CV：千本木彩花
概要
柚木千枝とは佐伯沙弥香と同じ友澄女子学園に通っていた一つ上の先輩で合唱部の先輩でもあった。
原作では少ししか出ておらず、この時はまだ名前が出ていなかった。名前が明らかになったのは小説「佐伯沙弥香について」からである。
作中ではよくふわふわしているお嬢様のように語られ実際、後輩達とフード店に行った時は沙弥香に耳打ちで注文方法を聞いたり、部活の打ち上げで初めてのファミレスやカラオケに不安がっていたりと、お嬢様っぷりを感じられた。こう見えて好きな小説は殺伐としたミステリーで普通に読み何回も騙されるところが面白いらしい。
※以下ネタバレ注意
沙弥香を同性愛に目覚めさせた人物
「沙弥香ちゃん、あのね」「あなたが好きなの」「よければ、付き合ってほしいの」
沙弥香の初めての恋人。 そして中高一貫の友澄女子学園から転校する原因である。
作中柚木は序盤から沙弥香のことを気にかけており、沙弥香が同級生と寄り道する際に同行し沙弥香に色んな事を聞いたり、部活の打ち上げが決まった時沙弥香に来て欲しいとお願いしたり、打ち上げ中も常に沙弥香の隣にいて話していた。
そうして秋になり柚木達三年生が引退して少し経ち部活前、音楽室に柚木がやって来て沙弥香に部活動の後中庭に来て欲しいと伝えその後部活動が終わった沙弥香は中庭に出向き柚木に上記の告白をされる。
沙弥香は当初かなり衝撃をくらって動揺しており、その場で決める事が出来ず「……少し、考えさせてくれますか」とその日の晩、翌日とよく考え悩み告白から二日目に答えを出す。
その日の朝に沙弥香は三年生の教室に向かい柚木を中庭に誘い少し前置きをしてから自身の気持ちを答えた。
「私は今、柚木先輩のことが好きなのか分かりません」
「でも、先輩に告白されたことは、その……嫌ではない気がします」
「だからお試しというのも変ですけど……付き合って、色々、知れたらいいなと」
こうして二人は付き合う事になり主に中庭で本の好みについて聞いたり名前の呼び方で沙弥香だけ内心で変えるかどうか悩んだり沙弥香は自分のどこを好きになったかを柚木に聞き「恥ずかしいけど、ちょっと真面目に言うと仕草が好きなんだと思う」と話したり沙弥香と家電で話したいと言ったり（柚木は高校生になるまで携帯電話を持たせて貰えない）と柚木は沢山の憧れていた事を沙弥香と叶えていたのだが…
柚木の恋心は一時的なもので長くは続かなかった。
沙弥香と初めてキスをした後柚木は何故か首を傾げ眉根を寄せていた。沙弥香が何か聞こうとして、「えーっと、照れただけ」と目を逸らしながら口元だけ笑って沙弥香に感想を聞いたら「先輩が好きなんだって、確信を持てました」と言い柚木はそれを聞き「そっかぁ」「そっかー……」と言葉を重ねる柚木の真意を問えず、沙弥香が不安と共にその顔を覗こうしその前に顎にキスするが失敗し唇を噛んでしまい「要練習、かなぁ」「そ、そうですね」「要練習だから！」「はいっ」と変な別れの挨拶を交わしお互い別方向に離れた。別れ際柚木は口だけ動かし『困ったなぁ』と言っていた。
この時柚木は沙弥香とのキスに何も感じ無かったのである。
一方沙弥香はキスした瞬間視界が溶け、光の泉を覗く様に、光に満ちていた。離れる時よろめきそうになったり心臓は安定して激しく高鳴り、耳鳴りにまで達していた。上記の「先輩が好きなんだって、確信を持てました」は沢山の気持ちをまとめて、柚木に届けた言葉だったが何一つ届いていなかった。
中等部の卒業式の日、式を終えた柚木と沙弥香は学校内で唯一繋がっていた場所、中庭で会い柚木の方からキスを申し出て両手には荷物や卒業証書を抱えていた為沙弥香の方から唇を重ねる。キスを終えた後柚木はまるで眠たげな様に瞼が重く、沙弥香が違和感を抱いていると柚木は緩く頭を振り「ごめんね、今日はなんだかぼぅっとしちゃう」と言い沙弥香は「卒業式ですから」と多分そうだろうと思った事を言っていた。そして柚木は何事もない様に学校を後にした。
このキスでも柚木は何も感じず寧ろ気怠げであった。
沙弥香の方は周りの目をいつからか気にせず柚木を見ていたいと感じ、それほどまでに柚木を愛おしく思っていた。
これほどまでにキス一つでこうも温度差があるカップルはそうそういないだろう。
