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【はじめに】

本記事は妊娠中絶の法的、社会的な扱いについて記載します。

中絶の具体的な方法については別記事で解説します。

そちらは極めて強烈なR-18G要素が含まれるため、軽い気持ちで読むと思想信条に影響を受ける可能性があります。


概要

「人工妊娠中絶(中絶)」とは、望まない妊娠の結果、人工的に胎児流産させること。

中絶そのものは可能だが、日本の法律では、医師が妊婦の依頼のもと中絶手術を行った場合、「業務上堕胎罪」に抵触する。刑法214条において3ヶ月から5年の懲役刑が定められている。

医師に依頼せず、自分の手で処置した場合も「自己堕胎罪」が成立するという法解釈がなされている。

基本として違法としつつも「母体保護法」14条で中絶が認められる以下の条件に限って例外扱いとし、「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」とする刑法35条を適用する、という建て付けになっている。


1.母体の健康上の理由、あるいは経済上の理由がある場合。

2.レイプ被害などによる妊娠の場合。


なお中絶手術には保険が適用されない。

費用は、妊娠初期の場合で15万円前後が目安。

「中絶できる条件」について

日本や日本の法律に限らない話として、「性被害による妊娠なら中絶は可能」というルールは必ずしも被害者に寄り添ったものとはならない。

なぜなら法的に定められた条件である以上、個別の犯罪として立件される等の必要があるためである。

この問題は平時だけでなく戦時中にも噴出する。プーチン政権下ロシア連邦によるウクライナ侵攻において、ロシア兵に暴行された後ポーランドに避難した女性達が、戦時の混乱下で刑事事件の手続きに入る事ができず、その為中絶の為に条件を設けた(母体の生命の危険がある場合か、近親姦であるか、裁判所でレイプ犯に対する有罪判決を勝ち取る必要がある)この国で中絶手術が出来ない、という状況が現出している(「兵士3人で16歳をレイプした」“ロシア兵音声”公開 深刻化する性暴力【news23】)。

ポーランドではかつて胎児に障がいがあった場合でも認めていたが、2020年10月22日に憲法裁判所で違憲判決が下され、違法となっている(ポーランド憲法裁、ほぼ全ての人工中絶を違憲に)。

中絶手術

中絶手術を受けられるのは、妊娠22週未満(21週6日)まで。

妊娠初期(12週未満)と、それ以降とでは手術方法が異なり、母体に与える影響にも違いが出てくる。中絶を選択する場合は、決断が早いほど様々な負担やリスクは軽くなる。


手術を受けるには、原則として「妊娠した本人」と「子供の父親にあたる」、双方の同意書(署名・捺印)が必要。

なんらかの理由で男の意志確認ができない場合には、本人の同意だけでも可能。

もっとも、後者のような柔軟な対応ができずに「男の同意が無い」という理由で結果的に妊娠した女性を見捨ててしまう病院が少なくなく、中絶手術を拒否されてやむなく人気の無い場所で密かに出産して子供を死なせて母親の女性が逮捕される等の二次被害が起きるケースもある。


実際の手術内容 ※注意熟読のこと


【注意】


上述の通り、極めて強烈なR-18Gを避けて通れないため、別記事にて解説する。

心の準備をしてから移動すること。

さもなくば、ショックであなたの思想信条に重大な影響が出るかもしれません。


すべて承知の上で実際の手術内容を知りたいという方は人工妊娠中絶の記事にて。


しつこいようですが、極めて強烈なR-18Gです。


手術後

罪悪感後悔が、ストレスとなって長期間残る女性もいる。一方、英医学専門誌「British Journal of Obstetrics and Gynaecology」で発表された報告によると、女性が中絶後に寄せる感想で最も多かったのは「解放感(70%)」や「満足感(36%)」だったとされ、個人差がある。

(https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/10/post-6067_1.php)


