デビュー当初
JR東日本が常磐線の特急「ひたち」運用の485系置き換えのために製造した特急形電車。1997年から製造された。
4M3Tの7両からなる基本編成が8本、と2M2Tの4両からなる付随編成が4本用意された(0番台)。特急「フレッシュひたち」用。この列車には特急形電車としては珍しく、特急「フレッシュひたち」として運用していた頃はグリーン車が無かった。
また民営化以降の列車としては珍しく、国鉄485系電車同様に汎用形特急電車として他の路線への転属を考慮した耐寒装備や3電源対応(直流1500V・交流20000V-50/60Hz-)構造となっている。ただし、狭小トンネル通過は対応していない。
デビュー当初の編成と色
1.スカーレットブロッサム(赤)-偕楽園の梅の花と好文亭。
3.イエロージョンキル(黄色)-ひたち海浜公園の黄色い水仙。
4.グリーンレイク(緑)-霞ヶ浦の水面とその上に浮かぶ帆曳舟。
5.オレンジパーシモン(朱色)【付属編成のみ】-袋田の滝と紅葉の風景。
編成・車両
車体はアルミニウム合金製ダブルスキン構造となっている。主変換機は近年の車両ゆえご多聞にもれずVVVFインバータ制御(IGBT)となっており、パンタグラフもシングルアーム形を採用している。また、死区間内(デッドセクション内)通過中の交直切替はE501系と同じくATS-P地上子を利用した交直自動切換であるため、その間の車内照明は蓄電池からの供給となり基本的に消灯しない。ただし、何らかの理由により手動で交直切替を行う場合は消灯する。
制動装置は電気指令式空気ブレーキ(回生ブレーキ併用)であり、耐雪ブレーキ(補足参照)、抑速ブレーキを装備している。また発電ブレーキ(補足参照)を装備する準備工事がなされていた。
新潟地区への転用
常磐線の特急がすべてE657系へ統一されることになり、2013年にひたちの運用がE657系に置き換えられて、運用離脱した。当初の計画ではE653系は2012年からいわき-仙台間の特急に転用される予定であったが、東日本大震災により常磐線が長期休止となってしまったため(※)、耐寒耐雪構造を強化する改造を行った上で全編成が新潟地区へ転用された。これにより新潟支社にも民営化後の特急型車両が導入されることになる。
※いわき-仙台間の特急については最終的に常磐線の全線開通時(2020年春)に東京からの直通運転とすることが決まったため、E657系で運転されることになった。
まず7両基本編成が1000番台に改造されて、同年秋より羽越本線の特急「いなほ」で運用されている485系を翌年夏までに置き換えた。
4両付随編成も同じく1100番台に改造されて新潟支社の信越本線とえちごトキめき鉄道とを直通運転する、新井・上越妙高~新潟間の特急「しらゆき」として、2015年3月14日より運行を始めた。なお、スケジュールの都合で改造に際し7両基本編成の第8編成と4両付随編成の第4編成の間で一部車両の編成差し替えを行った。
改造後の2017年に1000番台の一部編成の塗装が変更された。「瑠璃色」「ハマナス色」編成が登場。
細かい装備の差異
上野寄りの先頭車(1000番台では秋田寄り先頭車)は乗客用の扉が左右2箇所ずつ、それ以外は左右1箇所ずつという変則的な配置となっており、いわき寄りの先頭車(クハE653)の付随編成(100番台)はいわき寄りに車両の併結を行わないため連結器には電気連結器が併設されていない。
また上野寄り先頭車は新潟支社への転属に伴いグリーン車に改造されたため製造番号のほかに形式記号も変更となっている。(クハE652-0 ⇒ クロE652-1000)
水戸支社への再転属
2018年に1000番台7両編成のU108編成が485系の国鉄特急色へ変更され、K70編成として常磐線特急時代に所属していた水戸支社へ戻ってきた(改番なし)。もともと「いなほ」編成は8編成のうちの5編成運用体制で、予備車が十分確保されていたことから水戸支社への転属が可能であった。K70編成は団体専用車としての運用がメインである。
補足
- 耐雪ブレーキ・・・車輪と制輪子を常時弱く当てた状態にして凍結や雪の入り込みを防ぐ。
- 発電ブレーキ・・・モーターを発電機として動作させ抵抗器で熱として消費し速度を落とすブレーキ。架線に電力を戻すことはできないが、饋電区間内の他の列車の走行状態に左右されないため安定した電制がかけられる。
関連タグ
鉄道 特急 特急形電車 JR東日本 ひたち フレッシュひたち いなほ(列車名) しらゆき