地獄からの使者と呼ばれる妖怪。
閻魔大王の命令で邪悪な者の魂を迎えに地獄から訪れると言われ、その折、火を噴く車を引きつつ出現するのでこの名がある。
元々は悪人を迎える際に牽引する車そのものを指す語だったのが、いつしかそれを引く妖怪の名に冠せられたらしい。更に時代が下ると、「猫が死人に取り憑く」と言う地方の俗信と接合し、化け猫に似た姿で表現されるようになった。
更に時代が下ると、死体を食べる妖怪「魍魎」の伝承と火車の伝承が混同されるようになった。近年、火車の属性として語られる「悪人が死ぬとその葬列を襲い、遺体を奪って隠してしまう」「時にはその遺体を掻っ捌き、肝を奪って食べてしまう」の伝承はこれに基くものである。
火車に襲われ骸を奪われる事は、生前の罪を自ずと白状する事に等しく、多くの人々は自分の身内の葬式にこの妖怪が出現し、死人が襲われる事を恥じたと言われる。