概要
晋江文学城にて2015年よりpriestにより連載されていた古風耽美小説。完結済み。
番外編を含めて全130章より構成される。
2020年に簡体字版の書籍が湖南文艺出版社より全3巻にて発売されている。
猫耳FMにてラジオドラマが公開されており、全3期にて完結済み。
ドラマ化が決まっているが、現在は放送延期との発表を受け公開時期は不明。また、ドラマタイトルが『杀破狼』より『烽火流金』に変更となった。(2021年5月時点)
タイトルの『杀破狼(殺破狼)』とは、中国天文学における紫微斗数の命格(天命、運命)の一種。七殺、破軍、貪狼の三星の総称であり、いずれも凶兆の命格として忌避される。
これは主人公、長庚の名にも言えることであり、物語を通して、不吉の象徴、定められた命数を覆すことが一種のテーマであると考えられる。
あらすじ
大梁、元和帝の時代、顧昀は密命を受けて訪れた雁回で狼に襲われていた少年を助けた。
それから2年後、顧昀が人混みを嫌がる長庚を無理やり外に連れ出した日、巨鳶(戦艦)が街に侵攻した。
これを北疆の反乱と警戒した顧昀が鎧を手にしたとき、加莱の軍が雁回を襲った。
襲撃の最中、自殺した“母”の亡骸を前に、長庚は自身が元和帝と北疆の神女との間に産まれた罪深い皇子であることを知らされる。
「臣顧昀、遅ればせながら参上致しました」
公式CP
長顧(长顾)
長康×顧昀
穏和で甲斐甲斐しい年下攻×実力はあるがやる気を出さない半聾半盲受。
幼い長庚が体調を崩したとき、傍で面倒を見てくれたのは母親ではなく顧昀だった。
長庚はいつしか顧昀に親子とは異なる情を抱くようになる一方で、元来愛情深い顧昀は頼るべき肉親もおらず孤立する長庚に強い庇護欲を覚える。
一章時点で長庚が13歳、顧昀は20歳の7、8歳差。
登場人物
主人公
顧昀(顾昀)
字は子熹、幼名を十六。
雁回では沈十六と名乗っていたため、長庚や子供たちはしばしば十六叔と呼ぶ。
沈易とは兄弟のフリができるほどの親しい間柄で、上司と部下でありながらお互いに軽口を叩く。
長庚含む雁回の住人からは容姿以外取り柄がないと思われていた。
目尻と耳朶に赤い黒子があり、桃花眼の妖艶な雰囲気を纏う美形。
普段は瑠璃鏡(片眼鏡)をかけているが、戦場に立つ際は薬を飲むことで無理やり聴力と視力を補っている。
長庚(长庚)
本名は李旻。
11歳のときに狼に襲われたところを顧昀と沈易に助けられた。この恩義に報いるため以降願昀を義父として敬い助ける誓いを立てる。
母親とは距離があり、養父は殆ど家にいなかったため、幼いときは沈家にいることが多かった。
実年齢より大人びており、雁回にいたときは体調を崩しやすい義父の面倒をよく見ていた。
普段は温厚だが、烏爾骨の発作が起きると瞳が赤くなり性格は苛烈になる。
主要キャラ
沈易
字は季平。顧昀の部下であり、鉄騎玄鉄三大軍の一軍、玄甲の将。
科挙に合格する実力があり霊枢院で蒸気機構に携わっていたため非常に博識で手先も器用。
顧昀に玄鉄軍の再興に巻き込まれて以降、碌なことがないと常々ぼやいている。
葛胖小(葛晨)
長庚を大哥と慕う小太りの少年。
北疆の襲撃により家族を失い雁回を出たあと、了然との旅を経てからは蒸気機構に魅せられて霊枢院に入る。沈易も驚くほどの才能を発揮する。
曹娘子(曹春花)
長庚を慕う子供の一人。
算命学によれば本来女児として産まれるはずだったが男児として産まれてしまったため、短命を恐れた両親が性別を偽り女子として育てることにした。そのため普段は少女の格好をしている。
北疆の襲撃の日、川に落ちたところを長庚に救われ、恩義のために同行する。
非常に耳が良く、多国語を操り変装の術に長ける。
了然
護国寺の僧侶。慈悲深く憐憫を帯びた顔付きで、永久の清涼な風を彷彿とさせる。
啞のために長庚たちとは手話でやり取りする。
候府で暮らし始めて立場に迷う長庚を導いた。
その他登場人物
了痴
護国寺の僧侶。了然の師兄。
かつて顧昀の命数を指摘したために非常に嫌われている。顧昀の護国寺嫌いの原因を作った。
陳軽絮(陈轻絮)
医者の一族である陳家の女当主。
先代は顧昀に聾盲の毒を抑える薬を与えた。
胡格爾(胡格尔)
長庚の叔母。姉は北疆の神女であり、狼王ですら神女には跪くほどの崇高な存在だった。
加莱
北疆の皇子で次代の狼王。神女姉妹とも親しかった。
巨鳶を使い雁回を侵略しようとして捕らえられる。
元和皇帝
長庚の父。老候(顧昀の父)に代わって顧昀に愛情を注いだ。顧昀が腕につけている数珠は皇帝が贈ったもの。
李豊(李丰)
大梁の第一皇子。長庚の兄。
李晏
大梁の第三皇子。故人。
顧昀とは幼馴染で、とても仲が良かった。
生きていたら長庚のように穏やかで優しいひとだっただろうと言われている。
鐘蝉(钟蝉)
顧昀と長庚の師父。
用語解説
単語
紫流金
可燃性の鉱物であり、石炭の代替物。石炭よりも燃費がよく重宝される。
紫流金の加工物には微かに匂いがあり、嗅覚の優れた動物でなければ分からないとされていたが、聾盲の顧昀には嗅ぎ分けられるという。
地名
雁回
長庚が育った辺境の田舎街。
かつて老安定候が北蛮十八部落を退けた後、打ち捨てられた鎧や甲冑が小塚となった“将軍坡”が存在する。
北疆
北蛮。十八部落を従えるものは狼王と呼ばれる。
大梁への従属を示すため神女姉妹を差し出したが、14年ほど前に再度叛乱を起こす。
組織
大梁第一鉄騎玄鉄三大営
玄鷹、玄甲、玄騎の三大軍を指す。大梁を支える玄鉄営の主力。
- 鷹
軽量の鎧で飛行を可能にしたもの。顧昀もこの鎧を見に纏う。
- 甲
重厚な鎧の歩兵。沈易はこの鎧を纏う玄甲部隊に属する。
- 騎
玄鉄の鎧を纏う騎兵。この騎兵からなる軍が玄騎。
七大軍種
鷹、甲、騎に加えて裘、鳶、車、炮、蛟の“八つ”の軍種が存在する(数が違うのは作者のミスと思われる)。
いずれも強力な軍であり、特に鷹、甲は抜きん出ている。しかし、蛟軍に関しては海戦の経験が乏しい大梁の落ち目でもあり、戦力不足は否めなかった。
鳶は巨鳶と紅斗鳶の輸送機が作中に登場している。
霊枢院
禁軍と並ぶ皇帝付きの技術機構。朝廷の金食い虫であると共に兵部省の要。
玄鉄営の鎧もここで生み出された。
原作、メディアミックス情報リンク集
表記ゆれ
日本語名称では殺破狼だが、現在pixiv内では簡体字の杀破狼が主流となっている。