暗黒館の殺人
あんこくかんのさつじん
ダリアの祝福を
概要
『館』シリーズ第7作品目に当たる。
ノベルスでは作者初の上下巻刊行、後の文庫化では10,11月と挟んで四部構成で発行されている。
湖上に浮かぶ、外観も内装も漆黒の暗黒館を舞台に住人の秘密、そして殺人事件の謎へと迫る。
あらすじ
主人公──「私」は某大学建築学部に籍を置く普通の学生だったが、ある事故が元で記憶喪失になってしまった。
途方にくれていた「私」は、偶然その事故に居合わせた『友人』を名乗る男──浦登玄児に「中也」と名付けられ彼の元へ居候する事になる。
そしてある日。帰省する玄児に連れられて彼の実家である浦登邸──通称『暗黒館』を訪れるのだが・・・
主な登場人物
中也(ちゅうや)
主人公。語り手。一人称は「私」。ある事故に巻き込まれ記憶喪失になる。「中也」とは「サァカス」で有名な詩人「中原中也」から玄児が名づけたもので本名ではない。記憶を取り戻し、本名が判ってからもその名で呼ばれ続けている。
その為彼にあやかって黒のソフト帽とフランネルのマントを付けている。
浦登玄児(うらど げんじ)
事故に居合わせた中也の『友人』で、浦登家現当主・浦登柳士郎の息子。記憶を失った彼を自宅に居候させる。実家に中也を招くのだが・・・
浦登美魚(うらど みお)
浦登柳士郎の娘で玄児の異母妹。美鳥とは双子。中也に懐く。美鳥とは結合双生児として産まれた為、肉体的にはもちろん精神的にも通常の双子以上に離れがたい半身と想い合っている。
浦登美鳥(うらど みどり)
浦登柳士郎の娘で玄児の異母妹。美魚とは双子。美魚とは結合双生児として産まれる。美魚と共に中也に懐いた為、中也が玄児から「書類上はともかく、二人共と結婚すればいいじゃないか」と冗談めかして言われる一幕も。(※中也には許嫁がいる)
市郎(いちろう)
中学一年生。一人暗黒館へと冒険に向かう。辿り着いた館では密かに使用人の息子である慎太に匿われる。
浦登 玄遙(うらど げんよう)
暗黒館初代当主。
ダリア
その妻。
余談
- 当時の集大成的な位置づけなのか、「作家の名前」のニックネームや十角形の塔、『水車館』に登場した幻想画家・藤沼一成の作品、『迷路館』の宮垣葉太郎(杳太郎)の名前など館シリーズ過去作品を思わせる物が登場する。
- 美魚/美鳥の双子の名前は「リトルバスターズ!」の登場人物・西園美魚/美鳥の由来となっている。また、同作の美魚ルートでは「幽閉された美しいシャム双子の少女」が登場する本の言及があるが、それは本作『暗黒館の殺人』の事である。
- 使用人の鬼丸老の「それは私への質問ですか?」「どうしても答えよと申されますか?」という独特の問答は、後に原作を務めた佐々木倫子の作画による漫画『月館の殺人』にも同様の受け答えをするキャラが登場した。