歴史
第一世代 VAIO
日本におけるVAIOの一号機は、1997年7月にタワー型のデスクトップPC「バイオマイクロタワーPCV-T700MR」である。1996年に米国において先行発売されている。 単体でも高価格なデバイスであったビデオキャプチャMPEG-1デコーダとCD-Rドライブを搭載し、ビデオ入力端子によるアナログキャプチャとビデオCDの作成が可能であった。当時のPCでは最高レベルのスペックを搭載しており、販売価格は40万円前後であった。
1997年11月に発売された初代VAIO NOTE 505(PCG-505)は、筐体を銀色と薄紫色の二色で塗り分けた、薄型のB5サイズモバイルノートであった。VAIO NOTE 505が最初の薄型ノートだと思われがちだが、1995年に発売された、DEC(現:ヒューレット・パッカード)のDigital HiNote Ultraの方が早い。
当時のPCのボディカラーは白もしくは黒・グレー系で占められていたが、VAIOでは意図的にバイオレット(紫色)を用いた。理由には、「バイオ」という愛称の語感を"violet"と関連付けて名前と製品の特徴を覚えてもらうことと、基本機能では差別化が困難だったPC市場において、売り場で目立つようにすることが狙いだったともいわれている。 「デザインで差別化する」という手法で成功したことは、他社の製品にも影響を与え、それまでは「傷が目立つ」「コストが高くなる」(傷が目立つが故に傷がつきにくい強度の確保が必要)といった理由で地味な色使いが多かったノートパソコンのデザイントレンドに変化をもたらし、いわゆる「銀パソ」が広まるきっかけとなった。
なお、ノートパソコンにおいてソニーは「バイオノート [VAIONOTE]」と「バイオ [VAIO]」とでは区別して称していた。バイオノートとする場合は通常のノートパソコンとして使用することを想定し、バイオとする場合は「カタチにとらわれない使い方を」としていた。
その後のバイオノートC1(1998年)やUシリーズ・type U(2002年-2008年)、type P(2009年)はその小型さが、バイオMX・バイオノートGT・NVシリーズ(2000年-2002年)は、今まで無かったPCの利用法をそれぞれ実験的に提案するエポックメイキングとなった。同程度のスペックを備えた他社製PCよりも高価格であっても好んで用いるユーザーもおり、中古品の流通も盛んである。 デスクトップ製品ではAV機器としての機能を追求し、iLINK端子の搭載によるDVビデオカメラの動画編集や、1999年にマイクロタワー系統の「バイオR」で本格的なテレビチューナキャプチャーボードと操作ソフトのGiga Pocketを搭載し、いち早くビデオパソコンとして売り出した。一方、高価格の要因であるビデオキャプチャやスペックを落としたエントリーモデルの「VAIO J」や、液晶ディスプレイを用いて省スペース化を図った「VAIO L」を発売している。その一方Microsoft Officeをプレインストールしないモデルが他社に比べて多く、Office搭載モデルはミドルレンジ機に多かった。
2002年にはノートPCのパーツを用いた薄型の液晶・本体・キーボード一体型のデスクトップPC「VAIO W」を発売し、持ち運びできるデスクトップPCを提案した。
製品型番はデスクトップ製品がPCV-、ノートブック製品がPCG-であった。
第二世代 VAIO
2004年5月(夏モデル発表時)、ソニーはVAIOというブランドの第一段階は終えたとして、それまでの「まず目的があって、それをVAIOを用いて達成する」という位置づけから「様々な目的のためにVAIO自身が変化していく、VAIOする」というコンセプトへ変えた。これが、第二世代「Do VAIO」である。
第二世代の製品の特徴としてはまずイメージカラーの変更が挙げられる。バイオのイメージとしてはバイオレットシルバーが基調であったが、この製品群のテーマカラーは黒である。それと同時に、今まで分散して搭載されていたテレビ視聴やDVD再生などのソフトウェアは、その各機能をまとめたアプリケーションとなり、Do VAIOとして搭載された。モデルのシリーズ名としてそれまでの「バイオXX」から「type XX」に変更され、製品型番はデスクトップ製品がVGC-、ノートブック製品がVGN-へと一新されている。
