概要
主人公の少年がひょんなことから女装して芸能活動をする羽目になるのが特徴で、小学館の学年誌に1年間ずつ計7作品が連載された。
また、番外編として幼なじみに女装少年がいる少女を主人公とする1作品があり、こちらは『ちゃおデラックス』にシリーズ掲載された。
掲載誌にあわせて、主人公などの主要キャラクターは小学5年生または6年生となっている。
クラスメイトの女の子や芸能界で出会う女の子などが登場し、芸能活動の進展と並行して彼女らとのラブコメが描かれることが多い。
男の子の主人公が女の子になりきるというストーリーなので、男女のからだや心の違い、それぞれに特有の経験などにしばしばスポットライトが当たる。
小学生がそうした男女の違いを意識することで性に目覚めていく描写は、作者の次のヒット作である「ないしょのつぼみ」シリーズにも受け継がれている。
シリーズ作品
少女少年
シリーズ第1作。主人公は小学6年生の男子、水城晶。美少女アイドル・青野るりの大ファンで、アイドル嫌いのクラスメイト・赤沢智恵子とはいつもケンカしている。智恵子は晶に「もしワガママじゃない芸能人がいたら裸で逆立ちして校内一周する」とまで言い切った。
ある日、晶が姉の薦めで女装させられカラオケをしていたところ、その歌唱力や可愛さを評価され、芸能事務所のマネージャー・村崎ツトムにスカウトされる。アイドルになればるりとも会えるという甘い言葉に軽い気持ちで乗っかり、晶は白川みずきという名前で女の子としてデビューすることになった。
まもなく、みずきはエキストラとしてるりと共演する機会を掴むが、その撮影で失敗を重ねてしまう。落ち込むみずきだったが、るりも本当はやりたくない仕事を親に無理やりやらされていることを知り、二人は心を通わせる。結局、みずきは本当は男であることをるりに知られてしまうが、るりは秘密を守ると約束し、みずきには本物の才能があると言って励ます。これ以降、晶とるりは仲を深め、それに伴ってるりも本来の明るさを取り戻していった。
その後、みずきはCDデビューを果たし、トップアイドルへの道を歩みはじめる。しかし、これを面白く思わないもうひとりのアイドル・黒木紗夜香に嫌がらせを受ける。るりや紗夜香との共演の舞台となったアイドル水着大会では、みずきはハチマキを掴もうとしてるりのおっぱいを鷲掴みにするというラッキースケベを起こし、鼻血を出した上に勃起しかけて窮地に陥るが、機転でこの場を切り抜ける。一方、紗夜香はこの間にみずきの持ち物を漁り、小学校を特定していた。
紗夜香はみずきの正体を知るため、晶のクラスに転校して調査を始める。これを警戒する晶だったが、紗夜香を悪口や事故から守ったことで逆に紗夜香から好意を受けるようになる。結局、晶=みずきであることはバレてしまうが、紗夜香はこれを秘密にする代わりに自分と付き合ってほしいと言ってくる。
この会話を断片的に聞いていた智恵子は、晶とみずきの関係を疑いはじめる。晶はなんとかして秘密を隠そうとするが、握手会やコンサートを通して智恵子の疑念は確信へと変わっていった。しかし、それと同時に智恵子は、アイドルとしてのみずきを好きだと感じるようにもなっていた。最終的に、晶は自分がみずきであることを認めて智恵子に謝る。智恵子は、晶のこともみずきのことも好きだと告白した。
クリスマスの夜に、晶はるりから告白を受ける。憧れの存在に好きだと言われて興奮する晶だったが、るりを恋人としてではなくアイドルとして見ていたために戸惑ってしまう。るりは晶とケンカができる智恵子が羨ましいと言い、晶に一度だけキスをして、これからもアイドルをがんばることを宣言した。
一方、芸能界では、紗夜香のマネージャーがみずきの活躍を恨んで、白川みずきは実は男だという噂を流していた。紗夜香はこれを謝罪し、みずきは意に介さなかったが、テレビ局のスタッフたちは噂を確かめる罠をしかけた。あるCMの撮影の際に、ハダカを撮るため全裸になってもらう必要があると言って、みずきのスカートとパンツを脱がしたのである。スタッフ一同の注目が集まったみずきの股間には、おちんちんという男の決定的な証拠がぶら下がっていた。
みずきのおちんちんを見たというスタッフたちの目撃証言がマスコミに報じられると、これまで女の子として水着大会などに参加してきたみずきの性別詐称は芸能界を揺るがす一大スキャンダルとなった。記者会見の場で真相を迫る記者たちに対し、開き直ったみずきは服を脱ぎ捨ててパンツ一丁になり、「男宣言」をして芸能界を去った。
みずきの引退後、紗夜香は改めて「フツーの男のコ」としての晶に告白するが、晶は他に好きな人がいるのだと言ってこれを断る。その後、学校で晶に会った智恵子は、白川みずきはいい子だったから約束通り裸で逆立ちして校内一周すると言って、服を脱ぎだす。晶はこれを制止して、これからは智恵子だけのアイドルになるのだと宣言。二人が両想いであることが確かめられ、るりや紗夜香もそれぞれに成長したことが示唆されたところで、物語は幕を閉じる。
少女少年II -KAZUKI-
シリーズ第2作。女の子と間違われ、村崎に町でスカウトされた星河一葵は女優・大空遥の娘役オーディションを受けることに。
一緒に住んでいた父親から自身は実父ではないことと大空遥が一葵の実母だということを知らされた。
そのオーディションは落選だったがプロデューサーが一葵のことを気に入ったためにプロデューサーが創設した芸能学校に特待生として入ることになり、生き別れた母に近づくために芸能活動する。
