概要
対艦ミサイルというのは空対空ミサイルとはかなり違った性能を求められる。
何しろ対象が、戦闘機とは比べ物にならない大量のレーダーと迎撃用兵装を兼ね備えた艦隊である。
そのためこれまでの対艦ミサイルは、(できることなら)敵のレーダー視程外から発射できる長射程と、レーダーから逃れるための低空飛行能力を求められた。
一方で速度性能は軽視される傾向にあり、例えば空自で現役のASM-2は1,150km/hほど、米海軍のハープーンも1040km/h程度で、音速(1224km/h-マッハ1)にも届いていない。
AAM-4やAIM-120のような空対空ミサイルがマッハ4だの5だのでかっ飛んでいるのと比べると、これは非常に遅い。
地面、海面近くの標的は、地面や海面に反射するレーダー波に紛れてしまう。そのため昔からレーダーというのは地面、海面近くを見張るのを苦手としており、速度性能を犠牲にしても、低空飛行を徹底すればレーダーの目から逃れることができた。
ミサイルとしては低速であっても、マッハ1の飛翔体に比べればたかだか時速数十キロでしか進めない艦艇など止まっているも同然であるから問題がなかった、というのもある。
しかし、艦艇のレーダー性能が向上し、低空飛行程度では誤魔化しが利かなくなってきた。
そのため次の対策が「レーダーの反応速度を超えて命中させる」というものである。敵艦のレーダーが反応し、コンピュータが脅威判定、ミサイルや主砲に情報を入力して発射、迎撃、この作業が終わる前に突っ込んでしまえばいい。
そんな非常に思い切りのいいコンセプトのもと開発されているのが、このXASM-3である。
固体燃料ロケットとラムジェットエンジンを複合した「統合推進システム」により、その最高速度はなんとマッハ3以上。
パッシブ、アクティブのレーダー誘導システムを組み合わせて敵の電子妨害に対抗し、命中率を格段に高めると同時に、150km以上の射程を確保し、敵の迎撃可能圏外から発射することで、発射機体は安全な攻撃が可能となる。
開発は順調で、2016年中に、退役護衛艦しらねを標的として発射試験が行われる予定。
完成の暁にはF-2戦闘機に搭載して運用される予定である。