ノルウェイの森
のるうぇいのもり
概要
21世紀の文豪、村上春樹の代表作。デビュー時から人気作家として名を馳せていた村上春樹作品の中でも特に人気の高い作品であり、太宰治の人間失格、夏目漱石のこゝろに並ぶ日本文学の巨塔とも言える作品。
2010年には、松山ケンイチ主演で映画化されている。
大まかな内容。
主人公のワタナベは、三十七歳の時にハンブルク空港に到着した飛行機のBGMでビートルズのノルウェイの森を聞き、学生時代のことを回想する。
タイトルについて
本作は、ビートルズの楽曲であるノルウェーの森から取られているが、元々は村上春樹はドビュッシーのピアノ曲である雨の庭からちなんだ雨の中の庭を想定していたが、本書の原稿を読んだ妻を始めとする周囲の人々から「ノルウェイの森の方が良い」と言う後押しを受けて本作のタイトルが決定したと言う背景がある。
評価
『人間失格』、『こゝろ』と並ぶ日本文学の中でも累計発行部数が700万部を超えた作品。ちなみに、本作は1987年に刊行された小説であり、その2年後に平成が始まることから、本作は昭和最後の大ヒット小説と言える。
奇しくも三作品とも、人間不信が故に女性に振り回される男性主人公の、破滅的な恋愛模様を描いた作品と言う共通点がある。
その一方で、作品当時の価値観や風俗、時代背景を描いた作品と言う共通点も持ち合わせている。
具体的には、『こゝろ』では、明治天皇と乃木希典の殉死が、作品の中核に関わる大きな要素として取り上げられ、『人間失格』では、終戦直後の時代背景が色濃く描かれている。
正確には本作は、刊行当時の現代である1980年代後半から更に20年ほど遡った60年代を描いており、主にビートルズの楽曲を始めとして、『グレート・ギャツビー』や『卒業』などの当時人気だった海外の映画や音楽、文学などが多く登場する。
また、『こゝろ』が、明治の終わりと大正の始まりにヒットし、『人間失格』が戦後の始まりにヒットしたように、本作は昭和の末期にヒットした小説という、一時代を象徴する作品としての側面も併せ持っている。