瘴奸
しょうかん
概要
里を襲っては子どもを売買する人攫いの賊「征蟻党」を率いる鎧武者。
瘴奸入道とも呼ばれるが、これまで何度も名前を変えてきたため本名は不明。
餓鬼の一種“鍼口鬼”の異名が付けられている。
諏訪領の攻略を進める新信濃守護の小笠原貞宗に、従来の武士の戦い方に捉われない自由に動ける遊撃用の兵として盗賊団ごと招聘、起用された。
冷静沈着かつ大胆不敵な武人だが、親から引き離されて人身売買にかけられて苦しむ子どもの姿を想像して悦に浸る人格破綻者。
盗賊らしく真正面からの攻撃よりも地形と環境を利用した奇襲や不意打ちといった戦法を得意としている。
元はそれなりの家に生まれた武士であり、名の知られた豪傑であったが、領地不足を理由に武将としての立身は許されず、父からただの一武士という形で兄に従うことを命ぜられる。それを拒んで武勲による出世を目指して流浪、その過程で楠木正成の陣に加わるが、この時も負け戦で武功は上げられず、その際正成に
「そなたはいつも闇の中におられますなあ」
「追手の来ないどこか遠くへ逃げられよ」
「いずこかに光差す地もござろう」
と逃がしてもらうものの、正成の言葉に真実を感じなかった瘴奸は征蟻党を結成、人さらいのため里を襲う賊となった。
諏訪領内の村々を襲って少しずつ諏訪の国力を削るという間接的な侵略工作を進め、諏訪の村を守ろうとした時行をはじめとする逃若党と対峙。時行との対決においては彼を子供と侮って圧していたが、次第に彼の動きに翻弄されて体力を削られていき、遂に瀕死の重傷を負わされてその時の彼の姿に今まで信じていなかった仏を見出しつつ昏倒、が、すんでのところで駆け付けた貞宗によって救出され、一命を取り留める。
自身は作戦失敗による処罰を覚悟していたが、貞宗からは軽いお咎めだけで済み、それどころか「これからは賊として生きることを禁じる」と領地を与えられて正式な武将に取り立てられた。
その後の清原信濃守率いる朝廷軍と諏訪連合軍との戦いでは小笠原陣営の伏兵として持ち前の奇襲戦術で諏訪軍を苦しめ(その際に時行と再会しているが、この時は深追いはしなかった)、そしてさらなる諏訪の決起を予期した貞宗から改めて時行を抑える役目を任ぜられる。
そもそもの悲願だった武将になることができたためか、以降はかつての悪辣さは鳴りを潜め、領地の村では慈悲に溢れた地頭として村民に慕われている。自身も民に敬われることに喜びを感じていたが、同時にこの頃より過去に犯してきた悪行に対する強い罪悪感も芽生えはじめ、これまで自分が攫って売り飛ばした子供たちの幻影に苛まれようになっている。
“武将にして盗賊”、“楠木正成の元配下”という経緯から彼のモデルは「平野将監(平野重吉)」だと考えられている。
というか、後に本編に登場した正成からはそのまんま「あの“将監”か」と呼ばれていた。
(ただし、実際の将監はこの物語が始まった時期には既に死亡している)