経歴
先輩の松本暢章に連れられた阪神競馬場で馬券を当てたことで競馬の魅力に取りつかれ、以後、京都競馬場及び阪神競馬場で開催される大レース(GⅠ)の実況を長きに渡り担当した。歴代三冠馬で三頭(ミスターシービー、シンボリルドルフ、ナリタブライアン)の三冠達成を実況している(三冠牝馬も含めるとメジロラモーヌも)。また、新人時代は三冠馬シンザンの関西での出走レースでゲートリポートを務めたこともある。
初めてのGⅠレース実況は1969年の桜花賞で、この直前に当時関西リーディングジョッキーだった栗田勝(三冠馬シンザンの主戦騎手)から、『1600mのレースで、最初の800mを47秒で通過すれば前の馬は全部つぶれる』と聞いており、レース中に偶然時計が目に入ったところ、桜花賞がちょうどそのペースで展開していたため、実況で通過時計を初めてアナウンスしたはしりとなった。
前述の栗田からは他にも「京都の坂の下りはゆっくりと下らなければいけない」と教わるなど、のちに杉本自身の実況にも影響を与えた。栗田のみならず競馬関係者、とりわけ栗東トレーニングセンター所属の調教師・騎手とも取材で交友が多く生まれており、当時関西の調教師で大御所であった武田文吾やその一門、同世代であった山本正司、北橋修二、武邦彦とは騎手時代・調教師としても多く親交が深く、のちに関西のトップジョッキーとなる福永洋一、河内洋、田原成貴とも親しかった。さらには武や福永の息子にあたる武豊、武幸四郎や福永祐一とも父の代から宜を通じていた縁で親しい。
1992年より競馬好きで知られる明石家さんまと冠番組『さんま・清の夢競馬』を2011年まで持っていた。ちなみにさんまとは同姓(本名が「杉本高文」)であるため冗談半分で「お父さん」と呼ばれたことがある。
1997年限りで関西テレビを定年退職し、以後はフリーアナウンサー及び競馬ジャーナリストとしての活動が主となる。
定年退職後には他の系列局である「オールスター感謝祭」(TBS)でも実況をしたことがある。
2021年には『ウマ娘』とのコラボレーショントークとして、関西テレビの後輩である吉原功兼・服部優陽両アナウンサー司会のもと、『ウマ娘』出演声優の上田瞳(ゴールドシップ)・前田佳織里(ナイスネイチャ)とともに出演し、実況した当時やウマ娘のモデルとなった実馬について語るほか、杉本も「自分が競馬を始めた頃はこんなことは想像だにしなかった。そして、(ウマ娘などのゲームコンテンツが現れ、若い人や女性が競馬を楽しめるという)こういう時代が来ることを願っていた。」とコメントしている。
杉本節
彼の軽妙な語り口は競馬ファンからは杉本節と呼ばれ80歳を超えた現在でも人気を博している。特に宝塚記念の「あなたの夢は〇〇か、〇〇か。私の夢は〇〇です!」が有名。
1960年代
勝馬:ヒデコトブキ
「ゴールまで800m、47秒かかりました。かなり速いペース、桜花賞ペースになっています。追い込み馬が届く展開です。」
1970年代
勝馬:タイテエム
「無冠の貴公子に春が訪れます!タイテエム1着!タイテエム1着!」
1973年 菊花賞
勝馬:タケホープ
「ハイセイコーがたまらん、という感じで先頭に立ちました、京都の坂の下り、ゆっくりと、ゆっくりと下らなければいけません。」
「ハイセイコーかタケホープか、ハイセイコーかタケホープか!ほとんど同時!ほとんど同時!内がハイセイコー、外タケホープ!」
勝馬:テスコガビー
「後ろからは何にも来ない!後ろからは何にも来ない!後ろからは何にも来ない!赤の帽子ただ一頭、テスコガビー!恐れ入った!」
勝馬:テンポイント
「見てくれこの脚!見てくれこの脚!これが関西の期待テンポイントだ!」
1976年 菊花賞
勝馬:グリーングラス
「それゆけテンポイント!鞭など要らぬ!押せ!」
勝馬:ジンクエイト(テンポイント最後のレース)
「粉雪が舞う京都競馬場、あたかも、テンポイントの旅立ちを祝する京都競馬場です。」
「あっ…と!テンポイントおかしい、テンポイントおかしいぞ、故障か、故障か!テンポイントは競走を中止、テンポイントは競走を中止!これはえらいこと、これはえらいことになりました!えらいことです!」
1980年代
1982年 天皇賞・春
勝馬:モンテプリンス
「無冠の貴公子から9年、無冠のプリンスに春が訪れました!」
1983年 菊花賞
勝馬:ミスターシービー
「おお、青い帽子が上がって行った、ミスターシービー、京都の正念場、第3コーナーの上りで行った!上りで行ったぞ!」
「大地が、大地が弾んでミスターシービーだ!(中略)史上に残る三冠の脚!これが史上に残る三冠の脚だ!」
1984年 菊花賞
勝馬:シンボリルドルフ
「赤い大輪が薄曇りの京都競馬場に大きく咲いた!! 三冠馬8戦8勝!
