「剣豪将軍義輝 戦国に輝く清爽の星」および「剣豪将軍義輝 星を継ぎし者たちへ」とは、それぞれ「もっと歴史を深く知りたくなるシリーズ」の第三弾・第四弾企画であり、宮本昌孝氏の小説「剣豪将軍義輝」(全3巻)を原作としたスタイリッシュ恋愛アクション青春グラフティ時代劇である。「剣豪将軍義輝 戦国に輝く清爽の星」(以降『前編』)はEX THEATER ROPPONGIにて2016年12月8日〜14日まで上演、「剣豪将軍義輝 星を継ぎし者たちへ」(以降『後編』)は同じくEX THEATER ROPPONGIにて2017年6月8日〜18日まで上演された。
あらすじ
群雄割拠の戦国時代。室町幕府第13代将軍となったばかりの足利義藤の初陣は実に惨憺たるものであった。己の無力さに打ち拉がれた少年将軍は誓った。もっともっと、強くなってやる。"大樹"と呼ばれるにふさわしい男に、天下一の武人に。
義輝と名を改め、少年は絶対不敗の秘剣「一ノ太刀」を会得するため、廻国修行の旅に出る。道中で様々な人物と出会い、別れ、義輝は成長していく。愛しい女性、生涯の友たちと苦難を乗り越え、一本の苗木はやがて荘厳たる大樹へと成る。
天下泰平の為に駆けた剣豪将軍の、波乱万丈の人生を、前編後編に渡り描いた大作。
おもな登場人物
足利義輝(演:染谷俊之)
主人公。室町幕府第13代将軍。随分と頼りない少年だったが、話が進むにつれ大きく成長し最終的に完璧超人になる。チート。初陣で敗戦濃厚になっても「遁げぬ」と意気込んで敵に向かって行くなど、勇気ある少年であり、成長してからはより強まった精神力で仲間たちを支える。恋人・友人想いで、敵にも慈悲深い聖人である。原作では眉目秀麗で、纏う雰囲気が高貴な人物であるとされており、舞台で義輝を演じた染谷俊之さんはまさにこの表記に当てはまる人物といえよう。一見の価値あり。
真羽/小侍従(演:加藤梨里香)
犬神人の娘。山で生まれ育った、山猿のような少女。特技は印字打ちでいち少女にしては戦闘能力が高い。目上の人物にも臆することなく自分の意見が言える、芯の強い少女。奔放な性格のため、御所での生活は格式張っていてあまり好きではなかったようだ。義輝を深く愛し、また義輝に深く愛された人。
朽木鯉九郎(演:山本匠馬)
将軍家剣術指南役として幕府に使える青年。一流の剣士で一騎当千の猛者である。義輝に非凡の才を見出し、廻国修行に出ることを提案する。
はじめは義輝を導く立場であったが、義輝が成長してからは導かれる立場となり、義輝と共に"新しき世"を見たいと強く願うようになった。義輝の為に東奔西走する、義輝の右腕的存在。
浮橋(演:石井智也)
鯉九郎に仕える忍者。忍者だが、およそ素早くは動けなさそうな外見をしており、性格も朗らかでいつも布袋様のような顔をしている。しかしその実力は本物で、馬よりも早く翔けることも出来る。様々な分野の知識が豊富。少しお調子者の面もあるが、憎めない忍者である。目くらましや、爆弾のようなもの、小刀や飛苦無など様々な武器を使う。懐は四次元ポケットになっている。
熊鷹(演:北代高士)
義輝の生涯のライバル。山に生まれ育った犬神人。真羽とは幼馴染である。剣の腕が立ち、力も強く、危険な人物。義輝が「強くなりたい」と思うようになったきっかけでもある。
明智十兵衛(演:瀬川亮)
乱れた世を憂う武士。真面目で自信家。何かと義輝に縁があり、重要な場面で居合わせることが多い。前編ではクールでニヒルな雰囲気を醸し出していたが、後編ではだいぶ丸くなった。信長とはあまりそりが合わないようだが…?
石見坊玄尊(演:寿里)
延暦寺の悪僧として荒れた日々を過ごしていたが、そんな日々が阿呆らしくなり、ある時から孤児の小四郎と共に全国を旅していた。大柄で、性格も豪快な男。良くも悪くも正直で馬鹿。
小四郎(演:輝山立)
戦で親を亡くし家も焼失したショックで声を失ってしまった孤児。玄尊に拾われ共に日本中を旅していた。勉学が好き。
日吉丸/木下藤吉郎(演:白又敦)
お調子者の少年。真羽に想いを寄せている。将来は出世して大大名になるのが夢。人を食ったようなことを言うのが好き。のちの豊臣秀吉である。
梅花(演:星野真里)
明人の娘。妖艶で美しく、謎多き人。年下よりも年上が好きらしい。殺陣がとにかく美しい。
三好長慶(演:山崎樹範)
足利将軍家に反逆し権力を握らんとする、敵対勢力の筆頭。義輝を京から追い出し、もはや飛ぶ鳥を落とす勢いであった。蹴鞠をするとたまに猫になる。
伊勢貞孝(演:大堀こういち)
幕臣。幕府のことのみを考えて行動する真面目な男。その幕府への想いゆえに長慶に取り込まれてしまう。長慶のアドリブに毎公演全力で応える。
その他
・前編の主題歌は「明星の刃」、後編の主題歌は「未来の星命」。どちらも歌っているのはネットを中心に活躍する男性ボーカリストの「天月-あまつき-」さん。
・足利義輝の辞世の句は「五月雨は つゆか涙か 時鳥(ほととぎす) 我が名をあげよ 雲の上まで」である。後編千秋楽の6月18日には五月雨が降っていた。
・2017年11月3日に開催された「プレミアム上映会+トークイベント」ではお見送りならぬ斬り送りが行われた。義輝役の染谷さんにイベント参加者が一人一人斬られていくというものであり、斬られる前に「お願いします」、斬られた後には「ありがとうございます」と言って参加者が次々と斬られていく様子はとてもシュールなものであった。
・当然のことながら原作と舞台ではさまざまな相違点がある。原作も舞台もどちらも一見の価値あり。是非違いを楽しんで欲しい。
・原作には「海王」という続編がある。舞台にも登場した様々なキャラクターのその後が描かれる。
・2017年5月22日には前編の公式フォトブックが発売された。購入者特典として、後編のミニフォトブックが応募者全員にプレゼントされる応募ハガキがついていた。前編公式フォトブックには「義輝異聞 将軍の星」という小説が掲載されているが、これは宮本氏の同名の短編集からのものである。この短編集には7篇の短編が収められており、その中の4つは「剣豪将軍義輝」の番外編になっている。舞台・原作小説を見て義輝ファンになった方はこちらも是非チェックしていただきたい。