しかし、中絶を選択するまでの期間に、パートナーとの心の行き違いから男性不信に陥るケースもある。

このような事態に陥らないよう、妊娠を望まない場合には避妊をしっかり行う事が重要だと言える。


経口中絶薬

手術を伴う形ではない、口から薬を飲む形での中絶方法も存在する。その薬を経口中絶薬という。

原理について記述するとR-18G的要素が出る為こちらも人工妊娠中絶の項目で扱う。

国連のサイトによると、ミフェプリストンとミソプロストールの併用療法を用いた妊娠12週までの薬による中絶は、医療従事者の直接の監督なしに、自宅で薬を服用する事で行える、としている。


1988年にフランスではじめて承認された。

それから2021年10月までに約80の国と地域で使用されている。WHOによると平均価格は日本円にして740円ほど、とNHKのニュースで取り上げられた。

おそらくソースはこちらの資料の16ページにあるミフェプリストンの平均価格「$ 6.77」と思われる。

ただし、これはUNFPA(国連人口基金)を経由して購入した際の価格であり、通販でも入手できる(一般人でも購入できる国なら可能な)価格としてはドルユーロで三桁はいくものとなる。


イギリスの中絶支援組織British Pregnancy Advisory Service(BPAS)のサイトによると、10週目までの中絶ピルに対応した最も安価な総計価格が570ユーロ(2022年1月のレートで約7万4千円)。

ただし、97%の女性は同国の国民保健サービス(NHS)等の政府機関によって治療費が支払われているとのこと。イギリスでは国民保険サービスへの登録があれば中絶は無料で行える(『セックス・エデュケーション』で描かれた中絶や緊急避妊薬、女性を守るイギリスの医療を解説)。前述の価格はこの保険適用を受けずに個人的に料金を支払う選択をした人向けのもの、ということになる。


日本

2021年12月22日、日本においてはじめて承認申請がなされた(「経口中絶薬」の使用 承認申請 国内初 手術伴わない選択肢)。申請元はイギリスの製薬会社シノファーム。


日本産婦人科医会は慎重な立場をとり、木下勝之会長は「医学の進歩による新しい方法であり(前述の通り1988年には存在している)、治験を行ったうえで安全だということならば(WHOは2005年に「必須医薬品」扱いしている)、中絶薬の導入は仕方がないと思っている。しかし、薬で簡単に中絶できるという捉え方をされないか懸念している。薬を服用し、夜間に自宅で出血した場合に心配になる女性もいると思う。そうした場合にすぐに対応できる体制も必要だ」と発言。国際的なリプロダクティブ・ヘルス/ライツ基準からすれば周回遅れもいい所である。

そして彼はまた、管理料として10万円程度かかる手術と同等の料金設定が望ましいと述べている。

現状の日本では中絶は保険適用の対象ではないため、保険なしでは薬剤代+αで実際このような値段になると思われる。「簡単に」中絶がされる事を危惧しているらしい木下会長が保険適用に乗り気かどうかはお察しであろう。


このように、リプロダクティブ・ヘルス/ライツと日本医学界に残存した旧来の価値観が衝突する事例はアフターピル関連でも起こっている。


小説家・医師の知念実希人によると、経口避妊薬が市販される事は無いとのこと(ツイート)。経験のある産婦人科医しかなる事のできない「母体保護法指定医」のみが処方できる形となる(ツイート)。東京都健康安全保健センターも『平成16年10月25日 厚生労働省医薬品食品局 監視指導・麻薬対策課公表資料』から引用する形で「自己判断での「経口妊娠中絶薬」の購入・使用はやめてください」と呼びかけている(経口妊娠中絶薬に関する注意喚起について)。現行の日本の法律においては独自入手した経口避妊薬で中絶処置を自分で行った場合、堕胎罪に問われる(未承認薬で自ら堕胎容疑 警視庁、女性を書類送検)。成分不詳の得体の知れない偽造品の可能性もある為、正規ルート以外からの入手は危険である(国内未承認の中絶薬ネットに流通 大量出血、けいれん、入院例も)。


