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こゝろの編集履歴2021/10/02 01:46:50 版
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注意‼︎

ここでは一般固有名詞との混合を避けるため、発売当初の旧仮名表記で掲載する。

概要

文豪夏目漱石の代表作の一つ。

本作は、明治45年(大正元年)の明治天皇崩御とそれに続く乃木希典陸軍大将の殉死に強い衝撃を受けた漱石が時代の変化により遠からず批判されるであろう「明治の精神」への思いを込めて書き上げた作品であり、作中でもそれがキーワードとなっている。

ちなみにこの小説は漱石自身が岩波書店から自費出費で出したもので、これが事実上岩波書店最初の本である。

物語は語り部の『私』と『先生』、『私』と『私の両親』、『先生』が『私』に遺した遺書と過去の三部構成になっている。

あらすじ

主人公の『私』は、夏休みに訪れた鎌倉で出逢った一人の男を『先生』と呼んで慕っていた。奥さんと二人でひっそりと暮らしている『先生』は毎月友人の墓参りを欠かさず、『私』にも何度も謎めいた、そして教訓めいた言葉をかけ気遣ってくれた。そんな不思議な魅力を持つ『先生』の元へ、『私』は東京へ戻ってもなお頻繁に出入りしていた。

ある日、父親の容態悪化の知らせが届き、急遽帰省を余儀なくされた『私』は、発つ前日に『先生』の家へ挨拶に訪れる。そこで『先生』は「私は貴方に慕われる様な人柄ではない」「私は過去に取り返しのつかない事をしてしまった最低な人間なのだ」と嘆いた。『私』は『先生』に過去を打ち明けるように迫るが、『先生』は来るべき時に過去を話すことを約束し、そのまま『先生』とはそれきりとなった。

そしてある日、父親の看病に明け暮れる『私』の元へ『先生』から分厚い手紙の束が届いた。その手紙が『先生』の遺書なのだと気付いた私は即座に東京行きの汽車に飛び乗ると、その中で『先生』の手紙を読み始める。

その手紙に書かれていた衝撃の事実────『先生』と先生の『奥さん』、そして亡くなった先生の友人『K』との悲しい物語が綴られていたのであった。

登場人物紹介

前半(現在編)の語り部であり主人公。田舎に両親を持つ学生。夏休みに出逢った『先生』と交流を深める。

性別についてはとくに書かれていないが、近年では男性という見解が多い。

先生

後半(過去編)の語り部であり主人公。『私』が鎌倉で知り合った男性。『私』と同じく東京に住んでいる。

先生と呼ばれているが教務職に就いている訳ではなく、『私』が勝手にそう呼んでいる。実家は新潟。

先生の奥さん。名前は『先生』の呼び名であり、本名なのか略名なのか不明。

過去編では「お嬢さん」と呼ばれている。

静の母

過去編に登場する先生の奥さんのお母さん。戦没軍人の妻。

過去編では「奥さん」と呼ばれている。

K

過去編に登場する『先生』の親友。浄土真宗の僧侶の次男で、本人も数珠を持ち歩いている。

『先生』とは同郷で、同じ大学に通っているが専攻は別。大学には『先生』以外特別親しい人はいない。『先生』の提案で同じ下宿に一緒に住む事になるが・・・

評価

発売以来、日本において最も売れた本であり、発行部数は七百万部を優に超える。

小説の分野でここまで売れている本は、本作以外では太宰治人間失格くらいしかなく、日本の文芸界においての双璧の一つと言える作品である。

奇しくも本作と人間失格はともに、人間不信が故に振り回される主人公や、恋愛を巡っての破滅等、幾つかの共通点を抱えた作品である。

また、文豪・夏目漱石の代表作と言う事もあって国語の教科書に取り入れらることも多い。

反面、内容が理解できない小説としても有名であり、現在でも国語の授業はおろか、ネット上でのレビューにおいても基本的に批判的な意見が多い。

これは盛大なネタバレになるが、本作は作中の登場人物である先生とその友人のKが自殺する作品なのだが、その二人の自殺の理由が理解できないという点にある。

Kも先生も作中でかなり唐突に自殺する上に、その自殺の理由についても明確に語られているわけではなく、余りの急展開ぶりに最初に本作の内容を知った人間はかなり困惑する。

それ故に、何故本作が名作として扱われているのか理解できない人間も多い

一方で、オリエンタルラジオ中田敦彦は、本作に対して「現代の人間には理解できない作品」と評している。

これは、作中の登場人物、特に先生とKは江戸から明治にかけての道徳と倫理にその価値基準を置いている為、明治以降の価値観を持つ人間には登場人物の心理に共感できないというのである。

つまり、単に本作を読むだけではなく、当時の時代背景と価値観を知らないと本作の登場人物の心理を理解できない。特に明治天皇の崩御と乃木希典の殉死は本作において最も影響を与えた事件であり、この事件とそれに対する当時の評価や批判をある程度知らなければ、その行動を理解できないのが、本作の特徴であると評している。

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