概要
あらすじ
双子の弟・真木現人は兄の夢人のことが嫌いだった。主人公の虐めと呪いをテーマにした小説『呪験』で十五歳にして作家になり、上京した夢人。そして、その内容に影響された殺人事件により帰郷するのだが、彼は七屋敷薫という婚約者を連れていた。―七屋敷は呪われている。七屋敷の花婿は、呪いによって、二年と経たず早死にするのだ。そんな『呪い』が噂される婚約だが、夢人は嘲り笑いを浮かべるだけだった。そして、夢人を尊敬し慕う妹の信乃歩に、彼らを蝕む呪いの物語が、静かに始まりを告げていた―。甲田学人が放つ呪いの物語、開幕。
解説
けいおん!やらき☆すたと同じく4文字タイトルであることから、発売当初はいわゆる萌え系統のライトノベルを想像したファンも少なくない。といっても、本気でそのような予想がされていたわけではなく、要はネタとしてジョークが言い交わされていた。内容はいつもの甲田学人作品であり、日常アニメのような作風とは程遠い。
著者・甲田学人の作風や前作を知らない人に向けて今作を説明するなら、怪奇現象という名の事件を探偵が解決する内容と言っても差し支えない内容で、前作の断章のグリムや前々作のMissingも大雑把に言えばそうした作りが中心だ。それぞれ細かな作風や雰囲気の違いはあるものの、オカルト、民俗学、魔術等にまつわる民話・伝承を元ネタにした事件が起こる点は過去作とも共通しており、それら知識に関する講義シーンを交えながら最終的に事件を収束させる。ノロワレの場合は日本の呪術にまつわる民話伝承が中心となり、まさしく『呪い』がテーマとなった作品といえる。
呪いとは、恨みを抱く人間が起こす行為である。そのため、ノロワレにおいては恨みや復讐といった負の感情を抱く人物が登場し、作中で発生した呪いを解明していくうちに、最終的にその人物が呪いを行使するに至った動機が判明する。嫉妬、憎みなど人間の暗い一面が扱われる関係上、この作品の登場人物は良くも悪しくも人間味が強い。多くのライトノベルにあるようなキャラクター性の濃さよりも(夢人の場合はキャラ性が濃いかもしれないが)、もう少しリアルな人物像が色濃く出ているのも作品の特徴だ。