「享年」の意味と使われ方について
「没年齢」と「享年」の違い
芸能人や著名人が死去した際に「享年○○歳」として没年齢が記載されている例がしばしば見受けられるが、それは正しい表現ではない。
「没年齢」は亡くなった時の満の年齢を指し、「享年」は人や動物が「天から享(う)けた年数」という意味で、現世に個体として存在した年数である。仏教では「行年」(ぎょうねん)とも言い、娑婆で修行を積んだ年数という意味になる。また、「享年とは母親の胎内で自らの生を受けてからの年数」として数え年より1歳多く数えるという話も存在する。
以上のように、あくまでも享年は「個体として現世に存在した年数」であり、死亡時の年齢と同義ではない。また年齢を意味する単位の「歳」を付けるのも誤りである。
ただし
近年では数え年を使うことがほとんどなくなったこともあり、享年=満年齢とすることが一般的。また、そもそも「享年」が「この世に生をうけた年数」である以上、数えではなく満年齢とするのが正しいともされる(国立国語研究所による)。
「歳」の使用についても、江戸時代の文献にすでに享年〇歳と記した例があり、誤りと断じるには疑問が残る。また、話し言葉としてはむしろ「歳」を付加したほうが柔らかく聞こえるため、適当とされることもある。