旭川市立北星中学校女子生徒いじめ凍死事件
あさひかわしりつじょしちゅうがくせいいじめとうしじけん
事件の経緯
当該女子中学生は2019年4月に北海道旭川市の旭川市立北星
中学校に入学して間もなく、学校の近くの公園で知り合った2
学年上の同じ中学校の女子を含む中学生男女らにいじめられ
るようになったその中の他校の男子中学生の「裸の動画送っ
て」「写真でもいい」「お願いお願い」「(送らないと)ゴ
ムなしでやるから」といったLINEメッセージによる脅迫に被
害者は恐怖を感じて自身のわいせつ画像を当該男子に送り、
その画像が中学生のLINEグループなどに拡散され後日呼び出
されて自慰行為を強要されるなどいじめが激化した。その
後、被害者はいじめグループ10人近くに囲まれ、2019年6月
22日にウッペツ川へ飛び込み自殺未遂をする事件を起こし、
警察が出動した。
いじめグループは警察に母親の虐待が飛び込み自殺未遂の原
因と説明したため、警察は母親が被害者に付き添って病院へ
行くことを拒んだ。しかし、「被害者は友達だ」と説明して
いたいじめグループから被害者宛てに心配するメッセージや
着信が一切ないことを不審に思った警察は被害者のLINEを確
認。残っていたトークや画像からいじめがあったことを認識
し、旭川中央警察署少年課が捜査を開始した。また、母親に
よる虐待がないことが判明したため入院中の被害者との面会
を許可した。いじめグループは、自身のスマートフォンを初
期化するなどして証拠隠滅を図ったが警察は復元し、わいせ
つ画像やわいせつ動画の証拠を入手。児童ポルノ禁止法違反
(製造)で当時14歳未満だった他校の男子中学生の一人を触
法少年扱いで厳重注意処分、その他のいじめグループメンバ
ーを強要罪の疑いで調べたが、証拠不十分で厳重注意処分と
した。被害者は2019年9月に引っ越したもののいじめによる
PTSDを発症しており、2021年2月に失踪する直前まで入院や
通院をしながら自宅で隠遁生活を送っていた。
2021年2月13日、被害者は氷点下17度の夜に突然家を飛び出
して行方不明になり、警察による公開捜査が行われたもの
の、3月23日に公園で凍死した状態で発見された。検死によ
り、低体温症によって失踪当日に死亡した可能性が高いこと
が判明している。
事件後の経緯
本件に関して旭川市教育委員会や学校に300件以上の苦情の
電話が相次いだことから、2021年4月22日、旭川市の西川将
人市長や教育委員会の委員らが非公開の会議を開き、事実確
認を改めて行う必要があるとして第三者を交えた調査を行う
ことを発表した。
4月26日、参議院決算委員会において梅村みずほ議員が事件
について調査した結果を基にして音喜多駿議員が質問に立っ
た。被害者の中学校が弁護士同席を拒否した件についての質
問に対し萩生田光一文部科学大臣は、「親御さんからすれば
自分で冷静に対応できないような状況もあって代理人である
弁護士が同伴することはそんなに珍しいことじゃなくて、そ
こはしっかり対応すべきだと私は思います」などと答弁し
た。
被害者の中学校は加害生徒に聞き取り調査を行い結果を
冊子にまとめている。その開示請求を弁護士法23条2による
弁護士照会制度に基づき遺族は三度行っているが拒否をされ
ている。回答義務があるのに拒否をしても罰則がないシステ
ムに遺族は納得していないが知る権利に対してどのように考
えているかとの質問に対し、瀧本寛初等中等教育局長は、
「いじめ事案の対応について一般的に学校はいじめを受けた
児童生徒や保護者による(事実関係を明らかにしたい、何が
あったのか知りたい)という切実な思いを理解し対応に当た
る必要があると考えております。文部科学省において作成し
た「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン』でも同
様のむね示しております。なお、被害児童保護者への情報提
供等については、学校の設置者および学校は各地方公共団体