我が国競馬史上、不滅の大記録が達成されました京都競馬場!」
勝馬:メジロラモーヌ
「河内、河内、早いのか、これでいいのか!」
「ハッとさせられたゴール板前!しかし、史上初の牝馬の三冠馬達成!メジロラモーヌ!」
1987年 菊花賞
勝馬:サクラスターオー
「菊の季節にサクラが満開!菊の季節にサクラ!サクラスターオーです!」
1989年 エリザベス女王杯
勝馬:サンドピアリス
「しかしびっくりだ!これはゼッケン番号6番、サンドピアリスに間違いない!」
1989年 マイルチャンピオンシップ
勝馬:オグリキャップ
「バンブーが逃げた!オグリが負けられない!オグリが内を掬う!内を突く!内か外か~、僅かに内か!」
「僅かに内、オグリキャップかバンブーメモリーか!負けられない南井克巳!譲れない武豊!この二頭の一騎打ちとなりました!」
1990年代
1990年 菊花賞
勝馬:メジロマックイーン
「メジロでもマックイーンの方だ!」
1990年 エリザベス女王杯
勝馬:キョウエイタップ
「ゴールに入る前から横山典弘ガッツポーズ!1週間遅れの18番です!」
勝馬:メジロライアン
「この距離では負けられないメジロライアン! 宝塚の主役はメジロライアン!」
1992年 宝塚記念
勝馬:メジロパーマー
「マックイーンに代わってパーマーの方がまんまと逃げ切ってしまいました!」
1992年 菊花賞
勝馬:ライスシャワー
「スピード文句なし、パワー十分、問題はスタミナ、それも坂路で鍛え抜かれてぬかりなし、三冠馬へ、行け!ブルボン!」
「ああ、ライスシャワーが先頭に立った!ミホノブルボンは三冠にならず! ライスシャワーです!ライスシャワーです!あ~っという悲鳴に変わりましたゴール前! 」
1993年 天皇賞・春
勝馬:ライスシャワー
「今年だけ、もう一度頑張れマックイーン!しかしライスシャワーだ!昨年の菊花賞でミホノブルボンの三冠を阻んだライスシャワーだ!」
「関東の刺客、ライスシャワー!昨年のミホノブルボンの三冠を阻んだライスシャワーが、今度は、メジロマックイーンの三連覇を阻みました~!」
1993年 菊花賞
勝馬:ビワハヤヒデ
「完全にビワハヤヒデ!完全にビワハヤヒデ!菊の舞台で無念を晴らす!ビワハヤヒデ1着!」
1994年 天皇賞・春
勝馬:ビワハヤヒデ
「兄貴も強い!兄貴も強い!弟ブライアンに続いて、兄貴も強い~!」
1994年 菊花賞
勝馬:ナリタブライアン
「弟は大丈夫だ!弟は大丈夫だ!弟は大丈夫だ!10年ぶり、10年ぶりの三冠馬!」
1995年 天皇賞・春
勝馬:ライスシャワー
「恐らく、恐らくメジロマックイーンもミホノブルボンも喜んでいる事でしょう!」
1996年 天皇賞・春
勝馬:サクラローレル
「またサクラが満開になる京都競馬場! サクラが満開だ!サクラロ~レル~!」
1996年 菊花賞
勝馬:ダンスインザダーク
「うわ~凄い脚だ~! ダービーの無念を一気に晴らすゴール前! 凄い脚~!」
1997年 天皇賞・春
勝馬:マヤノトップガン
「大外から何か1頭突っ込んでくる! トップガンだ! トップガンだ! トップガンだ!」
1997年 菊花賞
勝馬:マチカネフクキタル
「またまた福が来た~! 神戸、そして京都に続いて菊の舞台でも福が来た~!」
1998年 日経新春杯
勝馬:エリモダンディー
「日経新春杯、あの悪夢の大事故から20年が経ちました。今年は柔らかい冬の日差しが差し込める京都競馬場、本当に15頭、全馬無事でゴールインしてもらいたいところであります。」
1998年 菊花賞
勝馬:セイウンスカイ
「38年ぶりセイウンスカイ逃げ切った! まさに今日の京都競馬場の上空と同じ! 青空!」
1999年 宝塚記念
勝馬:グラスワンダー
「さぁ、相手はこれと決めた時の的場均は怖いぞ!」
「的場!的場だ的場だ!やっぱり怖かった的場!グラスワンダーが勝ったー!」
2000年代
2000年 天皇賞・春
勝馬:テイエムオペラオー
「3強の頂点は俺だ! 高らかに歌うは『盾の歌』!テイエムオペラオーです!」
2001年 宝塚記念
勝馬:メイショウドトウ
「ドトウの執念が通じるのか!ドトウの執念がここで通じるのか!」