我らは知識を探求する者
筆を取り、墨を磨り、新たなる収穫を記す
この手に灯火を挙げ
未知なる領域を射し照す
我らは世界を開拓する者
刃を手にし、進むべき道を斬り開く
身は道標となり、進むべき方向を指し示す
時空の狹間に記録を刻み
探求心は怪異をも凌ぎ
仮令、満ち溢れる光に背を向けようとも
我らはまた
この無辺なる暗雲に向うのだろう
ただ知識に渇き
ただ心の儘に
ただただ、この果てしない宇宙の
一角を目に収める為に
故に
我らの足は止まらず
幾つもの世界を越え
無窮なる暗黒を貫き
夜が終焉を告げる前に
何処までも、進むのみ
我らは……「探求者」なり
知識こそを力とし
好奇の心は全ての源となり
英知と奇跡
常に我らに伴う
——探求者旅団箴言
起源
未知なる世界を探求することを主にする組織として、探求者旅団の足は一歩たりとも止まることはなかった。英知の天使——ネイラ•ミールの下に、団員たちは次々と隠された星々を発見し、その神秘を掘り尽した。しかし、こんな精鋭たちの前にも、やがて一つの問題が立ちはだかる。いつの日か彼らの前にもう『暗闇』がなくなったとしたら、其処には一体、何が待っているのだろう?
それは杞憂ではないと分かるまでそんなに長くはなかった。彼らはどうやら、自分たちのいる世界の果てに触れたようだった。元は無限のように広がっていた世界も、一瞬小さく感じられた。
その後、多くの人は去ることにした——すでに判明した以上のものがなくなったならば、ここに残る理由もそれと共に消え失せたと言って。間もなく、探求者旅団という組織は歷史の中にしか存在しないものとなるだろう。
このような状況に対し、天使はとてつもない悩みを抱えた——彼女には他の世界が見え、そこへ行く道を繋ぐこともできる。しかし、その全てが彼女の手によって成されたとしたら、その『人の探求する心を導く』初心も、跡なく消え果ててしまう。
考えの果てに一つの決断がなされた。旅団は解散され、その上で、意向のあるメンバーは英知図書館に編入される。そのようなメンバー達は『掌書人』の名を与えられ、英知図書館の管理や業務に貢献することとなる。それによってネイラには転移門の作成に必要な時間ができ、その上、報酬として元旅団団員である掌書人たちに、その転移門の使用権を約束する。こうして、かつて耀かしかった探求者旅団は、正式にこの世から姿を消えた。
それより千年の歳月が過ぎ、掌書人も世代を替えつつある。転移門こそ残されたが、掌書人はもう、ただ掌書人として働くしかなかった。もはや天使本人もその遥かなる約束を忘れた時、新世代掌書人——ヴィンド•シルフは、二度目にイスタルディアへ渡った時、其処から、『三王終戦』中に墜落した空中要塞—ケルン号を回収した。その修復の最中に、天使ネイラは、あるものを手にした——
——それは、完全無傷なワールド•チェーンだった。
天使は、それらの世界になにがあるかまでは分からないが、この宝物は紛れもなく新世界への扉を繋ぐ鍵になると確信した。これによって、彼女が以前その手で積み上げた誇りを、蘇らせることができるかもしれない。そのために、彼女は掌書人ヒゼフィヌ•フォルゼと、ケルン号修復を担当するランニ•エスラタをワールド•チェーンの最初の世界——レギリアに派遣し、同時に、全図書館と、以前探索した世界から新たなメンバーを集結し、再び『探求者旅団』を結成した。そして、二人の先導者の下に、彼らは新たに旅立った。
たとえこのワールド•チェーンの果てに、彼らがもう一度探すものを失う境地に陥ろうとも、天使も決して、その選択を後悔することはないだろう。なぜなら——ネイラは、全ての『探求者』たちに、自分なりの、大切なものを見付けてほしいと願うからだ。たとえそれが、彼らの青春や命までを代償にし、あるいは消えることのない悪夢を見せることになろうとも、その思い出、その出来事は、彼らにとってその後の日々における終生の支えになるだろう。なにより——
——一つの波乱万丈な大冒険以上に、ヒトのココロに残されるものは、何処にも存在しないだろう?
