概要
鳥取県から山口県にかけて伝わる妖怪。道の上に現れ、出くわした人が見続けているとどんどん背を伸ばして巨大化、被害者は圧倒されて恐怖に打ち震えることとなる。文字通り、「次第に高くなる」わけである。
対処方法としては、あえて妖怪の足元を見ること。見上げずに見下ろし続けていると、敵わないと悟った次第高は消え去ってしまう。
島根県には「しだい坂」という伝説があり、こちらは三瓶山(さんべさん)への道を歩いていると、それが次第に急坂となり、最後には圧し掛かってきて人を攫ってしまうという恐ろしい怪異である。この伝説は「次第高→シダイダカ→シダイザカ」といった形で伝承が変化したものと推定されている。
恐怖心が生む「シダイダカ」
見上げるほどに大きくなるという性質は「シダイダカ(次第高)」と呼ばれるもので、同名の妖怪が中国地方に伝えられるほか、のびあがりなど似た特徴を持つ妖怪は各地に伝えられている。
これらの妖怪は、何者かに相対したとき、恐怖感が相手を実際以上に大きく見せるという、人間の心理状態を表したものである。そのため、パニックに陥って見上げてしまうとさらに妖怪は巨大化し、人間を圧倒してしまう。しかし逆に呪文を唱えたり、妖怪の足元を見下ろすようにするなど、人間に冷静な対処を取られると妖怪は消えるしかないのだ。
西洋でも同様の怪異が絵画として描かれた。ダリの「聖アントニウスの誘惑」では、まるで昆虫のような、何重にも折れ曲がった細長い脚を持った悪魔が登場し、アントニウスを脅かしている。
アントニウスは迫り来る悪魔に慄き、抵抗しようと十字架を掲げるが、悪魔たちは彼が恐れるほどに節を増やして脚を伸ばし、ますます彼を圧迫してのけぞらせてしまうのである。
関連イラスト
このイラストは「突然倒れ掛かってくる樹木の怪異」として伝えられる次第高。