CV：郷田ほづみ
人物
漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』に登場するキャラクター。
原作では41巻収録「両津刑事！の巻」、アニメ版では第122話「新米刑事、両津！」に登場した敏腕刑事。刑事課に配属された両津勘吉の一時的な上司。
両津に刑事時代があったことを知り興味津々の中川と麗子に大原部長が回想する話の中で登場した(両津はこの時後述する理由で席を外していた)。
ぶっきらぼうな性格だが、部下思いで両津からも慕われていた。テレビドラマの影響で刑事に憧れを抱いている両津を諭したり、気の遠くなる聞き込みや張り込み捜査も怠らないなど、刑事という職業に誇りを持っている。
聞き込みばかりの日々に両津がうんざりする中、追い続けていた容疑者・太田黒の部下を見つけ両津に応援の連絡を頼むが両津は間違えて消防に掛けてしまい取り逃がしてしまう。
再び張り込みを行っていた中、遂に太田黒と遭遇する。
逮捕されることに逆上した太田黒の部下は、南部を狙撃してしまう。
瀕死の重傷となった南部は、両津に檄を飛ばして犯人逮捕を優先するよう促す。
南部を撃たれた事に怒り心頭の両津は太田黒とその部下を肉弾戦で倒し全員逮捕。
しかし、南部の傷は致命傷で事件から二日後に殉職してしまった。
その後、理由を明かさず両津の希望で派出所勤務に戻って来たとの事だが大原部長曰く「投げた手榴弾が投げ返された気分」らしく、回想後に自転車を壊し出勤した上に新車を要求する両津を見て「南部さんの代わりに両津が死んでくれた方がどれだけ世の為になったか分からんよ」と嫌味を嘆いて話は締め括られた。
こち亀の中で数少ない、作中で事故や事件で明確に死亡したキャラの一人であり（他には加藤松吉など）、こち亀屈指のシリアス回を担った。両津にとって旧友の村瀬賢治と並び、大きな影響を与えた存在。現在でも命日には必ず墓参りへ訪れるなど、死んでもなお両津から慕われている。
なお、原作ではこの話時点での現在から20年前に起きた事件だと明言されており序盤の墓参りのシーンで両津は「とうとう南部さんと同い年になっちまったよ」と明かしている。
アニメ版
アニメでは本筋こそ同じだが、南部には太田黒により殺害された婚約者がいた設定が追加された。
また、アニメ版では回想を聞くメンバーに寺井が追加されており、回想に入るまでの流れも原作31巻収録「思い出写真の巻」をベースにしており派出所で大掃除をしている時に寺井が棚の上段に乗っている段ボールを抱えようとして転倒、その中に入っていた派出所の昔の写真を皆で鑑賞していて刑事時代の両津の写っている写真を見つけそこから入る形になっている(両津も大掃除に参加する筈だったがなかなか来ないので大原は痺れを切らしていた)。
この為、両津が派出所に配属直後の話は「思い出写真の巻」をベースにしつつ「両津刑事！の巻」で語られた刑事時代の話へ繋がる様に統合がなされている。
原作で太田黒の部下をミスで取り逃がした場面は太田黒本人になり、追跡中に両津が中学時代の同級生に偶然再会して思い出話に花が咲いてしまった事により太田黒を取り逃がしてしまう。やむなく署に戻って謝罪・報告するが、激怒した南部は両津を殴り飛ばす。
当初は拗ねていた両津だったが、その場に居合わせていた先輩刑事から南部の婚約者が大田黒に殺害された過去があり、余計なプレッシャーをかけないように両津ら若いメンバーに黙っていたことを聞かされ、屋上にいる南部を見つけて涙ながらに謝罪する。南部も殴った事を謝り、場はどうにか収まった。
その後、原作と同じく大田黒のアジトで彼を発見するが両津に応援を呼ばせ南部は一人で張り込みを続ける(ここで両津が電話をかけようとするが10円玉がなく、近くの通行人を使って10円玉を出すように詰め寄ったが、それをたまたま見つけた大原が「110番通報は10円玉がなくてもできる」事を教え、応援を呼びにいく流れになった)。
両津も戻ってきて逮捕に踏み切ろうとしたところで南部は原作同様の流れで狙撃され致命傷を負ってしまう。
涙ながらに心配する両津に犯人逮捕を後押しし逃走する大田黒を追わせる。
その後、両津の執念の力で逮捕に成功するが両津と再会する前に南部が殉職してしまった。
現場に戻り同じく現場に来ていた大原に南部の事を聞いた両津は絶句するが、大原は「自分がもっと早く応援を呼んでいれば…」と両津を責めるような事は言わず、自分の至らなさを悔やんでいた。南部との日々や自分が20歳の誕生日を迎えたら朝まで飲み明かす約束を思い返した両津は、泣き崩れる事しか出来なかった…。
後日、大原がいつものように公園前派出所に出勤すると、真面目に掃き掃除をしている両津の姿があった。驚く大原を前に、「自分が警察官として何も分かっていなかった」と交番勤務を馬鹿にした考えを改め、元の公園前派出所への異動を申し出て、受理された。
両津の成長を感じ取った大原と当時の班長だった岩田部長は「もう一度働かせてください！！」と頭を下げて頼み込む彼の熱意を受け入れ今日に至った。
ただし、大原曰く「もっとも、すぐにいつもの両津に戻ったがな」と言うように暫くして元の破天荒な両津に逆戻りした様子。
それらの昔話を聞かされた中川、麗子、寺井は、両津の悲しい過去に思わず心を打たれてしまう。
だが話を聞いていた中川は今日がその南部の命日だと察し、それを聞いた大原も両津が居ないのは南部の墓参りに行っているからと確信。
場面は墓地に切り替わり、南部の墓参りに来た両津の台詞で話は締め括られた。
「あの日もこんな天気だったよな、南部さん。わしの方は相変わらずバカやってるよ。まだまだ南部さんみたいにはなれそうにないぜ。今日はわしの奢りだ、とことん呑みましょうや！」
この様に、アニメ版では原作をなぞりつつもエピソードの統合やアニメ独自の設定を追加した事によってより感情移入しやすくなり、両津が派出所に戻って来た理由も明確になった。
これにより大原が原作のような嫌味を言うシーンも無くなっている。
余談
アニメ版で南部の声優を担当した郷田ほづみは、同作でドルフィン刑事役として準レギュラー出演している赤星昇一郎とはかつて同じ劇団に所属していた同僚かつ「怪物ランド」というお笑いトリオのメンバー同士（あと一人は平光琢也）であり、作中でキャラクター同士の共演は無かったが昔馴染みが同番組に出演した形になった。
アニメ版に於ける南部刑事のエピソードは、試験的ではあるが同作のレギュラー放送版では初めてデジタル製作されたエピソードであり、その後の第145話と第146話でもデジタル製作された上で第149話から完全にデジタル製作に移行した（デジタル製作移行後でもTVSP第8作のみ従来通りのセル画製作だった）。