分岐
新たなる探求者旅団の中に、生命たちは千年前のように共に手をとり、新世界の探索へと進んだ。しかし、旅団規模の広大と共に、団員たちは性向の似た者同士で徒党を組むようになり、結果的に、二つの大きな集団が生み出された。【司書】と【マフィア】——共に神秘を探求し、異なった信念を持つ者たち。天使ネイラを含むわずかな者たちはまだ中立を名乗るが、この両集団は、他のメンバーの殆どを包括している。それは旅団の分裂を意味するものではなく、世界探索への別々な理念を貫く為に、各々が自分に合った集団を選んだのだ。両者の目的は何れも同じで、【司書】も【マフィア】も、良い意味で競い合い、互いの利益になっている。彼らは言う、自分たちはただ確認したかったのだ——
——知識と好奇心のいずれが、探求する欲望を生み出す上でもっとも重要な源なのかを——
The Librarian 司書
『魔法、科学、異能、魔導、その全ては我らの祖先より残されし偉大な探索、ならばこそ、それを延ばし、満たし、あるいは改変するこそが、我らの使命である。その目標の達成の助力となるものこそ、その果てしなく未知なる知識なのだ。』——図書館学院教師、また、探求者旅団団員【司書】 カロカード•イムニ
【司書】にとって、人間の歩みを進歩させた力の源は外ならぬ知惠への渴きである。万人にとって、知識の追求こそは、人類の未来永劫のテーマであり、彼らの旅団結成の、もっとも原始的な目的だった。
【司書】たちの大半は、新世界に辿り着くとまず最初に、そこの遺跡や図書館——書物が一番豊かな処を訪れる。それが知識を得る一番の方法であり、これこそ、彼らが【司書】と呼ばれる理由である。その求知の傾向のため、【司書】は戦端を起こす側にはまずならない。なにかがあった時も、できるかぎり平和な解決を求む。しかし、旅団の一員である以上、当然彼らは決して無力ではない。もし誰かが彼らの知識の探求の邪魔をするなら、信じるがいい、この『学者』たちに刃向かうものは決してただでは済まないのだ。
The Mafia マフィア
「さぁ! 今後の計画とやらを話そうぜ! なんだいなんだい!? 西海岸? 海底石窟? よーし準備しろ! もう待ちくたびれたんだよ! あぁ新天地! 新たな宝物! 全てが新しい!! 最っ高にクソきもちいい気分だぜ!!」——探求者旅団【マフィア】 『酔っ払い』のハンス
【マフィア】については、彼らを新世界への旅に煽るのは【司書】ほど難しくなかった。彼らはただ心の中の抑えきれない好奇心と探索への欲望に従い、旅団に入ったのだ。その罪こそ、彼らの動機である。
一旦新世界に辿り着くと、【マフィア】の触手はこの世界の隅から隅まで侵蝕する。地域、経済、文化、特産物、この世界の特質を持つ全てが、奴らの強欲によって蕩尽される。彼らはまるでヤクザのように、傍若無人であり、畏れるものはない。【マフィア】たちは【司書】のように温厚ではない。その多くは血をすするような奴ばかりだ。その本質として、彼らはまるで家族のように緊密な絆で繋がっている——彼らは自分たちでは互いへの協力や配慮を、もしどこぞの異世界の連中が彼らにちょっかいを出すなら、そいつらには可哀想だが、それは【マフィア】全員からの業火による報いを意味する。
拠点——新生の地 オランジワール
曾て世界の辺境に、ネイラ•ミールは創造者の力を貸り、一つの新たな星を、旅団メンバーの中継所として作り出した。全ての団員たちは、新世界の転移門を通じてそこに辿り着ける。誘いを受けた客人や友人も、導く者の素性が確認された上で、その場への進入を許される。もし身元不明な人物の侵入が確 認されたなら、転移門はその者をこの世界のとある一隅へと強制的に転送する。その安全性は完璧に等しい。