前世代末期の2004年春モデル(1月発売)とはラインナップに大きな変化が見受けられた。デスクトップマシンでは、本体液晶一体型のアナログテレビチューナー搭載のテレビパソコンとして使えるtype V、バイオWの実質的な後継機種のtype M、ハイスペックな本体液晶一体型モデルのtype R、デジタルチューナ内蔵によるテレビ番組の長時間連続録画機能に重点を置き、ハイビジョンテレビとの接続にも対応としたtype Xなどが順次発売。ノートブックマシンでは、バイオノート505 EXTRIMEの後継モデルとして、液晶天板に東レ製のカーボンを用いるなどして同機種よりもさらに軽量化(約780グラム)を実現したtype 505 EXTRIMEシリーズ(後にアップルが着目しMacBook Airへ繋がったとされる[要検証])や、type Rをノートマシン化させたようにも見える高スペックなB4サイズのtype A、バイオTRを継承したB5ワイド液晶のtype Tや、Tのエントリーモデルとされたtype Eなどが発売された。また、それまではホームユーザーを主な利用層としていたVAIOを、法人分野の業務用途に向けてカスタマイズされたモデルの展開が開始された。
2005年には、当時のデルがBTO方式で勢力を伸ばしていたのと同等に、ソニースタイルを利用する直販あるいは一部の家電量販店に置いたリアルサイト双方からCTOによる受注生産で販売を行う「VAIOオーナーメイド」の取り扱いを日本の大手メーカーとして初めて開始した。またこの頃から、VAIO事業部門の再構築に伴い、オーナーメイドモデルと市販品の内ハイエンドシリーズ機種の製造およびVAIO製品群の開発拠点は長野県安曇野市にあるソニーイーエムシーエス社長野テックに置かれるようになり、市販モデルのハイエンドではない機種は、台湾の鴻海精密工業の中国にある工場でEMS製造されるようになる。これより、市販モデルは1つのシリーズに対してMicrosoft Officeがプリインストールされた単一製品のみの発売が多くなった。
2006年にはIntel Coreプロセッサーを搭載した新系統モデルが発表され、2つのGPUを用途に応じて切り替え可能なハイブリッドグラフィックス機能とExpressCardスロットをVAIOで初めて搭載したパワーユーザー向けのtype Sと、マグネシウム合金を用いて軽量化したtype SZ、ワンセグチューナーを搭載し、本体HDDに録画も可能なtype Tなどが発売された。これらはオーナーメイドモデルに限って液晶天板をtype505 EXTRIMEよりも材質が進化したプレミアムカーボンによるものが選択できる。HDV方式で撮影・録画された動画編集にも耐えうるハイスペックを誇るセパレート(本体・ディスプレイ分離)型のデスクトップマシンtype R masterは、ディスプレイ同梱版で実売価格40万円程度と、前代のマイクロタワーやRX並の高価格モデルとして売り出された。
同年年の夏・秋冬モデルはIntel Core 2プロセッサーが登場し、2007年春モデルはWindows Vistaへの更新に伴いラインナップが短サイクルで一新されたが、type Tと同等の性能を文庫本大サイズで実現するとともに、指紋認証やBluetooth・無線LANを搭載し、SSDドライブでのゼロスピンドル化にも対応した(オーナーメイドの場合)type Uが注目を浴びた。他にもLet's noteに対抗した軽量で丈夫なビジネスモバイルマシンとしてtype Gが発売されている。
第二世代VAIOのCPUはほぼインテル製で、AMD製は2004年発売機種で極稀にしか存在しない。
第3世代 VAIO
