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凶兆の九星座の編集履歴

2020-10-01 11:47:20 バージョン

凶兆の九星座

きょうちょうのきゅうせいざ

「凶兆の九星座 『喉斬り道化師』の支離滅裂な妄言」とは、ゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの一編とも言える小冊子である。著者はセプテム・セルペンテース。

「凶兆の九星座」とは、イギリスの出版社「ペンギン・ブックス」から出版されていたゲームブック「ファイティングファンタジー」シリーズの一編として、星雲社が出版しているゲーム雑誌「RPGamer」VOL7(2004年九月発刊)の付録の小冊子として発表された。非売品。

 付録といえども、パラグラフ400の、通常のファイティングファンタジーと同じボリュームおよび内容を有している。


作品解説

 アランシア、ダークウッドの森近く。

 ヤズトロモの塔に向かっていた旅の道化が、野営の準備を始めていた。かの魔術師が商っていると噂の、マジックアイテムを購入するためだ。

 しかし焼きキノコの夕食にありつこうとしたその時、空からガーゴイルが飛来。剣を抜き応戦するも効果は無し。

 だが、更に三体のガーゴイルが飛来し、道化は抵抗を止めた。……抵抗を諦めたのではなく、たかが道化一人を殺すのに四体のガーゴイルは多すぎる、ならばこいつらの目的は、自分を殺すためではないだろうと、予想を立てたのだ。

 道化の予測通り、ガーゴイルに両手足を掴まれ、空中を運ばれた。やがて到着したのは、月岩山地に接する辺りに建つ、不気味な城。

 その天守閣に道化を放り出したガーゴイルたちは、そのまま石像に。

 道化は中に入り、城の主……妖艶な女魔術師と出会う。

 女魔術師は、「紫の瞳」メーヴを名乗った。道化は自分如きに何の御用かととぼけるも、メーヴはそれを一笑。

 道化は、「喉斬り道化師(ジャギュレイティング・ジャグラー)」の名で通っているロガーンのしもべであり、メーヴはそれを看破していたのだ。

 報酬次第で、善にも、悪にも、どちらからの依頼も受ける。盗みはもちろん、殺しの出し物も請け負う事をいとわない。

 道化であり、同時に盗賊であり刺客。それが「喉斬り道化師」。


 メーヴの依頼は、「ステロペスの眼」という宝石を盗み出してほしい、というもの。

 持ち主は、邪術師ルドウィカス。彼の居城を訪れた際に見せられ、魅惑されたらしい。

 報酬の金貨三百枚を、五百枚に釣り上げたが、代わりに仕事をおろそかにしたり逃げたりしたら、視力を奪われる呪いをかけられた。

 かくして、メーヴの依頼を受け、道化はカアドの街……ルドウィカスの居城の南にある市街地へと向かった。


 チアンマイ、ファングの下流、コク川の河口に、ルドウィカスの居城である「死魎城」が建つ。かつては征服者の建てた城だが、叛乱の前に廃墟と化し、ウスレル神の修道院に。しかし院長が「死魎」というアンデッドと化して、呪いが周囲に蔓延。南に位置するカアドの街の民から「死魎城」と呼ばれるように。

 サラモリスの遍歴騎士バーグにより、「死魎」は倒されるが、アンデッドのかけた呪いは消えずにいた。そして四年前、ルドウィカスが引っ越してきたのだ。

 ルドウィカスはゴブリンなど混沌勢の種族を配下に置き、周囲に暗い影を投げかけている。

 しかしルドウィカス以上に恐れられているのが、「九星座」を名乗るルドウィカスの部下たち。

角蛇(ジアルガ)」「蜘蛛王(アーハロゲン)」「蜥蜴(バジリスク)」「怪像(ガーゴイル)」「巨獣(ベヒモス)」「魔蠍獅(マンティコア)」「オークの将」「海妖」「死の遣い

 神々の伝説における最初の戦いにて、混沌側に立った九の怪物たちの名を、称号として授かっているという。

 聞き集めた噂によると、「『巨獣』は異形のオーガー」「闇エルフとドワーフが加わっているが、星座は不明」「空から飛来し一刻で66人を殺した」「掌に乗るくらいの小人の暗殺者がいる」「嵐を起こし稲妻を落とす白子の呪術師がいる」など、真偽の区別がつかない情報ばかり。


