムはそれにはっきりとした答えを口にしないが逆に「なら君はどうして、犯罪卿が僕なら良いと思ったんだい?」と尋ね返す。
それにシャーロックは「そんなの友達だからに決まってんだろ」と即答。
いやそれはおかしい
宿敵でありながらその宿敵がおまえなら良いと思う理由が友達だからというのは、なんなんだおまえ…。
おそらく読者のほとんどが抱いた感想である。
その場では答えを口に出来なかったウィリアムはシャーロックに手紙を託して221Bを去る。
手紙に記された場所に赴いたシャーロックはそこでウィリアムの今までの犯罪計画書と共に自分宛の手紙を見つける。
「君との出会いは罪深い計画を一刻忘れてしまうほどに楽しいものだった。
唯一の理解者を得られた気がしたんだ。
互いの立場がなければずっと語り合っていたかった。
全てを投げ出して君とずっと謎解きに興じていたいとさえ思った」
そう、ウィリアムもまた出会った時からシャーロックを友人だと思っていたのだ。
その手紙はこう締めくくられている。
「もし違う世界に生まれ変わることが出来たなら今度こそは君と手を取り合える、本当の友達に」
その言葉を受け、シャーロックは「ずっと同じ気持ちだったんじゃねえか」と呟くと駆け出す。
「生まれ変わったら?まだ間に合うだろうが!!!」
胸熱過ぎる。というか手紙で相手の気持ちを知るとかどこの少女漫画だ。出会った時から相思相愛とかなんなんだおまえらは。
そしてロンドンのタワーブリッジの上で再び対峙するシャーロックとウィリアムだがウィリアムの意志は固く、自らの死で幕を引くため観衆の前で橋から落下する。
その手を掴むシャーロックだが二人の足場はその重みを支えきれない。
そこでウィリアムは「君は探偵としてではなく、友達としてここに来てくれたんだね」と言い、
「シャーリー」
とシャーロックを愛称で初めて呼んだのである。
「君だけは生きて還って欲しい」とシャーロックの腕を切りつけてまで手を離させたウィリアムだが、一人川へと落下するウィリアムをシャーロックは追いかけ飛び降りるとその身体を抱きしめ万感の思いで告げる。
「やっと、捕まえたぜ」
そして二人は抱き合ったまま(というかシャーロックがウィリアムを抱きしめたまま川へと落ちる。
端的に言おう。
これ原作???薄い本でなく???何度も薄い本で見たようなのが最大火力で公式から来たぞ???
多分見たほとんどの人間がこう思ったであろう凄い展開である。
この#55の扉絵はセンターカラーでシャーロックがウィリアムを抱きしめながら落ちる絵であり、煽り文には「遂につかまえた。おまえ、独りにさせやしない」「つかまえてはなさないで」と書かれている。
この扉絵の威力にやられて本誌を購入したコミックス勢もかなり多かった。
なおこの扉絵はコミックス14巻の特典イラストカードにもなりこれを目当てに複数購入するファンも多かったようである。
ちなみに一話前の#54の扉絵は薔薇の花の上に寝そべるシャーロックで煽りは「握った手を、俺は絶対に放しはしない」。
アニメ化宣伝の広告でも「謎が俺を狂わせる。その謎、それはおまえだ、犯罪卿」と告白めいた煽りが載せられておりそれがアニメ2クール目でCMとして音声つきで放送されファンを狂喜させた(なおその煽り文は#52の扉絵にて英訳版で載せられてもいる)。
とにもかくにも公式が最大手を通り越し、とんでもない最大火力の展開をぶち込んでくることに定評のあるCPである。
14巻ラストにてシャーロックの生存は判明しているがウィリアムは不明のまま。
またその本名も不明のままであるため、原作の続きを待ちたい。