沙弥香は何週間も会えず寂しいと思うが携帯電話の番号を知らず何も繋がりが無いと不安を感じある日の放課後番号を聞きに高等部の学舎の門に出向き柚木を待っていた。もう帰っていないかどうか心配だったが幸い柚木はまだ帰っておらず、会うことができた。柚木は少し驚いた顔をし他の高等部からの知り合いだろう二人に一言、二言告げて沙弥香のもとへ向かった。「お久しぶりです」と沙弥香が言うが柚木は返事をしながら振り返り別れた二人を気にする素振りを見せ、沙弥香に呼ばれるも曖昧な反応と笑みで対応し「どうかした？」と不思議そうに首を傾げると沙弥香は温度差を感じ困惑してその態度を見た柚木は「あ、会いに来てくれたんだ。ありがとう」と取って付けた様な空っぽの言葉だった。軽い雑談を交わし携帯電話の番号を交換し柚木は今更ながら沙弥香の番号を知らないことに気づいた。その後柚木は沙弥香に何か告げようとしたが何も言わず途中まで一緒に帰った。
この時点でもう完全に恋心は無かったと思われる
沙弥香も上記の取って付けた様な言葉には柚木だって人間なので嘘をつくし取り繕いもするだろうが自分もその対象であったのに密かに傷ついていた。今の現状を変えたく行動したが柚木がここに至るまで何もする気が無いのではと思ったが沙弥香は見ぬ振りをした。
それからというもの、何回か電話で話すだけで沙弥香が夏休みどこかで会えないか聞くと柚木は『あ……ごめんね。夏期講習参加しようかなと思ってて……』と都合が合わず会えない日々が続いた。
二学期を迎えたある晩柚木は電話で明日の放課後そっち（中等部）の中庭で会えないかを沙弥香に聞き二人は会う約束をした。
そして…
身勝手で無責任な言葉、そして軽薄な別れ
その日沙弥香が先に着いてベンチで待っていると後から柚木が来て沙弥香は少し駆け足気味で急ぎそれとは対照的に柚木は立ち止まり淡く微笑んだ。沙弥香に寂寥を感じさせて…「前より髪が伸びたね」と挨拶抜きにそんな事を言ったが沙弥香は呼び出した理由を聞こうとするが何故か保す声は出ず、縋る様に腕に触れようとすると柚木はそれを避ける様に身を引いた。
「……先輩？」
柚木は一度目を逸らし直ぐに向き直って。
「沙弥香ちゃん、あのね」
この瞬間沙弥香は何故か友澄に来た頃色んな部活動の勧誘された頃を思い出した。
その中に合唱部があり穏やかな声が沙弥香を誘った。名前を聞かれ名乗るとその先輩…柚木は親しみやすい笑顔で『沙弥香ちゃんかぁ。よろしくね』会って間もない柚木にちゃん付けで呼ばれ酷く居心地が悪かった。何故そんなことを思い出したのか沙弥香自身も分からず…
「私たち、もう子供じゃないんだから」
「その……」「ええっと……？」
「遊びでこういう付き合いをするのはよくないと思うの」
「一時の気の迷いのようなものだったのよ」「女の子同士なんて……ね？」
それから柚木が何かを言ったが沙弥香は聞き取ることが出来ず頭を下げて去っていった。
柚木はよく憧れという表現を用いており恋人と秘密のやり取りをしたり電話やキス恋人という特別な相手に、その関係を持つ自身に憧れていた。恋に恋をするという表現があり柚木の恋は正にそれであり、
柚木の恋人は恋人であって沙弥香ではなかったのだ。
沙弥香も予感が無かったわけではなく柚木の態度から察するものはあったが見て見ぬ振りをし柚木を信じていた。会えない日々が続いた時柚木もこの寂しさを感じていると信じていた。ただ信じるだけで具体的に何もせず夢見ていた。だから夢から覚め何も残らないのは当たり前の事だった。
そして沙弥香は電車通学が嫌になったという理由でそれを両親に言い中高一貫の友澄から離れ遠見東高校に進学した。
原作四巻幕間初恋はいらないにて
柚木は遠見駅で友人と待ち合わせをしていた沙弥香に偶然出会った。そして柚木は高校で謝ろうと思っていたが知らない内に別の高校に行ってしまった為あの時の事を謝った。沙弥香がそれは何に対してか問われると目を逸らしながら、
「沙弥香ちゃんは普通の子だったのに私に付き合わせちゃったせいで…その…」
「もしも今も沙弥香ちゃんが女の子を好きになる人だったら私のせいだから」
「沙弥香ちゃんも普通の子に戻ってくれてたらいいんだけど」
沙弥香はその謝罪が自分に向けてのものではなく柚木の罪悪感を消す為の謝罪であると瞬時に見抜き、
「心配しないでください今となってはどうして先輩のことを好きになったのか不思議なくらい」
「まあある意味感謝してますけど」
丁度沙弥香が待ち合わせしていた友人七海燈子がやって来て沙弥香はまるで恋人の様に燈子の腕を組み柚木に自分が同性愛者だと見せ付けそして…
「さようなら」
と一言だけ言って二人は去っていった。