特殊な目的で作られた惑星であるため、オランジワールには基本的になにも存在しない。やや整備された自然港一つの外には、生命存続の為の必要物資さえも用意されていないのだ。そして、それがネイラの望みでもある——なにもない星だからこそ、他の世界からのものを貯蔵するには最適である。今の海岸近くにはもう、修繕を終えたケルン号が格納庫から出されて、ここに居る団員たちの、新世界が開放される前の住みかとなっている。おそらく、ケルンがもう一度飛翔する時、全ての者がこの星の変化に気付くのだろう。
The Kölner Dom
「あれはいつかの誇り、いつかの輝き、いつかの人々の心の支え。今となっては、あれはただこのオランジワールに眠る一つの謎でしかない。しかし、たとえ一度は破損し、捨てられたとしても、あれはいまだ、偉大で、尊く、そして神聖なものである」——ケルン号修復担当 ランニ•エスラタ
「空中要塞ケルン号は、『ある元帝国の実験兵団の旗艦(PFV)』だ。戦後その姿が消え、別世界で『三王戦爭』に介入し、墜落した。今は図書館の下で保護されている。修繕後、ケルンの全モジュールは復元され、性能も以前より強化された、今はもう、再び空を飛ぶことができる。しかし離陸する前に、ケルンの制御中枢は自身の最適化のために三つの重要部品を要求している。それと引き換えに、彼女は様々な独自の知識を図書館に提供している。我々は『全てを記す筆』、『万物を見透す瞳』、そして、『森羅万象を載せる書』を探さねばならない——この、図書館全体に対し重大な意味を持つ役目を為し遂げるために」——ケルン号修復第二担当 ハミーランディ•イモシ
「芸術の視点で視ると、あれはまるでミール最高の天使のように人を夢中にさせる。数学的に検討するなら、あれの複雑性には最も優れた数学者でも手を焼く。性能から語れば、あれはもはや君主が戦略兵器に求める全てを包括している。そして我々にとっては、あれから齎されるのは今後の数百年をも満たす豊かすぎる知識だった。」——研究班学者 ブリミ•オルヴァン
Librarian Castle——The Wisert
【司書】の城——ウィザート
ウィザートは、英知図書館を見本とし、建造された新たな城塞である。——城塞と言った処で、事実上は図書館だが。この砦の中には、英知図書館にある蔵書の殆どのコピーが所蔵されている。その他、地下と塔の部分には各系統の特別研究室があり、【司書】たちに使われている。魔法使いも科学者も、ここで自在に研究することができる。当然のことだが、魔法側の研究室は塔にいて、科学側の研究室は地下にいる——互いがその理念の違いで衝突することを防ぐために。事実上、両側の学者はもう、ホールで口喧嘩や争いをしたことがある。安全上の考慮で、双方の書類も可能な限り各自の寝室の近くに別々に置かれている。
襲われる心配がないため、ウィザートの外壁は防禦よりも飾りの方が重視されている。でなければこんな奇妙な透かし彫りの城壁をわざわざ作らないだろう。実際、この城壁の全体は一種のサンゴ虫であり、その最大の特性は、城壁の建材を侵蝕し、その上に新たな『壁』を分泌すること——すなわち、『普通の城壁』 を『特殊な城壁』に変える転換器のような性質である。その新たに作り出された『壁』は、硬さでは大半の素材に負けないのだが、外観が好みかどうかは人によるだろう。城門はない、何故ならつけた途端に『壁』によって喰われるからだ。
ウィザートになにか特別な所があるとすれば、それは塔の天辺にある探海灯だろう。理由は不明だが、砦の頂は灯台となっている。そこにある探海灯が点けられた時、その熱に満ちた光の束は、空虚な海を照らし、水平線とともにその彼方へと消える。それはなにかの象徴か、それともなにかを召し出そうとするのか? それは多分、ウィザートを建てた者にしか分からないだろう。
Mafia Stronghold——The Ragnarok
【マフィア】の拠点——ラグナロク
もし、あなたがラグナロクの由来を問うたなら、旅団の者は驚いた表情で半日以上も語り続けるだろう。
