欧歴一九〇八年。終戦より一年。
共和国は今なお生々しい死者の記憶に囚われている。
払った犠牲の無益さゆえに、流した血の大きさゆえに、誰もが問わざるをえないのだ。
今が戦後か、束の間の停戦にすぎなぬのか、と。
登場国家
チュファルテク合同共和国
東の王国と西の連邦の間に位置する小国。
緩衝国家として独立を保ってきたが、西方の進歩と自由への憧れからあまりにも西側に接近しすぎたため、王国の怒りを買って戦争へと発展した。
さらに主戦場でありながら、連邦と王国が共和国の頭越しに戦争終結を決定したため、共和国にとっては大国の都合で戦争をやらせれ平和を強制されたという認識が蔓延している。
そのため排外主義が国内にはびこり、無謀であっても戦争再開を叫ぶ国民が多い。
クライス連邦
西の大国で、共和国の同盟国。
安保条約により駐屯軍の予算援助を受けており、それが共和国内の排外主義を勢い付けている。
ガルダリケ王国
東の大国。西側に阿るような外交をする共和国に戦争をふっかけた。
形としては戦争は連邦・共和国側の勝利だったようだが、王国は共和国に賠償金を払っておらず、それが共和国内の排外主義を勢い付けている。
登場人物
ヨランダ・ロフスキ少佐
共和国軍人であり、本作の主人公。軍務省法務局公衆衛生課独立大隊『オペラ座』の法務課長。
『オペラ座』は先の戦争で地獄を潜り抜けた軍人たち、いわゆる塹壕貴族たちで構成され、政府の方針である対外協調主義に反対してテロを起こす排外主義者の排除を担当している。そのため、排外主義者からは「売国機関」と罵られている。
排外主義者を「知能のない豚」と見下すいっぽうで、連邦に対しても好ましくない感情を抱いてる。
軍人として思いやりに溢れた人物であり、戦友を侮辱する者には怒りを隠さない。
モニカ・シルサルスキ少尉
『オペラ座』に法務官して配属された士官学校を首席卒業したばかりの新品少尉で、現状唯一塹壕貴族ではない軍人。
洗浄を知らないため、ロフスキ少佐らの言動にドン引きすることも多いが、素地が優秀なのでなんとか職場にあわせて軍務に励んでいる。