概要
フェアレディZとしては通算6代目のモデルである。先代であるZ33型からはエンジンの排気量を200cc増加させ、ホイールベースを100mm短縮させた。また、排気量が3.7Lとなったため、日本国外においては「370Z」として販売されている。なお、先代のZ33型は世界約100カ国で販売されていたが、このモデルはさらに市場を拡大し、120カ国近くでの販売が予定されている。
メカニズム
パワートレイン
エンジンには、CV36型スカイラインクーペと共通のV6 3.7L VQ37VHR型エンジンが搭載され、マニュアルモード付き7速ATと6速MTが組み合わせられる。
6速MTについてはZ33型と共通の愛知機械工業製FS6R31型トランスミッションを採用したが、フリクションの低減および軽量化が施されており、MTとしては世界初となるシンクロレブコントロールが採用された。また、7速ATはジヤトコ製のJR710E/JR711E型で、インフィニティブランドで販売されるFX50に次いで2番目の採用であり、日産ブランド車、あるいは日本投入車としては最初の7速AT車となった。
ボディ・シャシ
プラットフォームは、Eプラットフォームの中でも、特にCV36型スカイラインクーペのものが基本的なベースとなっている。しかし、スカイラインクーペと共有しているのは前後サイドメンバーやダッシュロアなどのみで、ほとんどが専用に設計されており、ホイールベースが短縮されたために、ボディ後半部分は完全に新設計となった。
Z33型はリアサスペンション周辺の剛性を確保するためにトリプルメンバー構造を採用していたが、重量効率が悪いためにZ34型ではその構造を廃止し、構造の見直しを図った。この構造変更やアルミニウムの採用拡大などにより、エンジン排気量の増加や安全性・車体剛性の向上のために100kgの車重増が見込まれていたにもかかわらず、Z33型と同水準の車両重量を維持することに成功した。加えてねじり剛性を40%、前後曲げ剛性を10%、横曲げ剛性を60%向上させた[2]。また、アルミニウム合金の採用については、Z33型ではボンネットのみへの採用であったが、Z34型ではさらにドアやバックドアにも採用されている。リア周りの剛性確保の結果、先代で問題視されたトランクルームを横切るフレームは廃され、収納面での使い勝手も向上している。
開発は先代Z33型とは異なり、当初からオープンモデルの追加を念頭にして行われたため、ロードスターについては、オープン化による剛性減少を抑えて先代よりねじり剛性を40%向上しつつ、同時に50kg程度の軽量化を果たしている[8]。
また、タイヤについては、「Version NISMO」も含め、全車にブリヂストン製のPOTENZA RE050が採用されている。
2012年7月のマイナーチェンジではショックアブソーバーの減衰力特性を変更したユーロチューンドサスペンションを採用したことでドライバーの意思に素早く反応するスポーティーさと高速走行や荒れた路面での安定性や乗り心地を同時に向上。さらに、「Version ST」とクーペ「Version S」ではブレーキパッドに新開発の摩擦材を採用したことで安定した制動力を維持し、耐フェード性を向上した。
デザイン
Z34型にモデルチェンジするにあたり、フェアレディZのアイデンティティである「ロングノーズ」を表現するためにホイールベースが100mm短縮されることが決定された。ちなみに、フェアレディZのショートホイールベース化は2005年頃にはすでに構想されており、Z33型をショートホイールベース化した実験車がテストされていた。
またロードスターに関しては先代同様ソフトトップが採用されたが、このショートホイールベース化に加えてソフトトップのサイズが長く、そして厚くなり、加えて先代のビニールからより畳みにくい帆布素材に変更されたにもかかわらず、トランク容量が拡大されている。
開発時には北米向けモデルのA35型マキシマも並行して開発されていたが、北米市場においてはZが3ドアスポーツカー、マキシマが5ドアスポーツカーという位置づけで販売されていたため、ブーメラン型の前後ランプなど、共通のデザインも取られている。
デザインに際しては空力性能も考慮され、クーペについてはCd値: 0.30、フロントゼロリフトを達成。リアスポイラー装着でリアゼロリフトも両立し、オプションのエアロキット装着車ではCd値0.29を実現している。また、ロードスターについても風の巻き込みが抑えられてセグメントトップの空力性能を誇る。
また、「FAIRLADY Z」の車名ロゴに関しては、「Z」の書体に新デザインのものが採用され、「FAIRLADY」については先代同様、NE-01を斜体化したものが採用された。なお、この「Z」のロゴはサイドウインカーにも装着されている。
2012年7月のマイナーチェンジではフロントバンパーをロー&ワイドを強調した新デザインに変更し、LEDハイパーデイライトを装着した。
ラインアップ
グレード構成
ベーシックモデルの「フェアレディZ」のほか、BOSEサウンドシステム、本革シートなどの豪華装備を標準装備する「フェアレディZ Version T」、スポーツグレードの「フェアレディZ Version S」、Version TとVersion Sの装備を両立した「フェアレディZ Version ST」の4グレードが用意される。トランスミッションはVersion Tには7速ATのみが、Version Sには6速MTのみが用意され、標準仕様とVersion STは7速ATと6速MTが選択できる。ベーシックモデルとVersion Tには18インチアルミホイール、Version SおよびSTにはレイズ製の19インチ鍛造アルミホイールが装着される。Z33型にも用意されたオープンモデルのロードスターは北米市場には2009年9月に[12]、日本でも2009年10月に投入された。なお、アメリカなど、日本国外の一部市場においては当初Z33型ロードスターを併売している国もあった。日本仕様のグレード体系は「Version S」以外の3グレードが設定されている。クーペとは異なり7速ATと6速MTの両方が選択できるのはVersion STのみで、Version Tは7速AT、標準仕様は6速MTのみとなっている。全車専用デザインのエンケイ製18インチホイールが装着され、19インチホイールが「Version ST」のみにオプション設定されている。また、すべてのグレードにリアフォグランプが標準装備された。