中絶反対論

宗教的な背景が希薄なまま、中絶する選択をする人々の内心を配慮しない反対論もあるが、宗教が明確な規律・規範の根源として存在感を残す海外では「神からの命令」として中絶に反対する運動がカトリックを中心にある。

中絶反対論者は「プロライフ(生命の支持)」、肯定論者は「プロチョイス(選択の支持)」と呼ばれる。

中絶反対論の核となる議論は「胎児は人間か否か」というものであり、胎児を「人格(ペルソナ、パーソナリティ)を備えた存在」と見なす人であるなら世俗主義者やフェミニストでも選び得る立場であり、実際に存在している。

が、「中絶を選べない」状況からの経済的困窮のスパイラルにも陥りやすい。トランスジェンダー男性の身にも性的暴行などで望まない妊娠は起こり得る。社会問題となっている「10代の妊娠」もまた、そこからの選択肢が極端に失われるという側面も有している。

故に、世俗主義やフェミニズムの中絶反対派は少数派であり、とくにフェミニズムの主流派は中絶を権利として支持する。

プロチョイスにおいて人工妊娠中絶が許容される時期までの胎児は個人(パーソン)とは見なされないか、明確に否定される。

この観点に立つならば、これは妊娠した側の選択肢の問題となり、「プロ(支持)チョイス(選択)」の名はこれに由来する。

これを端的に表わした「My Body, My Choice」はスローガンとして各地の運動で掲げられる(女性の権利の勝利:韓国で刑法の「中絶禁止規定」廃止)。

代表的なシンボルとしては「ハンガー」がある(アルゼンチン:人工中絶合法化 歴史的快挙)。中絶が違法となり、正規医療に基づく処置が受けられない場合に使用を迫られるものの象徴(現在でも使用例はある)として採用されている(ポーランド:中絶全面禁止法案 少女・女性にとって危険な後退)。


人を超えた神から啓示されたとされる聖典を基盤とする宗教的なプロライフは、その基準が確実であるという(信徒にとっての)保障、絶対の主である神への帰依心という超越的な土台を持ち、中絶が違法である状況を維持したり、合法な国においては中絶を再び法で禁じるという目的意識も持っている。

欧米キリスト教世界では世俗化が進んでいるがフランスで1988年9月に認可されたミフェプリストンを一ヶ月で(一時的にではあるが)販売中止に追い込み、近年においても米国テキサス州等で中絶の権利を制限するルールの制定を行わせた。

こうしたプロライフは「赤ちゃんの命を保護する」事を最大の理由としているが、一方で中絶が出来ないという事は望まない出産に繋がる事や危険な中絶手術に踏み切らせるリスクがある。一例としてエクアドルでは、レイプによって妊娠した場合ですら中絶を認めていない。2015年から2018年の間では、14,000件のレイプが報告されており、その内718件の被害者は10歳未満の少女たちである。また、2008年から2018年にかけて20,000人以上の14歳未満の女子が出産している。

(https://globalnewsview.org/archives/10683)


本記事に「思想信条に影響を受ける可能性があります」とあるように、実際に中絶支持と中絶反対の強烈なせめぎ合いの中、立場を変える人も存在する。

アメリカにおける中絶合法化の傾向を決定づけた「ロー対ウェイド事件」において、中絶支持派の原告であったノーマ・マコービーもその一人。

人であることの始まり、内容を解説しようとすればR-18Gとなる手術の内容、リプロダクティブヘルスの有無による当事者への影響、伝統宗教と女性の権利の問題と直接相対すれば精神を揺るがされる要素が複雑に絡み合った分野であると言える。



pixivでの扱い


Pixivでは、軽々しく扱える内容ではないため、重苦しく見ているだけでSAN値が下がるようなイラスト、あるいは中絶の賛否に関わらずメッセージ性の込められたイラストであることが多いが、見ていて気分の良い物ではないため無理に見る必要はない。


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妊娠 避妊 堕胎 流産 死産

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