2007年5月16日の決算発表会で、PC用ディスプレイと標準型デスクトップの終息が発表された。今後は付加価値があり差別化が図れるtype R Masterやtype X Living、もしくはTV side PC TP1(以上生産終了済)、フルハイビジョン映像の編集や高解像度画像のフォトレタッチに耐えうるハイスペックなCPU(Intel Core 2)・GPUに大型ワイド液晶を搭載したノートタイプのtype Aとtype F、かつてのtype VやバイオWの本体液晶一体型のテレパソを継承しつつも「ボードPC」として一定の可搬性を持たせたtype LなどのAV志向の強い製品に注力していった。実際に、第二世代VAIOでの中心コンセプトとされた「Do VAIO」はなくなるなど、第二世代VAIOとは違った展開を見せている。
2007年5月17日には、VAIO国内販売10周年記念としてtype Tの新型で、VGN-TXの後継となるVGN-TZ系統の製品が発表。2008年秋モデルではそれまでメインストリーム的なモバイルノートであったtype SZが終息し、北米市場で先行発表されていたtype Zが発売された。
2008年に廉価なネットブックで海外メーカーが隆起すると、価格崩壊を懸念したため同分野の機種発売には消極的であると報じられていた時期もあったが、2009年1月に一般的なネットブックより小型かつ高解像度でIntel Atomプロセッサーを用いた「type P」を発表。それまでのtype Uシリーズよりも大幅に廉価な10万円以下の実勢価格で売り出された。同シリーズは『ポケットスタイルPC』と提唱し、ジーパンの尻ポケットに本体を差し込んで歩く広告が制作されている。さらに、他社のネットブックと同程度のスペックながらVAIOソフトウェアを搭載したエントリーユーザー向けの「VAIOネットブック『Wシリーズ』」が8月に発売。10月のWindows 7の発売時期には「type 505 EXTRIME」や「type P」を凌ぐ薄さと長時間稼働を10万円前後の実勢価格で実現した「VAIO Xシリーズ」が発売された。これらモデルより、シリーズ名称が「type XX」から「XXシリーズ」となる。また、一部のシリーズから品番が新しくなり、ボードPC・ノートPCを問わずすべて"VPC"から始まり、ハイフンがなくなった。
2010年1月発売の春モデルより、シリーズ名が「XXシリーズ」となる。新系統のモデルとして、NシリーズとFシリーズの中間レベルのB4ワイドノート「Eシリーズ」と、Sシリーズとほぼ同等の外観ながら光学ドライブを省いて(1スピンドル)省電力化を徹底した「Yシリーズ」、先代のtype Zのスペックをより昇華した「Zシリーズ」が注目されている。この春モデルでの店舗市販用のSシリーズ機種(VAIOオーダーメイドモデルは除く)については、EMS (製造業)によって中国で製造されたにも関わらず、本体銘板部分のステッカーには原産国表示を事実と異なる「MADE IN JAPAN」としていた(正しくは「MADE IN CHINA」)[3]。
2010年7月発売の夏モデルでは「Eシリーズ」のEE系列においてAMD Athlon II デュアルコアプロセッサを搭載。VAIOがAMD社製のCPUを搭載するのは第3世代では初、歴代世代においても数年ぶりの採用となった。
2012年6月発売の夏モデルより品番が一新され、「Jシリーズ」を除く全モデルで"SV"から始まるようになった。また、VAIO初のUltrabookである「Tシリーズ」が新設された。「Tシリーズ」自体は2010年春の販売終了以来、約2年ぶりに復活した。
アプリケーション
PictureGear
初期のシリーズにプリインストールされていた静止画・動画・音声といったマルチメディアファイルのブラウズをするソフト。画像のサイズおよびフォーマット変換、レタッチなどが可能だったが、その後登場した圧縮動画データやRAW形式の画像ファイルに対応できなかったことから、現在は静止画のみに機能を絞り、アルバム機能をメインに据えたPictureGear Studioへとバージョンアップをしている。Windows Vista搭載機種にはWindows フォトギャラリー、もしくは、Google Picasaが搭載されているため、PictureGear Studioはプリインストールされていない。
Giga Pocket