この戦艦——ラグナロクの到来は、ウィザートが完成された直後だった。旅団がマフィアの拠点を建てようとする直前に、ウィザート灯台最初の光は、海の向こうで暴走していたラグナロクを映し出し、この超弩級戦艦は当時、最大戦速での超低空飛行で、この建てらればかりの砦に向っていた。その頃のウィザートはまだ城壁もできていない状態で、もしそのままラグナロクが直接ぶつかっていたら、旅団数ヶ月の苦労はあっという間に粉々にされただろう。
有難いことに、旅団は運命の女神に捨てられはしなかった。ラグナロクとウィザートがぶつかりあう直前、戦艦は方向を変化し、ウィザートの横に広がる大地に向かって墜落した。司書の全員がこの幸運なできことにほっとしたとき、マフィアの連中はもう、その動きを止めた戦艦へと突込んでいた——これほど素晴らしい『遺跡』があるのに、調べないわけがどこにある? そして間もなく、彼らはラグナロクの『中枢区画』とNatus——こ の船にいる唯一の生きているものを見付けた。
マフィアたちはこの船の由来を知らない、そして、それを知ろうともしなかった——ここに有り合わせの乘り物がある、じゃあ成り行きでここを住みかとして使うのも当然だろう? そして、彼らは司書の者たちと相談し、ラグナロクを港湾の近くに投錨させ、そして、全員荷物を持ってその中に住み始めた。
マフィアのメンバーにとって、彼らの新らしい拠点——ラグナロクほど人をワクワクさせるものはなかった。この超弩級戦艦は今、オランジワールの天然海港に泊まって、図書館の技師によって整備されている。避難港のため、たとえ嵐の日であっても、一番船酔いのひどいメンバーでも、この船に対し文句を言ったことはない。実際のところ、ラグナロクは停泊時に独自の防振システムを持ち、たとえ大嵐の中心でも、座標さえ固定されれば、船体の絶対的静止を維持することができる。これは本来は悪天候において、船の安定性能への影響をできる限り防ぐためだが、マフィアの手に入った今では、別の意味も生まれたらしい。
時が流れた今でも、マフィアのメンバーの誰一人として、ラグナロクの全ての秘密を明すことはできていない。この船の主であるNatusでさえもそれは叶わなかった。探求する集団、未知なる船、そして空から降りてくる新たな団員——これ程最高なアジトは、決して他にはないだろう。
NPCs
オランジワールでは、一部の人々を『付き人』と呼んている。彼らの多くは英知図書館の派遣メンバーであり、このオランジワールにいる旅団の駐屯所の日常の運営に黙々と貢献している。しかしその人々の中には、確かに数名ほど、旅団団員にとって必要不可欠な存在がある。彼らは駐屯地の周りに分散し、天使から仰せ付かった役目を一心不乱に為し遂げている。
転移門門番『不動』のシャルマン
この世界の生れし時から、シャルマンはこの世界と別地域の転移門を一人で守り続けていた。彼女は背中を転移門の門柱につき、一切喋らず、動かず、ただ全てを静かに眺めているだけの存在に見える。しかし、転移門を潛った瞬間、シャルマンは頭の中に入って、脳に直接話かけてくる、そしてこちらがそれに気づき、ぼんやりと反応したときには、彼女はまるで錯覚だったかのように、もうとっくに頭の中から消え去っている。これはこの転移門を越えた者には、誰しも経験があることである。一部の人はそれに気付き、シャルマンと話をすると、彼女は喜んでその者の話に付き合う。でも、不思議なことに、たとえこのオランジワールの何処にいたとしても、 シャルマンと話したければ、彼女はすぐでも君の考えの中に割り込んていく。ただし、彼女の体はその場にいるままで、相変らず一言も喋らない。
頭巾に隠されたシャルマンの顏を見た者は一人もいない。それを試そうとするものも全て、失敗する始末だ。やがて、『不動のシャルマン』という諢名が広がってしまった。噂によると、人気のないときに、シャルマンは転移門から離れ、他所へと歩き回っていく。その伝説について、曾て彼女が海面に立っている写真を撮った者があるらしい、そして、色んな所で彼女の瞬く間に消えた姿を見た目撃情報も沢山ある。その結果、彼女は人々の噂の中で、どんどん不思議な存在となっていく。