 城には、旅の道化として入り込んだ。そして道化は眠りについたルドウィカスの喉を切り裂き、「ステロペスの眼」を盗み出す事に成功するが、それが冒険の始まり、「喉斬り道化師」の興行の始まりとなった。




 本作は、単独の書籍でなく、付録の小冊子である。

 しかし、小冊子にしておくにはもったいなく思うほどに、あちこちにファイティングファンタジーの過去作の名称・地名・人物・設定などがちりばめられ、それらを追うだけでも楽しくなる一作である。


 システムは、基本的には通常のファイティングファンタジーと同じである。しかし、技術・体力・運を決めるにあたっては、最初にサイコロ一個を振るのみ。その数値を「宿命点」としたうえで、そこから各数値を決定していく事になる。

 そのために、全ての数値が最高(最低)といったキャラができない。技術は高く剣の腕前は高くとも、運が低く、後述する「魔芸」もわずかしか持てなかったり、技術は低く剣そのほかの判定は失敗が多いが、運が髙く魔芸が多く持てる、といったキャラになったり、両者ともそこそこだが中途半端のどっちつかず……など、そういった感じに仕上がるのだ(つまり、チートが最初からできないようになっている)。


 そして、主人公たるプレイヤーキャラクターの扱いも個性的かつ魅力。

 今までのファイティングファンタジーでは、例外もあったが、基本的に主人公は「善側、秩序側」に立ち、悪漢を討つ英雄といった立ち位置にいるものだった。

 しかし本作は、善でも悪でもなく、その両方に属さず、むしろそれらを茶化す「道化」であり、人間を創造した神・ロガーンのしもべであり名代めいた存在という立ち位置にいる。いわば、「謎かけ盗賊」をよりヒーローに近くしたような存在ともいえる。

 ファイティングファンタジーの基本設定である「善悪の対立」。それをうまく用い、そのどちらの勢力にも立たない事で、特異な主人公にしているのみならず、両者を俯瞰する事にも成功しているのだ。

 なのであくまで、自身の動機は俗物なそれ(金および自分の身の安全)が中心。一応は中立の立場らしく「善と悪のバランスを取る」などと大義名分はあるが、基本的な理念は善悪両者の権威を笑い飛ばす事である。

 これは、ルール解説などにも同じスタンスであり、シリーズの多くが毎度おなじみ「善玉が悪を討つ」事のワンパターンを指摘し笑うのみならず、「悪側の毎度おなじみ世界征服」する事のマンネリもまた笑い飛ばしており、時にはメタ的な表現も見られる。

 しかし、これは決して作品および作品世界そのものを嘲笑しているわけではなく、この道化の主人公(および作者)そのものもまた、この世界の一員であり、この道化(および作者)自身もまた愚かという表現の一部なのだ。

 この点は、ファイティングファンタジーの舞台「タイタン」世界においてのロガーンの扱いに似ている。ロガーンは民話にて、権威を振りかざし悪行を成す者を、知恵やトリックを用いてとっちめているが、自分自身も愚かであるように見せている。このゲームブックをプレイする読者=プレイヤーもまた、ロガーンと同じように愚かであり、同時にこのタイタン世界を愛している、愛すべき愚か者だという事を示唆しているかのようでもある。


 ゲームブックとしての難易度も、決して低くはない。むしろ高く、クリアには何度も挑戦する必要がある。

 また、特殊アイテムや特殊情報によるパラグラフジャンプも各所に見られるが、それらすべてがクリアに必要とも言えないのが、過去作を彷彿とさせる。

 巻末には「愚者の採点表」なるものがあり、このゲームブックをプレイし死んだ回数を聞いてくる。つまり、死ぬことすらもゲームの一環であり、死にざまを楽しむ事こそがゲームブックのプレイヤーの楽しみの一つだという事も織り込んでいるのだ。


魔芸

主な登場人物

舞台、アイテムなど

九星座(ネタバレあり)

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