Giga Pocketはテレビ視聴または録画対応モデルにプリインストールされている、テレビ視聴・録画用ソフトである。また、内蔵の専用チューナーカードとも連携している。付属のテレビリモコンと連動しているため、リモコンからテレビの基本操作や録画ファイルの視聴、また本体のスタンバイを行える(休止状態への移行は不可)。V3.0以前のものは録画形式が特殊であり、使いまわしが難しかったが、最近ではMPEG1・2形式で保存・出力されるようになり、他社ソフトとの親和性は大きく改善されている。
VAIO Media
PC上にある静止画・楽曲(著作権保護の楽曲は一部制限あり)・動画を他のパソコンから視聴するソフトで、Do VAIOの前身となったソフトでもある。DLNAに対応している。ソフトにはサーバー・クライアントが存在し、サーバー上にある画像などを視聴できる。またサーバー用ソフトがインストールされたPCが存在しなければ意味がないが、逆に、サーバー・クライアントが同一PCであっても使用できる。またクライアント用ソフトは他社PC上でも保証対象外であるものの使用できる。
PictureGear・SonicStage・Giga Pocketに静止画・楽曲・動画を登録する必要がある(動画についてはサーバー上にGiga Pocketが存在することが条件)が、最近では登録せず、公開するフォルダを指定するだけで視聴できる。Giga Pocketについては録画番組だけでなく放送中の番組を視聴できる機種もある。UPnP対応ルータを経由することで外出先からも視聴できる。2008年から登場した「VAIO Media Plus」はDTCP-IP対応で、DLNAサーバーを搭載したDVDレコーダー、BDレコーダーに録画している番組を視聴することが可能になった。
Do VAIO
Do VAIOは、VAIO専用の10フィートGUIである。その概要は、専用リモコンにより誰でも手軽に未来的なインターフェース上でテレビ・DVD・音楽・フォトなどを視聴できるマルチメディア統合ソフトである。Windows Vista Home Premium、及び、Windows Vista Ultimate搭載機種にはDo VAIOと同じく10フィートGUIのWindows Media Centerが標準搭載されているため、2007年春モデル以降の製品にはWindows Media Centerを搭載しないWindows Vista Home BasicやWindows Vista BusinessにもDo VAIOはプリインストールされていない。
VAIOオーナーメード
ソニーは2005年より、直販サイト「ソニースタイル」や一部の量販店での出張カウンターでオーダーメイド (Built To Order, BTO) での注文を受け付けるようになった。ソニーではこのサービスをVAIO・OWNER・MADE(VAIOオーナーメード)と呼んでいる。CPUやメモリ、ハードディスクドライブなどといったハードウェア仕様から、プリインストールされるソフトウェア、その他周辺機器など自由にカスタマイズできる。また、type Sのプレミアムバージョンやtype Uのゼロスピンドルモデルなどのオーナーメイド限定の製品や構成もある。オーナーメード製品にはメーカーから購入者に宛てた事業本部長の署名入りのメッセージカードが同梱されている
ラインナップ
現在の第3世代VAIOに共通する、他社製品と異なる特徴として次のようなものがある。
AVエクスペリエンスの重視
ソニーは元々業務用機器に強いメーカーではあるが(放送分野等)、ベーシックな性能のみが求められコスト競争も厳しいビジネスPCには消極的だった。近年Let's noteのようなPCがビジネスPCの中でシェアを伸ばしたこともあり、現在は後述のようにtype BZやtype Gといったビジネス型をラインアップしている。 なお、大手の中にはIBM(現レノボ)のようにビジネス向けモデル偏重の戦略を採るメーカーもある。
自社規格メモリースティックスロットの搭載
特徴的な外見
誰でも一見してVAIOとわかるように大きくロゴをあしらわれてはいるが、ほとんどのモデルはデザイン自体も特殊なものが採用される。デスクトップではボードPCのtype L/type R/type J、円柱型のTP1、ノートでは薄型のtype T等、大手メーカーのPCとしては異端的なデザインを採用することが多い。