- マトリックスとは、ウィリアム・ギブスンの代表作『ニューロマンサー』を始めとしたサイバーパンクの世界において、コンピューター・ネットワーク上のサイバースペース(電脳空間)に築かれた「仮想現実空間」を指す。
- 『マトリックス』(The Matrix)は1999年公開のアメリカ映画、および同シリ-ズの総称。監督はラリー&アンディ・ウォシャウスキー。
2.映画『マトリックス』のストーリーの解説と結末について
※ネタばれ。
かつて人類はA.I(人工知能)を持つマシンを作り出し、その文明の繁栄は頂点を極めた。
やがてマシンは残虐で傲慢な人間に対し反抗するようになった。
ついに人類とマシンの戦争が始まり、人類はマシンのエネルギー源である太陽を遮断するために空を暗雲で覆い、地球を暗黒の世界へと変えた。
しかし、最終的にマシンが戦争に勝利した。
太陽を失ったマシンが新たなエネルギー源として着目したのが、人間の生体エネルギーだった。
マシンはそのエネルギー源を搾取するために、生き残った人間を捕え、カプセルの中に閉じ込めて培養するようになった。
人間は計画的に交配されて誕生し、死ぬと溶解され、生きている人間の養分となる。
そして効率良くエネルギーを得るためには、人間の意識を健全に保つ必要があった。
そこで人間を仮想現実空間マトリックスに接続し、あたかも現実世界で生きている様な感覚を与えることにした。
マトリックスを作ったのは、アーキテクト(設計者)というプログラムで、人々は苦痛も不安もない完璧に設計された理想郷で幸せに暮らすはずだった。
しかし、その初代マトリックスは、人間が本来持っている不完全さが完全な世界を受け入れることが出来ず崩壊してしまった。
そこでアーキテクトは今までの人類の歴史を学び直し、人間のグロテスクさや無秩序な側面を反映した不完全な世界を作った。
しかし、不完全性を加えて設計し直したマトリックスでさえも、人々には受け入れられずやがて崩壊を迎えた。
アーキテクトはこの事態を解決できず悩んだが、偶然にもオラクル(預言者)というプログラムが「人間に選択という行動を与えると、プログラムを受け入れる」ということを発見した。
この解決法により、99%の人間がマトリックスを受け入れるようになった。
オラクルは本来人間の心理を探索するためのプログラムだったが、この発見によりマトリックスの寿命を延ばすことに成功した。
しかし更なる問題が発生した。
この解決法は、その特性からプログラムを受け入れられない人間=アノマリーが発生してしまう。
それはわずか1%に過ぎなかったが、彼らを放置すれば再びマトリックスの崩壊を招くことは明らかだった。
そこでマトリックスから放逐された人間を集め、管理すればよいと考えた。
そして誕生したのがアノマリーとその子孫からなる人間の都市ザイオンである。
その勢力が強くなればなるほどマトリックスへの危険性は高まって行くが、通常はエージェントというマトリックスの不正を処理するプログラムがアノマリーに対応することが出来た。
マトリックスの規則に捕らわれないアノマリーは、空を飛んだり、弾丸を回避するなどの能力を発揮するが、通常はエージェントの能力に勝ることはない。
ところが、アノマリーが一定以上蓄積されると、ある期間の間偶然に特殊な例外が発生する。
それがマトリックスや現実世界に影響力を持つ存在、The ONE=救世主である。
ネオはマトリックスから目覚めた普遍的なアノマリーで、エージェントによって殺されてしまうが、トリニティーのキスがきっかけとなって救世主として蘇った。
救世主の役割は、自分自身の救世主プログラムコードをマトリックスのソースに返還することである。
この役割を果たすと、マトリックスはリロードし、マトリックス内のアノマリーすらもシステムに組み込んだ新しいバージョンへとバージョンアップする。
その時マトリックス外のアノマリーの蓄積であるザイオンを一度リセット(滅ぼす)しなければならないため、救世主は生き残って、マトリックスに接続されている人間から女16人、男7人を選び出し、彼らと共にザイオンを再建する必要があった。
救世主がこの役割を受け入れなければ、マトリックスはシステムクラッシュし、マトリックスに接続されている全ての人間は死んでしまう。
ザイオンも滅ぼされてしまうので、最終的に全人類が絶滅することを意味する。
