葵の上
『源氏物語』の登場人物。
光源氏の最初の北の方(正妻)。
父は桐壺帝時代の左大臣(のち太政大臣)、母は桐壺帝の妹の大宮。
光源氏とはいとこ同士にあたり、4歳年上の姉さん女房。
光源氏のライバルである頭中将とはきょうだい。
いわゆるツンデレタイプの女性である。
生涯
高貴な生まれで、幼少期より東宮(のちの朱雀帝)妃にと希望されていたが、朱雀帝の外祖父であり政敵でもある右大臣の勢力増大を危惧した左大臣の思惑で、元服した源氏の北の方となる。
結婚当時、光源氏は12才、葵上は16才だった。
しかし光源氏は密かに藤壺を恋い慕っており、葵の上もこれまで帝の妃候補として育てられたプライドゆえか、他の女君にうつつを抜かす4歳下の夫にうちとけず、よそよそしい態度をとっていた。
政略結婚とは言え、桐壺帝は「有力な外戚が居ない光源氏の後見を妹夫婦に頼みたい」、左大臣と大宮は「弱い者虐めをするような女(弘徽殿女御)を娘の姑にするのは心配だ」と本人達の幸福を考えた善意からの縁談だったのだが、光源氏も葵上も若年と言うことも有り夫々の親心を理解し切れていなかった面もある。
長年の夫婦関係は冷え切っていたが、源氏が22歳の時にようやく懐妊。
周囲は喜びに沸き、源氏も悪阻の苦しさに心細そうな葵の上の様子に珍しく愛しさを感じた。
折りしも時は賀茂祭、周囲に勧められるままに賀茂斎院の御禊の見物に行ったところ、図らずも家来が源氏の愛人の六条御息所の家来と車争いし、御息所の牛車を壊し恥をかかせてしまう。
この頃から葵の上は物の怪に悩まされて臥せるようになり、床を見舞った源氏の前で彼女に取りついた御息所の生霊が姿を見せるという事件が起きた。8月の中ごろに難産の末夕霧を産み、ようやく源氏とも夫婦の情愛が通い合ったと思うもつかの間、その夜に急に苦しんで呆気なく他界。
火葬と葬儀は8月20日過ぎに行われ、源氏はそれまで妻に冷たくあたってきたことを後悔しつつ、左大臣邸にこもって喪に服した。
同腹のきょうだいとして頭中将がいる。派生作品では兄とされることが多いが、作中ではきょうだいどちらが年長か明確な描写はなく不明。
他にも異母きょうだいが何人かいることが描写されている。
能『葵上』(能楽)
『源氏物語』「葵」巻を元にしている。
シテ(主役)は六条御息所の生霊であり、題にもなっている葵上は一切登場せず、生霊に祟られ寝込んでいることを一枚の小袖を舞台に寝かすこと(出し小袖)で表現している。
物語の中心は、鬼女となってしまった御息所の恋慕と嫉妬の情となっている。
主な登場人物
六条御息所(ろくじょうのみやすどころ) の生霊 - 主役。
照日ノ巫女(てるひのみこ) - 梓弓の音によって霊を呼び寄せる呪術(梓の法)を持つ。
横川ノ小聖(よかわのこひじり) - 怨霊を法力によって追い払うことのできる修験者。