少女少年III -YUZUKI-
シリーズ第3作。香川県丸亀市のとある島(連載時には村となっていたが香川県に村がないことに作者が気づき、単行本収録時に島に直した)在住の橘柚季は2人の兄からのいたずらに悩まされており、島からの脱出を図るためにオーディションを受けに行くが履歴書の用紙の性別欄を書き換えられ、女の子として、オーディションに合格した桃園ユリと梅咲文華と一緒にアイドルユニット「ガーリッシュ」としてデビューすることに。
少女少年IV -TSUGUMI-
シリーズ第4作。レディースデー等何かと得をすることが多いという理由で女装していた白原充。
ある日町で村崎にスカウトされ、白鳥つぐみとして芸能活動していく。
クラスメイトで既に売れっ子の芸能人として活動している逢見藍沙とも正体を知られないまま一緒に仕事する機会が増えていくが…。
少女少年V -MINORI-
シリーズ第5作。蒔田稔はクラスメイトで芸能一家の植原茜の家に行った際にとある出来事により、茜との2人組ユニット「ma-da」として芸能界デビューする事に。
少女少年VI -NOZOMI-
シリーズ第6作。ごく普通の少年の谷川光は人気アイドル谷川のぞみの男装姿に間違えられ、自身が女装して彼女の代役として仕事に挑むことに。
これに味をしめたのぞみは…。
少女少年VII -CHIAKI-
シリーズ第7作。十河太一は演劇部の公演で女装して演じていたのを村崎に見初められ、声優・万丈千明として活動することに。
〜少女少年〜 GO!GO!ICHIGO
シリーズ第8作。第7作までとは違い、掲載誌はちゃおである。
超美少女に見える少年、章姫一期と一期に惚れてしまった少女、宮坂杏のラブコメディー。
芸能界も一切絡んでいない。
少女少年0話
Ⅰの原型となった話。
中学2年生の大山千里は女装して文化祭で歌を歌っていたところ、芸能プロダクションのマネージャー、曲(まがり)にスカウトされ、アイドル歌手、小川ちさととしてデビューする。
大山千里(小川ちさと)→水城晶(白川みずき)
鶴村→赤沢智恵子
曲→村崎ツトム
亀山(曲の姪)→黒木沙夜香
清水みるく→青野るり
にそれぞれ相当するが細かい部分を見ると違うところもたくさんある。
作者であるやぶうちが大学に合格して仕事を再開した際に連載させてもらおうと考えていた作品であったが、もう1年浪人する事になったうえ、その間にちゃおの方針が変化して、男の子主人公NGになってしまったため小学6年生で連載されるまでこの構想はお蔵入りになってしまった。
シリーズの定番要素
少女少年シリーズは、一作ごとに別のキャラクターによる別のストーリーとなっているが、複数の作品に共通する要素として以下のようなものがある。
男の子が女の子として芸能界デビュー
基本中の基本。少女少年シリーズのアイデンティティともいえるプロットである。
主人公は女装するととても可愛くなるタイプで、外見は女の子そのものになる。水着姿になっても女の子として通用するほどで、素っ裸を見られなければ大丈夫である。
そのため、本当は男だという秘密を抱えながら芸能活動を続けることになり、その秘密を守りきれるかどうか、周囲の人に明かすかどうかといったことが物語の焦点となる。
ただし、番外編となる第8作の「GO!GO!ICHIGO」だけは、女装する男の子本人ではなくその幼なじみの女の子が主人公であり、芸能界の話も出てこない。
マネージャー・村崎ツトム
芸能事務所のマネージャーとして、名前も見た目も同じ村崎ツトムという人物が毎作登場する。
主人公をスカウトするのはたいていこの人物。
シリーズによって多少性格の違いがあるが、基本的にはそそっかしくて仕事にミスが多い。
また、主人公を勝手に女の子としてデビューさせたり、担当アイドルの代役に仕立て上げたりと、軽率な判断で強引な手段に出ることが多い。
こちらも「GO!GO!ICHIGO」にだけは出てこない。
登場人物の名前縛り
村崎ツトムを除く主要登場人物の名前には作品ごとに縛りがある。
具体的にいうと、第1作は色、第2作は自然に関係する言葉、第3作は植物、第4作は鳥、第5作は農業に関係する言葉、第6作は新幹線、第7作は数字、第8作は果物にちなんだ名前がつけられている。
月経痛でトラブル
主人公のまわりの女の子が月経で対処に困ったり、痛みのために倒れてステージに上がれなくなってしまったりといったトラブルがしばしば発生する。
掲載誌の読者が主に小学校高学年であることから、体の変化に対する戸惑いを女子小学生に寄り添った目線で描いたものともいえる。
なお、世間では「生理」というぼかした言葉で表現されることが多いが、少女少年シリーズでは一貫して「月経」という具体的な言葉が用いられている。
おちんちんを見られて女装バレ
少女漫画とはいえ小学生向けの作品らしく、主人公がおちんちんという決定的証拠を見られて男だとバレるというダイレクトな展開がよく起こる。
特に第6作は、ヒロインののぞみが主人公の光のおちんちんを丸出しにするシーンがあることで有名。このシーンでは、光を女の子だと信じ込んでいる人物の前で、のぞみが「光は男の子よっ!」「ほらっ!」と言って、勝手に光の体操ズボンをパンツごと前からずり下ろし、光のおちんちんを見せてしまう(すごいヒロインだ)。
他にも、裸で撮影するCMのためにパンツを脱がされてバレる(第1作)、男子トイレで立ちションしているところを横から目撃され、おちんちんを確認されてバレる(第2作)など、ギャグ展開にはおちんちんネタが多い。