このバージョンアップは過去に何度も行われており、救世主の発現回数で数えるとネオで6回目である。
救世主はオラクルの導きによりアーキテクトの待つ部屋へ案内され、ソースへ続くドアを選ぶか、何もせずマトリックスへ戻るドアを選ぶか、選択を迫られる。
救世主は本来自分以外の人間を愛し、全人類に対して深い愛情を抱くように特性を与えられているため、ソースへ続くドアを選び、マトリックスをリロードし、ザイオンを再建する道を選んできた。
しかしその選択ではザイオンの人間を犠牲にマトリックスのバージョンが上がるだけで、マシンと人類の対立は解消しない。
オラクルの望みはそのアーキテクトのバランスのとれた方程式を乱すこと、マシンと人類両者の恒久的な平和だった。
オラクルはネオを導くが、ネオは今までのような選択をしないことを信じ、戦争を終わらせるためには、救世主がマシン側に直接交渉しなければならないと考えた。
ネオは5人の前任者と同じように自分以外の人間を愛する特性を与えられていたが、ネオが深い愛情を抱いたのは全人類という大きな存在ではなく、もっと特別な存在、トリニティーだった。
ネオはマトリックスへ戻るドアを選び、トリニティーを救う道を選んだ。
オラクルがネオに直接交渉させるために使った材料はスミスだった。
スミスは、もともとネオを殺したエージェントだったが、救世主となったネオとの戦いでネオの持つ救世主プログラムコードが転写し、救世主と対極の存在になった。
自分を上書きする能力を手に入れ、マトリックスの存続や人間の存在自体も否定し、全てを自己の制御下におくことを目論むようになった。
オラクルはネオを導いたのと同様にスミスも導き、自身を上書きさせて更に強大な力を手に入れさせた。
ネオはマシンシティーの中枢部に行き、マトリックスとザイオンにとって脅威となったスミスを倒す代わりに、マシン側にザイオンへの攻撃を止めるように持ちかける。
マシン側はこの提案を承諾し、ネオとスミスは戦うが、ほぼ互角でなかなか決着がつかなかった。
ついにスミスがネオを上書きして乗っ取るが、対極の存在であるネオとスミスは互いに打ち消しあって消失し、オラクルをはじめとしてスミスに乗っ取られていたプログラムや人間が再び復活した。
マシン側は約束通りザイオンへの攻撃を取り止めて、センチネルは撤退していった。
ネオの救世主プログラムコードはソースに還り、マトリックスはリロードされ、全く新しい形でバージョンアップを遂げた。
そして、アーキテクトは人間がマトリックスから「出て行く」か「残る」を選択出来る自由を与え、人間が壊さない限り続く平和が訪れた。
主な登場人物
※茶化しています。
ネオ Neo
主人公。
アメリカ、イリノイ州シカゴで働く会社員トーマス・A・アンダーソンのもう一つの顔。
あらゆるネット犯罪に手を染めるハッカーだが、毎晩遅くまでインターネットをしているので、会社に遅刻ばかりしている。
マトリックスから目覚めモーフィアスら率いるレジスタンスに加わる。
トリニティーのキスでマトリックスの救世主となり超人的な能力を手に入れるが、基本的に頼りない性格。
トリニティー Trinity
ネブカドネザル号のクルー。ネオ最愛の人。
会社で役職でいうと、一番上のポストではないが、影で実権を握っている怖いがいざというときに頼れるお局様。
逆らうと銃を突きつけられてしまうので、彼女だけには逆らってはならない。
モーフィアス Morpheus
ザイオンに属する工作船ホバークラフト、ネブカドネザル号の船長。ブルース・リーオタク。
救世主を見つけ出し、人類を救済するという使命に燃え、張り切ってバリバリ働いていたが、
その目標を失った途端、ショボ~ンとなって小さくなってしまった姿は失職したお父さんのようである。
その姿に「貴方にはまだまだやることがあるわ」と昔別れた女にうまいこと言われ、こき使われる羽目になっている。
スミス Smith
プログラム。ネオの宿敵であり、対極の存在。
自分自身をコピーする能力を手に入れ、全てを自分で埋め尽くそうとする元エージェント。
人間嫌いな割には色々研究しており、登場人物中最も人間的な欲求を見せる。
救世主になって皆にチヤホヤされているネオをアンダーソン君と呼ぶことによって、
駄目サラリーマン時代を思い起こさせようとするという嫌味も忘れない。