の個人情報保護条例等に従って情報提供ならびに説明を適切
に行うことが必要だと考えております」などと答弁した。今
の学校側は極めて閉鎖的な態度を取り続けているようで、4月
26日7時頃からいじめのあった中学校で保護者への説明会が
あるそうだが、遺族には説明会についての案内がないという
ことであり、遺族は当事者として説明会への参加を望んでい
る。当然、参加する権利があると考えているが文部科学省は
どのように考えているかとの質問に対し、瀧本寛初等中等教
育局長は、「「いじめの重大事態の調査に関するガイドライ
ン』での基本的な考え方をふまえて教育委員会と学校は適切
な対応をしていただきたい」などと述べた。事態の進展によ
って文部科学省がしっかりと乗り出すことがありうるかとの
質問に対し萩生田大臣は、「今後、中々この事案が進まない
ということであれば文部科学省の職員を現地に派遣する。あ
るいは私を含めた政務三役が現場に入って直接指導すること
も考えながら進めていきます」などと答弁した。
4月27日、旭川市教育委員会が、いじめ防止対策推進法第28
条1による「いじめにより当該学校に在籍する児童等の生命、
心身又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めると
き。」に該当するとして『重大事態』に認定した。
証言
被害者の親族によれば、2019年4月から6月にかけて合計4回
にわたり母親が2019年当時の担任教師へいじめの調査を依頼
したが「本当に仲のいい友達です」などと一日で返答され
た。また被害者が担任教師へいじめの相談をした際、加害者
には言わないようお願いしたにも関わらず、その日中に加害
者に知れ渡り不信を抱かせた。
いじめグループが所属していた他の中学校で弁護士同席のも
と2019年8月29日に「謝罪の会」が実施されたが、被害者の
中学校は弁護士同席に難色を示し旭川市教育委員会による指
導の末2019年9月11日にようやく許可した。母親の支援者に
よれば、被害者の中学校の「謝罪の会」は、教員は全員退席
し録音も禁止された。
被害者の親族によれば、校内で起きた出来事ではないため、
わいせつ画像の拡散に責任は負えないと、2019年当時の被害
者の中学校教頭が母親に説明した。
2019年当時の被害者の中学校校長によると、「被害者の女子
中学生は小学生の頃からパニックになることがあり、小学校
から引き継ぎされていた。自殺未遂をする6月22日の2日前に
母娘で口論になり公園を飛び出す出来事があった。公園を飛
び出すのは自傷行為と同義のため以前から自殺願望があった
と思う。いじめに関するアンケート調査を毎年行っているが
いじめは認識されていない。今回の事件もいじめではない。
自慰行為強要と被害者の死亡に関係性はないと思う」とのこ
とである。
被害者の中学校は、被害者の保護者や旭川市教育委員会に対
していじめの事実はなかったと説明した。
問題点
過去にも旭川女子中学生集団暴行事件を防げず、市教委や学
校の対応が後手になった反省から、同様の事態が発生した場
合には迅速な対応を心掛けるようにしていたが、市教委の求
めにも関わらず学校は全く対応せず自殺を防げなかった。
地元テレビ局の報道関係者によれば、被害者が自殺し、週刊
文春が報道するまで一般の大手メディアが報道しなかった理
由として、一般の大手メディアも事件をつかんでいたもの
の、自殺未遂報道はご法度なこと、加害者が全員未成年で小
学生まで事件に関係していたために報道しにくかったこと、
旭川市に地方都市独特の閉そく感があり、噂話が拡散して被
害者を追い詰めてしまう可能性があった。
被害者の個人情報流出
TwitterをはじめとしたSNS上に被害者の顔写真と個人情報公
開が相次いだ。被害者の遺族は「第三者委員会の調査の結果
を信じて待ちたいと思います」と述べている。
あるYoutuberは、加害者の女性宅に行き話を聞こうとしたと
して強要未遂で4月26日に不当な逮捕をされたが、5月17日に
処分保留で釈放された。