2012年7月のマイナーチェンジではクーペの「Version S」・「Version ST」においてダーククローム色・新デザインの19インチアルミホイールを装備(ロードスターの「Version ST」にはメーカーオプション)し、標準仕様と「Version T」にはロードスター用18インチアルミホイールを採用した。
Version NISMO
2009年6月に追加された「Version NISMO」は、エンジンに専用チューンが施され、標準車の336仏馬力から355仏馬力まで出力が向上されており、専用の補強パーツなどを装備し、剛性の向上と振動の減衰を両立した。また、サスペンションにチューニングが施され、パワーステアリングの特性が変更されたことにより、よりスポーティなハンドリングとなった。そして、専用前後バンパー、サイドシルプロテクター、リアスポイラーなどを装備してCd値は0.30のまま、効果的なダウンフォースの獲得と空気抵抗の低減を両立し、世界トップレベルの空力性能を実現した。トランスミッションは標準仕様やVersion STと同様、7速ATと6速MTどちらも選択可。
北米では「Version NISMO」にあたるモデルの「NISMO 370Z」が2009年モデルとして2009年6月に米国で先行発売された。なお、6速MTのみの設定となっている。ちなみに、少数生産のコンプリートカーが米国に輸出されるのは、先代の「NISMO 350Z」、「cube Krōm」に次いで3車種目となった。
2012年7月のマイナーチェンジではエンジンのコンピューターチューニングの見直しにより中速域のトルクアップを図り、タイヤに最高峰のグリップ性能を誇るブリヂストン製のPOTENZA RE-11を採用。併せてボディの補剛パーツの追加、ブッシュの硬度見直し、入念なサスペンションチューニングを行った。ブレーキもブレーキホースとブレーキフルードの変更も行い、ブレーキフィーリングの向上を図った。これらによりコーナリング性能の向上を果たし、運転の楽しさと抜群の安定性を実現した。
特別仕様車
40th Anniversary/Black Edition
「40th Anniversary」は2009年10月にロードスターと同時発売。フェアレディZ誕生40周年記念特別仕様車として設定された。翌2010年10月までの期間限定車。クーペ「Version ST」をベースに、記念刻印付き専用シート・インテリア、リアエンブレムのほか、専用レイズ製アルミ鍛造ホイール、ブレーキキャリパーが装備された。なお、北米仕様車の「370Z」には2010年2月に「40th Anniversary」が1,000台限定で発売されるが、MT車のみに設定される。また、欧州仕様車にも同月に「ブラックエディション」の名称で370台限定で発売されたが、欧州仕様車にはAT車も用意された。
370Zイエロー/370Zニュルブルクリンクエディション
「370Zイエロー」は英国で、「370Zニュルブルクリンクエディション」ドイツで発売された特別仕様車。専用ボディカラーのアルティメットイエローが採用され、ボディサイドにはブラックの車名デカールが装着される。なお、このモデルはGT4欧州選手権をモチーフとしている。また、「370Zニュルブルクリンクエディション」には専用の19インチホイールなども装着される。
モータースポーツ
2010年にはスーパー耐久にシーズン途中の第2戦からZ34が参戦を開始した。なお本来Z34はスーパー耐久のレギュレーション上はST1クラスに該当するが、主催者側の特認によりウエイトハンデを乗せることで、従来のZ33同様ST3クラスへの参戦を認められている。
また、米国においては「NISMO 370Z」をベースとした「BRE 370Z」が2010年下旬にSCCA (Sports Car Club of America) のT2クラスに参戦する予定となっている]。
歴史
2008年12月1日
日本国内で発売。
2009年1月3日
北米市場で「370Z」として発売。
2009年6月17日
北米市場で「NISMO 370Z」が発売。
2009年6月22日
コンプリートカスタムカー、「フェアレディZ Version NISMO」の販売を開始。
2009年9月
欧州仕様特別仕様車「370Zイエロー」、「370Zニュルブルクリンクエディション」が発売。
2009年10月15日
日本国内でロードスターを追加。
同日、インテリジェントキーのロゴを日産CIから「Z」に変更するなどクーペを一部改良。
また特別仕様車「40th Anniversary」も発売。
2010年2月4日
欧州市場で特別仕様車「Black Edition」が発売。
2010年2月末
北米仕様「40th Anniversary」が発売。
2010年11月9日
一部仕様向上。
2012年7月18日
マイナーチェンジ。
受賞
2009年
あなたが選ぶカー・オブ・ザ・イヤー「スポーツカー・オブ・ザ・イヤー」
日本カー・オブ・ザ・イヤー「Most Fun」
グッドデザイン賞
2010年
「オートカラーアウォード2010」
グランプリ
エクステリア部門賞
ケリーブルーブック「ベストリセールバリュー賞」
モーターウィーク ドライバーズ・チョイス・アワード「ベストコンバーチブル」(ロードスター)
2012年
「オートカラーアウォード2013」
文化学園大学セレクション(外装色プレミアムサンフレアオレンジ・内装色パーシモンオレンジ)