彼女の『姿』は常に人々の視線の中にいるが、彼女は一度も、動いたことはなかった。
鍛冶屋——『定年親父』 バロン•フィアウィロウ
曾て『創造の殿堂』で百年以上働いた職人として、バロンは間違なく豊富な経験を有している。だからネイラは、彼が殿堂での役目を終えたあと、ここでそのキャリアの延長を勧めた。バロンにとって、仕事場の変更など大したことでもない。毎年、帰省することを許されるならどこだっていいのだ。だから報酬と色々を決めた所で、この熟達した匠人は、仕事道具と共にオランジワールへ来てしまった。
この新たな世界と客人に対し、バロンはいつも通りの方法で対処する。この親父さんに材料さえ渡せば、バロンは望んだ品を鍛える——武器、鎧、あるいはアクセサリー、なに一つバロンの手に負えないものはない。だからもしなにかいいアイデアでも閃いたら、その鍛冶屋に足を運べばいい、運が良ければ、その発想に免じて只で鍛えてくれるかもしれない。
いつも人々に親父と呼ばれていたが、バロンは全然老いさらばえる感じではなかった。エルフの一支族として、六百歳程度のバロンはただの中年で、まだまだ力強くて元気が盛んな年ごろとも言える。いつも炉辺にいるせいか、埃を浴びた彼の見た目はもっと老けて見える。このエルフの親父には同族のような潔癖症はなく、彼にとっては、鍛煉することこそが全て——たとえそれが何だっとしても——なのだ。
商人——『拝金主義』 ロウレン•シペル
『砕裂星』の商業帝国をその手で築いた所で、ロウレンは新たななにかを試そうとした。色々と手を付けたあと、彼は自分の商店を放り出して、このオランジワールでやり直そうとしている。自ら積み上げた仕入れ先と異世界とのつてで、彼はこの二年間で大金を儲けた上に、コレクションの方も大分豊かになった。だからネイラの特別許可に感謝するために、彼はここで一つ小さな店を開き、団員たちに道具を売り始めた。針から戦艦まで、金さえ出せば、どんなものでも彼は売ってくれる。
ここには金持ちがそれなりにいると気付いたか、ロウレンは毎週の日曜日に小さな闇市場を開いている。その日は、シペル商店の地下室にある貴重なものが展出され、全ての入場客は仮面を被り、なにも言わず、ただ競売板で価額を示し、より高い金を出した者がそれを買う。試しに何回か開いたこのオークションは、ロウレンに嬉しい結果を与え、このイベントはそのまま存続された。
ロウレンの店では、現金での取引だけでなく、物々交換や物品の鑑定も行なっている。なにか交換したいものがあれば、ここへ持って行って値踏みすることができる。ただし、一度交換したら取り消しはできない、それだけは注意しておこう。
ケルンの守護者——『思想を司る者』ハミーランディ•イモシ
ケルンは今のオランジワールの存在意義であり、旅団再結成の切っ掛けでもある。だから普段から異世界で活動しているランニとヒゼフィヌとは別に、一人の掌書人がケルンの中に長期滞在し、この要塞の管理や護衛を担任している。彼女の名はハミーランディ•イモシ——『心霊序列』の鬼才にして、ケルン計画のもう一人の修復担当である、そして、天使ネイラのこの場での代弁者でもあった。
ハミーランディは一般的にケルンから離れない、彼女は常にケルンのあらゆる箇所を検査し、その数値を部下に与え、指示を下す。一方、旅団の団員たちは、ケルンを歩き回るときに彼女と遭遇することを避けたがる。その理由は至極簡単——彼女の読心術はもう無意識に使われるほどに強力になっているから。誰しも秘密はある、けれど彼女の前では全ての思惑は見透され、隠しようがなくなる。そして彼女はそれを利用し、その人を木端微塵に責め苛む——これも皆が彼女を避けようとする要因の一つ——彼女は毒舌で、そして腹黒過ぎるのだ。
ハミーランディは普段一般団員の相手をしないが、でも肝心ところでは抜かりはない。図書館の利害に関わること全て、彼女はすぐでもネイラに報告し、あるいは自分で解決する。理論上、人間がしでかすことで、彼女に手を焼かせることはない。