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概要

和名ツダナナフシ
学名Megacrania tsudai Shiraki,1932
分類節足動物門汎甲殻亜門六脚上綱昆虫綱有翅昆虫亜綱新翅下綱直翅上目竹節虫目ナナフシ科ツダナナフシ亜科
体長雌成体で100~120㎜。雄成体で86㎜
分布日本では宮古島石垣島西表島。国外では台湾南部と緑島郷及び蘭嶼

名称

別名ヤエヤマツダナナフシ。

漢字表記は津田竹節虫。

属名Megacraniaは、ギリシャ語で「大きな頭」(より正確には「大きな頭蓋」を意味し、本種の場合は肥厚した頭楯を頭蓋骨に見立てたものと思われる)を意味する。

種小名tsudaiは本種の基準標本を台湾で採集した昆虫学者の津田松苗博士(つだ・まつなえ 1911-1975 記載年当時は京都帝国大学理学部動物学科学生)への献名。

シノニムはMegacrania alpheus tudaiMegacrania tudai adanなど。

alpheusギリシャペロポネソス半島を流れると、それを神格化した河神の名前で、adanは植物名のアダンに由来する)

英名はTsuda's Large-headed Stick Insect、Tsuda's Peppermint Stick Insect。

漢名は津田氏大頭竹節蟲。

形態

前脚を伸ばした状態(全伸長)は150㎜を越え、日本産昆虫屈指の大型種。また、同所的に分布するヤエヤマトガリナナフシEntoria ishigakiensisなどと比べて、同じ体長の個体であれば、胴幅は2.5倍以上と太く、ナナフシとしては重量級の種である(ただし体長の最大値はヤエヤマトガリナナフシの方が大きく150㎜に達し、全伸長は220㎜以上になる)。

背面は独特の光沢ある鮮やかな緑色。触角は赤みがかかる場合が多い。脚や体節の縁辺は基色が濃く、腹部の体節は頭側方に黒い縁取りが認められる場合が多い。逆に翅は基色が幾らか薄く、黄緑色に近い色合いになる。

光量(より正確には紫外線量)が自然下より少ない状況に長期間置かれると、一部の色素合成が行われなくなるため、体色が青色や赤褐色に変化することが知られている。実験的に、このような処理を行った個体を野外に戻した場合、に捕食される確率が明らかに高まるため、通常体色は保護色と見做しうる。

触角は基部の8~11節までは数珠状で、前脚腿節よりも短い(それぞれの起点が異なるため、全伸長状態であれば、触角の先端は前脚腿節を越える)。

中胸背は厚く、鋲状の短隆条が走る。この短隆条は限りなく白に近い薄水色を呈することが多い。翅は4枚とも備えるが短く、少なくとも雌は飛ぶことは出来ないが、雄に関しては、雌より体型が細身で小型、且つ翅がやや長いため滑空程度ならば出来る可能性がある。

生態

海岸付近のタコノキ科植物(アダン・タコノキPandanus boninensis・ツルアダンFreycinetia formosaなど)で見られる。これらの植物は住処であると同時に食草でもあり、原則としてこれらの植物しか食べない。

基本的には夜行性で、日中は茂みの奥や葉の裏などに潜んでいる。

敵に襲われると、前胸背に開口する腺(腺そのものは前脚基部にある)から、湿布薬あるいはペパーミントに似た刺激臭を帯びた乳白色の防御液を噴出し、英名の一つはこの特徴に由来する。

この防御液は体長の3倍以上の射程があり、強い毒性はないものの、目や粘膜にかかるとかなりの痛みがあるため、野生下での観察を行う場合はゴーグルフェイスシールドを装備することを推奨する(さもなくばこうなりかねない)。


原則として単為生殖で繁殖するが、飼育下で雄が得られた事例もある。

亜熱帯の昆虫でもあるため、決まった繁殖期は持たず、1月2月の厳寒期(とはいえ、八重山諸島辺りの最低気温は15~18℃程度)を除いて性成熟した雌は卵を産み続け、その数は時に1000卵に達する。

卵は長径7㎜ほどで、精孔板は長対角線が長径の半分程度の菱形。円錐に近いシルエットの蓋帽を持つ。卵殻は6層構造で中間2層が肥厚したコルク層であり、断熱性耐水性耐塩性が高く、平均密度を下げることで、に浮く性質を有する。

通常、卵は食草のの付け根やの割れ目などに産み付けられるが、誤って地面に産み落とされた卵、あるいは台風高潮などで転がり落ちた卵は、波に洗われて海流に乗り、再び陸地に打ち上げられると孵化するという、陸棲動物では珍しい洋上分散を行う。

卵は通常100日ほどで孵化するが、海水に浸された卵は孵化延長が生じ、150~250日ほど要する場合もある。一方で孵化率は海水に浸された卵の方が高まるとされる。

幼虫期(不完全変態昆虫であるため、正確には若虫期)は120~180日程度。成虫の寿命は約1年。


人間との関係

特異な外見や生態が注目され、伊丹市昆虫館箕面公園昆虫館足立区生物園などの昆虫館や類似の生物展示施設で飼育実績がある。

最大の問題は食草の調達で、成体雌1頭に対し、草丈40㎝程度の鉢植えアダンを常時10鉢以上はストックする必要がある。

(硬く育ちきった葉では食いが悪く、観葉植物としてそれほどポピュラーではないアダンやタコノキを常時在庫しているような園芸店は少ないため、また、残存農薬にも注意を払う必要がある)。

それ以外は、ある程度の容量がある飼育容器(特に高さは60㎝程度は必要。底面積は30㎝四方もあれば充分)を用意し、極端な低温を避ければ、管理自体は手間が掛からない方である。


棲息環境が特異的で、個体数もさほど多くないとされるため、環境省レッドデータブックでは情報不足(ヤエヤマツダナナフシM. tudai adanの名で登録されている)、沖縄県レッドデータブックでは絶滅危惧Ⅱ類に指定され、台湾の緑島郷では採集・殺傷が禁止されている。




関連タグ

ナナフシ 直翅類 昆虫 節足動物 無脊椎動物

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